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第14話束の間の休息

それから、一日経って、俺は皇護の仕事から二日間の休みを与えられた。

「神崎君、あれと取って」

「はいよ」

今は正しく、文化祭当日だが朝早くから準備をしていた。

「これガムテープで補強しないとだめだね」

「ほい、ガムテープ」

「ありがとう」

俺たちのクラスはお化け屋敷をやることになった。教室を使うのでスペースは狭いが、机と段ボールを使って道を作り、ガムテープで補強している。

前日、俺は皇護の任務があったので午前中で準備から離れてしまったが、昨日の時点で大部分は完成していた。

だが今朝来てみると、段ボールが崩れていたりして段ボールが崩れていたりして、まあ許容範囲だがそれを直す。修復作業を始めてから、すでに三十分が経過していた。

「ふぅ、やっと終わった〜」

クラス全員で協力したおかげで、なんとか三十分で作業を終えることができた。

「じゃあ、全員体育館に集合してー」

「はーい!」

TシャツをクラスTシャツに着替えて体育館に向かう、ただ、そのTシャツの柄が派手すぎて、正直ちょっと恥ずかしい。

「それでは文化祭を始めます!!」

注意点などを言ってから教師の一言で、ステージが輝き軽音楽部が曲を歌いながらダンス部が出てきて踊りだした。その様子はとても楽しくこれから最後の文化祭が始まると思うと何だか、考え深く思いっきり楽しもうと思えた。

それから俺は、お化け屋敷の受付などをしていていた。今日は一日中学校関係者しかいないので、そこまで人は多くなかったが、学校でお化け屋敷をやっているのは、此処だけだったので人はそこそこ来た。俺やクラスの皆はお化け役の人以外は全員事前に入ることになったのだが、こんな子供騙しましてや学生が作ったものなど怖くなかった。村正の方がよっぽど怖かったと思えた。

「おーい、彦真ちゃんと仕事しているか?」

「光一か、やっているよ」

「お前は昨日、午後準備さぼったんだから、その分みっちり働いてもらわないとな」

「分かっているって、でも今日だけだろ?」

「ああ、俺達にも慈悲はある。だから今日働けば明日はフリーだ」

「分かったよ」

昨日は何だかんだあって、寝たのは深夜だったからまだ眠い。

あくびをしながら、受付業務をこなす。それを繰り返す。

それをしながら午後まで時間を潰す。昼ご飯は同じ三年生のクラスがやっていた、ラーメンを食べた。意外と美味い、スープが豚骨で準備がしっかりしてないと出ない味になっていた。

午後になってから人だかりもなくなり暇になっていた所だった。

ふと、窓を見ていると何か違和感があった。

隣の校舎の二階に何処かで見た顔が一瞬いた。

「あの顔、何処かで?」

「おーい、彦真」

「ん?」

「ほい、ジュース」

「ああ、サンキュー」

光一がジュースを買ってきてくれた所で顔を思い出した。

「あいつ、確か」

いや、確かに見たことがあった。以前、無銘を狙って学校に来た新維新志士の一人だ。

「光一!!」

「なんだ?」

「此処、頼む」

「え?」

俺は急いで隣の校舎に向かう。

息が荒くなりながらも走る、だがそこに向かうと誰もいなかった。

「くそ、遅かったか」

新維新志士は何をしに此処に?田宮達の裏にいるのは確かだし、それが決定的になった。

でもどうして?そんな疑問が出て止まらない。

もしかして、また学校に乗り込みに来ようとしているのか?

でも、それは彦齋さんの無銘を狙って来ただけ。だとすると。

俺は直ぐに龍馬さんに電話をかけた。

もし、俺の直感が正しいとすれば新維新志士の狙いは。

『神崎君?』

『龍馬さん、今、学校で以前乗り込んで来た新維新志士が一人来ていました』

『本当か?』

『はい、もしかすると新維新志士は、相田さんを利用して明日文化祭に来るかもしれない』

『分かった、今から学校に向かうよ』

『お願いいたします』

電話を切った。

もし、新維新志士が相田さんを利用するならば、相田さんは相当村正の呪いに当てられている可能性があるが、そうでないならば相田さんの何かしらの動機を利用するのかもしれない。

