それから近くの体育館で俺達は木刀を持って、稽古をしていた。
俺の相手はなんと二刀流の宮本武蔵、だった。
「おらおら、どうした!!その程度じゃ御守りのままだぞ!!」
二刀流ということもあり、一振りから次の攻撃が速い。それを交わしても次々と打ち込まれる。
「このまま守っているだけか!!」
「くっ、でも、ただやられるだけじゃないです!!」
でも、隙がないわけじゃない、右から左に木刀を打ち込む時に、一瞬だけ時間がある。それを狙って次の瞬間俺のありったけの一撃を打ち込む。
「良く見ているじゃねえか、でも甘い」
俺のありったけの一撃は、打ち込んだと思っていた左の木刀で守り、この鍛錬で俺の木刀が宮本さんの体に当たることはなかった。切り替えて、右側に打ち込もうと切り替えた瞬間二本の木刀で、俺の頭と腰を一斉に打ち込れそのまま、俺は力なく床に倒れたと思った瞬間。壁にもたれかかった。どうやら俺は後ろに余裕があると思っていたがいつの間にか壁側に追い込まれていたらしい。
「参りました」
「はー、川上彦齋が惚れたって言うから、どこまでやれるかと思ったが貧弱だな」
そう宮本さんは笑っていると、見ていた沖田さんが声をかけた。
「武蔵、お前も腕が落ちたな」
「ああ!!」
「自分の腰見てみなよ」
そう言われて宮本さんが自分の腰を見ると、俺が最後の反抗だと宮本さんの左側の腰に木刀を当てようとしていた形跡があり宮本さんはびっくりした様子で、俺を見た。
「確かにこれが実践だと俺は頭と腰を切りつかれて終わりでしょう、でも俺は覚悟を持って此処まで来ました」
「ちっ!!当たってもないのに粋がるな餓鬼が」
「負け惜しみもよしなよ、武蔵」
「うるさい!!」
「まあ、これで少しは川上君も動ける事は分かってもらえたかな?」
「まあ、良い目をしているのは、分かったが俺はこいつが死ぬかもしれない状況でもほっとくからな」
「はい、これ」
沖田さんがタオルを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「実践なら川上君は死んでいるけど、武蔵の一瞬の隙を見抜いて叩き込もうとしたのは良い目を持っているね」
「実は子供の時剣道を少しかじっていたので」
「そうなんだ、でも実践の武蔵は隙なんてないよ」
「やっぱり、手を抜いていたんだ」
「それも気づいた?」
「はい、俺よりずっと前から殺し合いをしてた人が、あんな簡単に隙を見せてくれるとは思わないので」
「そっか、でも川上君は僕も少しは使えると思ったから、これから頑張ろうね」
「はい」
そこから移動して、皇居の下で移動した。
「おう!!どうだったルーキーは?」
そう聞いたのは華岡さんだった。
「まあ、御守りに変わりはないが多少は使えると思った」
使えるって酷いなと思ったが実際、今の俺の立ち位置はその程度だということだろう。
「それでやっと、本題に移れるな」
「そうだね、では、川上君も含めて作戦会議と行こうか」
今、日本で何が起きているのかをやっと知れる。
「今、僕らは新維新志士達とそれ以外での人間と戦っている」
「それ以外?」
「黙って聞いていろ、新人」
宮本さんは厳しいく、名前すら言ってくれない。
「今、日本に村正の呪いが猛威を振るっている」
「村正って徳川家が本来持っていたんだよね?」
「そうだね、伝承では約五十振りあったとされているけど、今は殆どが妖刀の恐ろしさがあり破棄されたが、今残された村正を使い何かしらの技術で多くの数が複製され日本に出回っている」
「そこまでは私達も聞いているけどそれのなにがいけないの?」
「複製された刀を使うと操られているかのように、人を斬り殺すようになる」
「それが呪われているみたいだから、呪いなんだね」
分かりやすく、沖田さんが要約してくれる。
「そうだね、刀は常に人の血を求めている。それも今その話に釣られた一般人も闇サイトでなくてもネットオークションとかで、手に入れる人や親族が受け取るケースもあって意図せず刀を手に入れて、夜中に刀に操られて人を切るなどの事件が発覚して、警察から国に報告があって僕らが動くことになったんだ」
「そんな事件があれば、ニュースにでもなっているんじゃない?」
沖田さんが指摘をするが、俺もそう思っていたが周りを見ると皆、答えを知っているような顔をしていた。
「総司君」
「なに?」
「それは政府が緘口令を敷いているから、世間にばれてないだけだ」
「でも、YouTubeで都市伝説を扱っている人達が動画にしていたよ」
「それはあくまでも、憶測の域を出てないから真に受けるな」
「そうだね、それにもう緘口令も限界だから僕らが動くことになったんだ」
「そうなんですね、でもそんな何振りもある物を全て探すんですか?」
「僕らには、警察が押収した模造品があるから、それを使う。警察が言うには模造品と模造品は共鳴をする事が分かってね、それでその刀と刀は近づくと振動と衝撃がするらしいんだ」
「振動?」
「うん、それの精度が高くなればなるほど振動と衝撃が高くなるんだ。それを利用して全ての村正を回収する」
「承知したが、誰がその模造品を手にレーダーの役割をするんだ?」
「じゃあここは公平にじゃんけんでいこうか」
龍馬さんが言うと宮本さんが一言。
「そんなの新人にやらせればいいだろ」
「それは川上君が可哀想じゃん」
「私も同感だ」
沖田さんと華山さんが味方についてくれた。
「でも、いいかもしれないな」
「信長はどういう意味で言っているんだい?」
「俺達が普段、どんな仕事そしてどんな相手と戦っているのか理解できると思う」
「そうか、君らしいね。じゃあここは信長に任せようか」
「え?」
「不安かい?川上君」
「そりゃそうですけど」
「まあ、ここは川上君が決めた覚悟を確かめるとしよう」
「まじかよ」
「まあ、龍馬さんが言ったら変わらないから、川上君頑張って」
沖田さんと華山さんももうそっち側になってしまった。
一体、俺はどうなってしまうのだろうか。