それから俺たちは三人の生徒の家へ、それぞれ別行動を取った。
俺と修二さんと龍馬さんは田宮の家に行くことになった。
インターフォンを押した。
「はい?」
「警察です」
「はい?」
暫く警察と言うことで、修二さんが当たり障りのない事を質問していたが手掛かりになりそうな事は分からなかった。
「渉は今何処にいるんですか?」
渉と言うのは田宮の下の名前だった。
「渉君の行きそうな場所に、心当たりはありますか?」
「いえ、手当たり次第に私と旦那が行ったのでもう分かりません」
「そうですか」
暫く警察と言うことで、修二さんが当たり障りのない事を質問していたが手掛かりになりそうな事は分からなかった。
そうして、田宮の家を出た。
「倉上君と相田さんの方も空振りだね」
龍馬さんが携帯で確認したがヒントはなかったみたいだ。
「これじゃあ最終手段をとるしかないね」
「最終手段?」
「この前押収した村正を使うんだ」
予想していたとはいえ、またあの刀を手に取るのかと思うと不安だった。
「言っとくけど、この前の村正は最初のより力は強いからね」
「どう言う事ですか?」
「最初の村正は近づけたら粉々になってしまったでしょ?」
「はい」
「それは、村正が作られた時の練度が高い方がより力が強いんだ。まあ、それなりに力が強ければ呪いも増すって僕らは予想しているけどね」
「じゃあ、また村正の精神世界に入る可能性があるってことですか?」
「そうだね、呪い強ければ強い程、本物に近いって事だからね」
「本物に触れたら僕も村正に乗っ取られてしまうのでしょうか?」
「それは分からない、けど基本、偉人が守ってくれるとは思うけどね。それに乗っ取られても神崎君なら大丈夫だと思うよ」
「どういう事ですか?」
「まあ、僕にも予想できることが出来ない事が起きるから、どうなるかは分からないよ」
「そうですか」
「後ろに刀があるから、それ持って助手席に座って。案内頼むよ」
「はい」
後部座席には、布に包まれた村正が例の鞘に収まっていた。それを手に取った。
そして、鞘から抜くが精神世界に入ることはなかった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや、何も起きないので」
「まあ、所詮模造品だからね」
そうして、村正探しが始まった。
修二さんが運転する車で移動しながら、刀を持ち振動が強い方角を示して向かった。
文化祭は明日だ。どうにか見つけて本番を迎えてほしいと思ったが、捜索は難航した。
「何処にいるんでしょうか?」
「手当たり次第に東京を周ったが反応はなしか」
「そうですね」
「じゃあ、これからは僕が言う所に向かってもらおうか」
「何処に行くんだ?」
「修二さんの携帯に送ったので、そこに向かってください」
「分かった」
それから少し時間が経って、辺りは畑があり東京なのは確かだが田舎だ。
「此処らへんだね」
「何があるんですか?」
以前、新維新志士が使っていたアジトだ。
「え?」
「まあ、アジトと言っても、もう制圧しているから人はいないと思うけど無銘は持ってね」
「分かりました」
「着いたね」
車を降りると廃墟が目の前にあった。そしてその方向に村正を向けると微力ながら反応があった。
「坂本さん!!」
「どうしたの?」
「村正が少し振動しています」
「じゃあ、中に入ろうか」
「はい」
坂本さんは銃を持ち、修二さんも拳銃を持っていた。
「中に入るぞ」
「はい」
恐る恐る、中に入り一階をそれぞれドアを開けて見るが、誰もいない。
「おい、反応があるんじゃないのか?」
修二さんが俺に言ったので改めて村正を持つと、反応は二階に向かっていた。
「二階ですね」
「分かった」
二階に行くと、村正の反応が大きくなった。
「この部屋です」
俺達はそれぞれドアに半身になりながら、ドアを蹴破ると中には田宮がいた。
「田宮!!」
「あ、ああー」
田宮は目の下に隈があり、村正を持ちながらこちらに向かってきた。
「神崎君、僕らは援護しかできない。だから君が戦ってくれ!」
「分かりました」
俺は無銘を持ち田宮の村正と対峙した。
田宮は運動神経は良い方だ、なので普通に戦うと俺は負けるだろう。でも村正に乗っ取られている為、行動は単直だった。
俺が刀を振りながら、田宮も反撃するだが、刀をずらし峰打ちを狙っただが浅かった。
そのまま左で受けたのが、田宮が袈裟切りをしようとした瞬間、俺の体に田宮の村正が当たる瞬間、坂本さんの弾が当り軌道がずれた事によって峰打ちで力一杯振り切った。
そのまま、田宮は気を失った。
「お疲れ様、神崎君」
「終わったんですか?」
「うん、田宮君も気を失っているしそのまま例の鞘に村正を収めようか」
「はい」
田宮が持っていた村正を鞘に納めた。
どす黒いオーラを放っていた村正だが鞘に収めた瞬間、オーラは収まった。
「田宮は?」
「大丈夫だ、気を失っているだけだ」
田宮に近づくと目の下にの隈は落ちなかったし、体は少し痩せていた。
「あの?坂本さん?」
「何?」
「田宮、少し痩せてる気がするんです。二日くらい何も食べなくても、そんなに変わるものでしょうか?」
「分からない、玲奈が居れば直ぐに処置できたけど今は病院に行くしかないね」
「分かりました」
それから東京の警察病院に田宮を運んだ。
そこから数分経って、田宮が安定したと言う話になり龍馬さんと修二さんと一緒に田宮の病室の前に来た。
「坂本さん、田宮は大丈夫でしょうか?」
「うん、半日、検査入院したら帰れるらしい」
「そうですか、良かった」
「二日だけ村正を使っていた事が功を奏したね」
「やはり使う期間が長ければそれだけ、代償もでかいって事ですか」
「そうだね、それほど強力な力がつくから」
まずは取り敢えず安心したが、改めて村正の危険さが浮き彫りになった。あんだけ温厚で人としたら優しい田宮が、あそこまで怖い状態になってしまうのは本当に危険なものだ。人が変わってしまう程の物とは、黒いオーラに包まれて人を斬り殺す事に執着すると言うことで、神谷先生がまるで人が変わったようだったと言うのは間違いだろう。
「神崎君」
「はい?」
「倉上君が見つかったようだよ」
「え?何処にいたんですか?」
「倉上君も以前、新維新志士が使っていたアジトにいたらしい」
「そうですか、状態は?」
「田宮君と同じで半日、入院したら帰れるそうだよ」
明日文化祭だが、確か演劇部は二日目の明後日に出番があるとのことだったので、恐らく通常通り劇は行われるだろう。後は相田さんだが。
「坂本さん、相田さんは?」
「分からない、まだ消息不明だ」
「そうですか」
相田さんは二人より一日村正に触っていると言うことは、それなりに代償も重いはずだ。
「今は、村正の呪いが強くないことを祈るしかない」
「……はい」
でも、二人が居た場所を考えるとやはり背後にいるのは一つだ。
「背後にいるのは新維新志士でしょうか?」
「そうだろうね、でも今は相田さんが優先だ」
「新維新志士は何をするつもりなのでしょうか?」
「次に何を仕掛けてくるかは分かっている、でもその先に何を目指しているかは分からない」
「次に仕掛けるって何を?」
「予想できる程で言うと、首都圏で大規模テロを仕掛けるらしい」
「それは何か情報があったと言うことですか?」
「まあね、でもそれが何かはまだ情報はない」
「そうですか」
これから何が起きるのだろうか?テロが起きると分かっているのにそれを止められないのか?