そうなれば、相田さんの身辺を洗う必要がある。

急いで職員室に向かい、神谷先生に話に行った。

「先生!!」

「神崎君?どうしたの?」

「演劇部の相田さんと、仲の良かった人とかいますか?」

「相田さんと?」

「うん、誰かいなかった?」

「確か同じクラスの吉野さんって子と、よく喋っていたかな?」

「分かった、クラスは?」

「二年三組だよ」

「分かった」

俺はそのまま二年三組に向かった。

そして二年三組についた。

「あの?」

「はい?」

「此処に吉野って子いない?」

「佐紀ちゃん?」

「佐紀?兎に角、吉野さんと話したいんだけど」

「分かりました、佐紀ちゃんー」

「はーい、なに?」

「この人が佐紀ちゃんと話したいんだって」

「君が吉野さん?」

「そうですけど、ネクタイの色が緑ってことは先輩ですか?」

「そうだよ、俺は三年の神崎。よろしく」

「それで話って?」

「相田さんと友達なんだよね?」

「そうですけど、聖が何処にいるか分かったんですか?」

「いや、それはまだだけど、相田さんって他に誰かと一緒にいたりしてた事ある?」

「一緒にいる所ですか?」

「うん、なかが悪かったとか」

「え?弱みでも握る気ですか?」

「はい?」

どうやら、俺が相田さんに気があるとか、そんな事を思っているのだろうか?

「そういう事じゃなくて、大事なことなんだ」

「それが聖が見つかる事と関係あるんですか?」

「うん」

「それなら分かりました。確か同じ部活の田宮さんと付き合うかもって話だったんだけど、それで聖もその気だったんですけど、倉上さんが途中で乱入して所謂、三角関係ってやつです」

「三角関係か」

「はい、それから倉上さんが苦手になってしまったみたいで、遠ざけていたけどしつこくて困っていたみたいで」

「困っていたか」

「でも、あんな事になるなんて」

「あんなこと?」

「ええ、少し前に倉上さんが聖に言い寄ったみたいでそれを突き放した時に反撃されて腕を怪我してしまって」

「それで倉上は?」

「一週間の謹慎になったみたいですけど、それ以来聖は倉上さんを恨んでいるんです」

「恨んでいる?」

「はい、聖は趣味で競技かるたをしていて、腕を怪我した時期に大会があって、それで怪我で大会に出られなくなってしまって。大会も結構でかい大会らしくてそれに出るのが目標だったのに大会に出られなくなったので、相当恨んでいるかも」

「そうだったんだ」

「はい、それだけじゃなくてあれ以降、男の人に苦手意識を持っているみたいで」

「そうか、話してくれてありがとう。必ず相田さんを見つける」

「お願いします」

それから自分のクラスの受付に戻った。

「おい、彦真!!」

「ああ、ごめん光一」

「ごめんって、俺ここから離れられなかったんだぞ」

「悪いって」

「これは貸しだからな」

「分かったって」

「今度返せよ」

「はいはい」

光一には悪いことしてしまったがこれで辻褄があうな、後は龍馬さんと話して待つしかないな。

「神崎君」

「はい?」

呼ばれた方を見ると神谷先生がいた。

「何かあったんですか?」

「お客さんです」

「客?」

「うん、だから誰かに受付変わってもらって」

「分かりました」

受付を教室にいた生徒に代わってもらって、神谷先生と一緒に客がいると言う部屋までついていった。

「それで、客って誰ですか?」

「この前一緒にいた人だけど」

「一緒に?」

「うん」

この部屋にいるよ。

「失礼します」

「はい」

中に入ると、中には龍馬さんがいた。

「坂本さん?」

「待たせたね」

「丁度、話したいことが沢山あって」

「そうか、まあ皇護のメンバーも控えているから電話で聞いてもらおうか」

「はい」

龍馬さんは携帯で織田さんに電話をかけてかかって、話を始めた。

「それで、相田さんは倉上君と確執があったみたいで」

「確執?」

「はい、倉上君は相田さんに言い寄って時があってそれで腕に怪我をしてしまったみたいで」

「それで?」

「相田さんは、趣味での競技かるたの大会があったそうなんですけど、腕の怪我で出られなくなってしまって」

「それで恨みがあると?」

「はい、もし村正の呪いを使い新維新志士は、その恨みをも利用して明日の演劇部の演劇が始める時に、此処に来るのではないかと」

「なるほど、話は分かった。」

「それで、倉上君と田宮は?」

「順調に回復してもう今日の朝一で退院して、さっき文化祭に来ていると親御さんから連絡が来たよ」

「それじゃあ明日の演劇部の演劇は?」

「まあ、やるだろうけど、これから中止にするとなると説得に骨が折れるね」

「そんなこと言っている場合じゃないですよね?」

「まあ、落ち着いて、中止にしても二人は明日も文化祭に来るだろう」

「じゃあ結局、相田さんは此処に来るかもってことですか?」

「そうなるね」

まずいな、文化祭に来てしまうと相田さんの恨みを果たすだけで済むはずがない。

明日は学校関係者だけじゃなく、生徒の保護者並びに中学生などが見学に来る場でもある。

そんな場所で村正が暴れれば被害はでかくなる、それにそうなれば皇護の存在もレガシーホルダーの存在も浮き彫りになってしまう。それに相田さんが村正を持ってもう三日は経つ、田宮は二日であんなに体そして精神が危険に及んだ。田宮は運動神経はとても良い方だ、それに比べて相田さんの体がもつだろうか?

