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第12話高校生、失踪

拓也君の村正事件から数日が経った。

俺が皇居に着いた時には、既に会議は終わっていた。今日は学校があったから、午後からの参加だった。

「あの?龍馬さん」

「なんだい?」

「先日の拓也君の村正はどうやって入手したんでしょうか?」

「拓也君の家にある日、刀が届いたらしくてね」

「本人が受け取ったんですか?」

「そうだ。父親は仕事中、母親は買い物中だったそうだ」

「それって」

「うん、誰かが意図して計画的に送ったと見ていいだろうね」

一体誰がそんなことを?でもそうだとしても拓也君が必ず自分の部屋に持ち帰るだろうか?

「拓也君は親の届け物かもしれないのにどうして、自分の部屋に?」

「拓也君は学校でいじめに遭っていたらしい」

「いじめに?」

「うん、それと親の跡を継がないといけないと言うプレッシャーがあったらしい。この刀は都市伝説になっているから存在を知っていたことは自供した、そしていじめの報復として刀を利用したとも」

「それなら根本的な解決にはならないのでは?」

「お前は馬鹿か?」

「え?」

宮本さんにいきなり馬鹿扱いされたので驚いた。

「今回の皇護の仕事は村正の回収だ、餓鬼のいじめなんか相手にしていたらきりがない」

「でも……」

「武蔵の言う通りさ。俺たちの任務は、日本全体の治安を守ることなんだ」

「分かりました」

納得はできない、でも二人が言うことも分かるのでこれ以上は言わないことにした。

「皆、仕事だよ」

龍馬さんが声を出すと一斉に龍馬さんに視線が集まった。

「今回はなに?」

「高校だ」

「高校?」

「なにやら文化祭で、演劇部が次々と消える事件があったそうだ」

「演劇部が消える?」

「ああ」

「なんで演劇部が消えるんだ?」

「劇で使ってる刀が、村正の模造品だったとしたら?」

そんな……もしそれが本当なら、大ごとだ。

「でも、それは一本だけじゃないらしい」

「え?」

「一本だけじゃないってどういう事だ?」

「確認されたのは三本、それを持ち、劇の練習をした生徒が三人消息不明らしい」

「その生徒に心当たりは?」

「ない、だが明日はその学校の文化祭があるらしい」

「それがどうしたの?」

ここで龍馬さんが、驚くことを言い出した。

「村正の呪いは人を斬ること、なら文化祭なんて人が集まる場所を逃すはずはないだろう」

「そっか、じゃあさっきの話はまた今度ってことね」

「あの?」

「どうしたの?」

「さっきの話って?」

「さっき俺達が話している所を聞いてなかったのか」

「まあ、そっちは。直ぐに分かるだろうからまた機会を見つけてその時に僕から話すね、今は現場に行こう」

でも高校の文化祭って俺の高校と時期が被るような気がするけど気のせいかな?


それから、車で皇居から移動した。

そして着いたのは、俺が通っている高校だった。

「まじか」

「おい、どうした餓鬼?」

「ここ、俺の学校です……」

「それはご愁傷様だな」

宮本さんは完全に他人事。相手にしてくれる気はなさそうだった。

「それは話が早いね」

「どういう事ですか、坂本さん」

「先に修二さんが来ているから、神崎君がいたら色んな話が聞けると思ってね」

「そうですか」

俺達は、学校の校舎に入り職員室の直ぐ隣の空いている部屋に通された。

「おお、来たか」

「修二さん、お待たせしました」

「おう、お前ら座れ」

「はい」

「え?神崎君?」

「あ、どうも、先生」

「なんで神崎君が?」

この部屋にいるのは、俺達皇護と修二さんと俺のクラスの担任の先生である神谷先生だった。神谷先生は演劇部の顧問だったので此処にいたのだろう。

「彼は私達が所属するとある組織の新人です」

「組織?」

「まあ、そんなところです」

「“そんなところ”ってどういう意味よ」

「申し訳ありません、詳しくは話せない決まりです」

「そうですか」

神谷先生は首を突っ込まないようにと、思っているのが伝わってくるが不安そうな顔をしていた。まあ当然と言えば当然だ、なんせ自分のクラスの中に存在を知るなと言われている謎の組織に属しているとなれば、心配もするだろう。

