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第3話修二さん

あれから、数分して警察が来た。

何やら警視庁の所謂エリートと呼ばれる人達もいて、事態の深刻さが重みを増してくる。

そうして、俺は何をやっているのかと言うと、警視庁の取調室で同じ質問を何度も繰り返し同じ回答をしていた。

「それで、君が新維新志士を退けたと言う事だね」

「だから、そう言ってるじゃないですか!!」

「でもね、君、神崎君だっけ?」

「はい」

「勉強はできない上にスポーツはサッカー部に所属しているとは言えね、三年生なのに公式試合には全然出たことはない」

「そうですけど」

なんだかムカついてきたが怒ったら、こっちの負けだ。

「そんな君が、新維新志士達を退けるくらい、戦いのスキルがあるとは思えないんだよ」

なんで警察がこんなにも信じないのか、そして話をややこしくしているのは、俺がまだ話してない事があるからだ。それは彦齋さんの事だ、これを言っても普通は誰も信じる人はいないだろう。何せ、話がファンタジー過ぎるし自分でも当事者ではなければ信じない事が起きてしまったのだから。

「神崎君さ」

「はい?」

「本当の事を話してくれないかな?」

「だから、さっきから本当の事なんですって。それにクラスの全員と世界史の先生も見ているんですよ」

「でもねー」

「こっちには、二十数名と一人の公務員の証言者がいます!!」

「これじゃあ、神崎君を家に返せないんだよ、親御さんも心配しているぞ」

何とも古い落とし方なのかと呆れてしまう。でも、これでは本当に家に帰れないかもしれない。

「親は夜遅くまで、仕事なので帰ってこないので心配なさらず」

「そうは言ってもね、こっちは仕事なんだよ!!」

「こっちも、そう言われても変わらないですよ」

「はー」

警察は埒が明かないと言った様子だったが、こちらも、もう彦齋さん事を言おうかと思っていた所に、深緑色のコートを着た中年のおじさんが取調室に入ってきた。

「修二さん」

「おう、にっちもさっちもいかないって顔してんな」

「それが、この子供が訳の分からないことばかりで」

「そうか、じゃあ俺とこの子の二人にしてくれ」

「どうしてですか?」

「まあここは俺に任せろ」

「分かりました」

「それからカメラも切ってくれ」

「それはさすがに」

俺と話していた警察官とは違う、もう一人の警察官が話に割り込んできた。

「まあ、ここは修二さんに任せよう」

「分かりました」

これだけでこの、修二さんという人がどれだけ、信頼されているのかが分かった。

それで、修二さんと言う警察官と俺以外に取調室にはいなくなった。

「取り敢えず、君の名前はなんだ?」

「神崎彦真です」

「じゃあ彦真君。無駄話はよそうか。直球に聞くぞ」

修二さんは緊張感を持ちながら、話を続ける。

「彦真君は川上彦齋と契約したのか?」

「え?」

「大丈夫だ、ここには俺と君しかいないし、それに俺は信じる」

いきなり言われても、なんと答えればいいのか悩んだ。

でも、こっちの知識が通用するかもしれないと思った。

「なんでそのことを?」

「俺も今まで何人もそう言う奴と会ってきたからな」

「そうなんですか」

「おう、それなりに分かっているから、喋ってもらっても大丈夫だぞ」

喋ると言っても、どこまで喋ればいいのかが、分からなかった。

「日本刀が急に話しかけてきたんです。それで、真っ白い空間の中で川上彦齋さんと話して新維新志士と戦う為に力を貸してもらいました。」

「そうか、で、新維新志士はその川上彦齋の日本刀を狙っていたのか」

「そうみたいです」

「そうか、それに彦真君は巻き込まれたんだな」

「そうですね、それで色々知っているみたいですけど、結局あれは何だったんですか?」

「それは、俺の一存では教えられないな」

「そうですか、じゃああの日本刀はどうなるんですか?」

「それは国が管理するだろうよ」

「そうですか」

もう彦齋さんとは話せないと思うと、少しだけ残念だった。

「また、刀を持ちたいか?」

「え?」

「実際どうなんだ?このまま何も知らないまま事を終わらせられるのか?」

このまま、本当にこのままでいいのだろうか?

まがいなりにも彦齋さんにあって、力を貸してもらったそれに教室で会った新維新志士のリーダーみたいな人にも自分がお前たちの前に立つなんて大事を叩いたんだし。だったらと思うが自分が知らない世界に足を踏み入れるとは、凄く恐怖がある。

怖い、逃げ出したい。でも、僕は関わってしまった。

だったら、僕が出来ることを精一杯しないと。

いつから自分はこんなに勇気がある人間になったのだろうか?

彦齋さんが認めてくれたんだ、力がある。力を持ってしまった自分だからこそ正しく使い弱い人々を守りたい、そう思ってしまった。

「終わりたくないです、正しく人々を守り誰かの心の拠り所となれるようになりたい。そして俺に力を貸してくれた彦齋さんに間違いだったと思ってもらいたくない」

「そうか、良い目をしているな。明日この紙に書いてある住所に来い」

そう言い修二さんは取調室を出て行った。

俺も続いて外に出る。


「ほい、預かっていた携帯と財布、諸々バックだ」

「ありがとうございます」

「日本刀は取り敢えず警察が管理するから、それはまた処分が決まったら連絡するよ」

「分かりました」

そして警察署を出て家に帰る。


一方、修二と部下は。

「いいんですか?あんなに簡単に出して」

「いいんだよ、世の中には俺達が知らない事で溢れているんだ」

「そう言うものですか」

「そう言うもんだ、それにあいつ。神崎彦真と言ったか?」

「はい」

「今時の若者にしては最後に吐いたセリフの時、良い目をしていた」

「良い目ですか?」

「ああ、体は軟弱でひ弱だが意外と今のこの国、いや世界を変えるのはああ言う若者かもしれないな」


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