「私達も力をお貸しします」
その声を、リオは夢と現の狭間で聞いていた。
「お願い……死なないで……」
祈りにも似た、清らかで温かな力が、彼の体内に流れ込む。
「私は信じています。貴方は必ず生きていて下さると」
同時に、力強い言葉と同じ輝きを秘めた力も注がれた。
「俺は、お前じゃなきゃ嫌だからな」
更に続く、闇を退ける夜明けに似た光の力が注がれる。
(……僕は……どうなったんだ……?)
ゆっくりと意識が浮上し、リオは目を開けた。
「意識が戻られたぞ」
途端に上がる、多くの人々の歓声。
ぼやけた視界が鮮明になると同時に、彼は多くの人々に囲まれている事を知った。
「具合はどうですか?」
穏やかな低い声が問う。
春の木洩れ日を思わせる、優しい淡緑色の瞳が見えた。
「……エリエーヌ……?」
「いいえ、【エレアヌ】ですよ」
寝ぼけた声で呟くリオに、女性的な青年エレアヌは微笑んで答えた。
「……ここは……?」
僅かに顔を動かして、リオは周囲に視線を彷徨わせる。
見覚えのある天井のレリーフ、白い石壁。
目を潤ませて見つめてくる、宝石の様な髪と瞳をもつ人々。
「……神殿に……帰ってこれたのか……」
リオは、ホッとした様に呟いた。
「必ず戻ると約束されたではありませんか」
いつもの穏やかさを取り戻したエレアヌが、溜め息混じりの声で言う。
「リュシア様が亡くなる前に言った言葉を、リオ様からも聞かされた時は焦りましたよ」
優しいまなざしが、フッと翳った。
「……これからは、生命に関わるような無茶はしないでくださいね……」
淡緑色の瞳から溢れ出た水晶の様な滴が、その顔を見上げるリオの頬に落ちる。
リオは、エレアヌの腕に抱かれている事に気付いた。
すぐ横には、右腕でしきりに目をこすっているシアルもいる。
周囲には、ラーナ神殿に住む白き民全員が集まっていて、少しやつれた顔に安堵の笑みを浮かべていた。
「……心配かけてごめん。それから、ありがとう……」
エレアヌの腕の中で、リオは微かな笑みを浮かべる。
命を落としかけた自分を救ってくれたのは、僅かながら癒しの力をもつエレアヌと、エレアヌに感情を同調させた人々の祈り。
それは後に【