「それで、貴方達は?」

「今回失踪した生徒を探すために、協力してもらう人達です。まあ警察公認の組織なのでご安心ください」

「そうですか」

「それで失踪した生徒と言うのは?」

「はい、演劇部所属の三年生の田宮渉と同じく三年生の倉上卓也と二年の相田聖です」

「それぞれ演劇部ではどのような、働きを?」

「今回、演劇部は時代劇を扱うのですが。田宮は主演で倉上は主人公の相手役でした。相田は道具係でした」

「では、田宮さんと倉上さんは役で刀を使う役でしたか?」

「そうですけどそれが何か?」

「いえ、特にお気になさらず」

田宮とは同じクラスだったので、知ってはいた、田宮は同じクラスで、顔も整っていて女子にも人気があった。でも、誰にでも分け隔てなく接してくれる、いいやつだった。倉上と相田と言う生徒の事は何も知らなかったけど、でも、これでこの三人は村正の触れることができると言う事になる。主演の田宮と相手役の倉上は練習で手にしているだろうし、相田と言う生徒は道具係で村正の手入れなどで手にしているだろうけど、一番気になるのはどうやって村正を三本も手に入れたのだろうか?

それから神谷先生と龍馬さん、修二さんが三人の素性について聞いていた。

それを聞きながら何処に彼らがいるのか、考えてみたがさっぱり分からなかった。

話によると三人とも練習にはきちんと出ていて、真面目な性格だったそうでさぼったり、連絡が途絶える事は今までなかったらしい。そして相田さんが失踪したのは三日前で他二人は二日前に失踪したとの事だった。

「では、これから捜査を行いますので」

「はい、お願いします」

そうして修二さんが部屋を出て俺達も部屋を出ようとした時、疑問を聞いてみた。

「あの?神谷先生」

「なに?神崎君」

「その演劇で使う刀はどこで入手したんですか?」

「それは、相田さんがネットで、いい感じの刀があるって言ってきてね。それで私も確認して、安全性があると判断して部費で買ったの」

「なるほど、それでその刀は誰か触ったりしましたか?」

「触ったのは失踪した三人だけね、田宮君は主演で使うし倉上君は敵役だから使うって感じで、相田さんは道具係だから刀が届いたその日に、最初に触っていたけど刀は少し先端が鋭利になっていたから気を付けるように注意はしたよ」

「そうですか、ありがとうございます」

部屋を出ようとした時、神谷先生に呼び止められた。

「あ、そういえば刀が届いたのは三日前だったわね」

「本当ですか?」

「ええ。翌日、全ての衣装と道具を使って通し練習をしたんだけど、その途中で田宮君と倉上君が喧嘩になって……結構激しくて、そこで練習は中断。その後、二人とも家に帰っていないと連絡があって、刀もなくなっていたの」

「それで、刀は今何処に?」

「それが分からないの、それに喧嘩は今までもあったけど練習を中断する程の喧嘩は今までなかったのに」

「そうですか、三人の仲はどんな感じだったんですか?」

「仲は良かったよ、田宮君と倉上は演劇の稽古で仲違いする事はあったけどあそこまで熱中する事はなかったわ。何か人が変わったみたいで少し怖かったわ」

「相田さんは?」

「相田さんは比較的に大人しい子だったわね」

「そうですか、ありがとうございます」

そして俺は部屋を出た。

「お手柄だね、神崎君」

「え?」

「僕はまだ聞きたい事があったけど、まあそれは及第点かな?」

「俺に聞かせたって事ですか?」

「まあ、君がこれまで皇護に来てから少し経つし、ここで君が何処まで、気づけるか試したんだ」

「そうですか、じゃあまだ他に聞きたかった事ってなんですか?」

「それは……自分で考えてごらん」

「えぇ〜……」

まだ皇護として独り立ちするにはまだかかるかもしれない。




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