「相田さんの体がもつでしょうか?」

「分からない、でも明日相田さんが此処に来るのは確かだ。それを僕らは止めないといけない、聞いてたね隼人」

「分かった」

織田さんも龍馬さんと同じくらい頭がきれると聞いたので今から作戦を考えて貰えば大丈夫だろうか?

「明日、相田さんが来るのは確実ですよね?」

「そうだね」

「止められないのでしょうか?」

「今の所難しいね、今、相田さんが何処にいるのか分からないし」

「田宮を見つけた時みたいに、新維新志士のアジトにはいないのでしょうか?」

「今、確認できる限りの以前のアジトは全部、警察が確認したがそれらしい情報はなかった」

「じゃあ、今使っている、アジトは?」

「新維新志士はまだ謎が多い組織だし、そう簡単に見つけられないよ」

「じゃあどうしたら」

「明日は通常通り文化祭を行う」

「え?でも」

「そこで、相田さんを迎え撃つ」

「それだと被害が」

「被害が出る前に止めるさ、それも僕ら皇護の仕事だろ?」

「そうですね」

俺は覚悟を決めた、必ず相田さんを生きて止める、そう考えた。

「失礼します、神崎君?」

「はい?」

「神谷先生、どうしたんですか?」

「それが吉野さんが神崎君に話があるって」

「話?」

部屋を出ると吉野さんが立っていた。

「あの?」

「ん?どうしたの?」

なにやら話ずらそうだったので、近くの自動販売機の隣のベンチに座り話を聞くことにした。

「それで、なに?」

「もしかして聖が居なくなったのは、刀が関係していたりしますか?」

「どうしてそう思うの?」

「聖が前に言っていた事を思い出いたんです」

「何を?」

「劇で使うのに良い刀が見つかったって」

「それで?」

「ネットで刀が不思議な力で精神を、乗っ取って人を襲うって見たのでそれで聖はその刀でおかしくなっちゃったのかなって」

「でも、それはネットの都市伝説の域を出ないでしょ?」

「まあ、そうですけど。もしその刀を聖が見つけて劇に取り入れようとしていたら、聖はどうなっちゃうんでしょうか?」

「それは犯罪でもないから大丈夫だと思うけど」

「本当ですか?」

「うん、まあもしそんな呪いがあったら大変だね」

「そうです、でも聖は人を傷つけるような子じゃないですけど、もしかしたらって事もあるんじゃないかって」

「そっか、教えてくれてありがとう、それじゃあ」

「あの」

「ん?」

「聖をお願いします」

「うん、任された」

そして俺はさっきの部屋に戻り、今の話を龍馬さんと共有した。

「それなら僕らが次にどう動くかは決まったね」

「そうですね、その時間帯は演劇部の人間以外近寄らないように先生に頼んでみます」

「うん、お願い」

そうして一旦、龍馬さんと離れた。

クラスに戻ると光一からまた怒られた。

「お前は仕事ほったらかして何処に行っていたんだよ」

「ちょっと神谷先生と話をな」

「はー、もう次はないからな」

「了解」

そうして三十分ほど受付して、今日は文化祭の時間は終わった。

時間は終わってもクラスの中は騒がしかった。

「そこ、ガムテープで補強して」

「はーい」

お客さんがお化け屋敷の道を通る間に、机と机で道を作り安全性を作るために机の周りを段ボールでくっつけるようにしているのだが、それが脆いのだ。

どんなに強い粘着力があるガムテープでも、一日中人が何回も当たってはがれそうになるのを何度も起これば剥がれてしまう。だから今それの補強をしているのだが、見るからにもうぼろぼろだった。

「彦真も見てないで手伝えって」

「分かったよ」

ガムテープで色んな所を補強してそれを繰り返す。それをクラス全員で行うこと三十分。

「やっと終わったー」

「でも、明日また朝来たら剥がれていたりするんだよね」

「それが面倒なんだよな」

「それなー」

それぞれ、面倒くさいと言う意見がちらほら聞いた。最初から分かっていたことだろうに何を今更と言いたくなったがそれは心の中にしまった。

「彦真―」

「なに?」

「この後、皆で集まるけどどうする?」

「俺はこの後予定あるからいいよ」

「了解、じゃあまた明日」

「うん」

光一が帰った所で俺は空いていた椅子に腰かけた。

皆、各々教室を出て行き何処かに行ってしまった。

これから相田さんをなんとかしないといけない、だがそれはこちら側が想定している場合にうまく行けば田宮のように入院して帰れる程度になるだろう。だが想定以上に村正に毒されていたら命は危ない、以前、村正の妖刀が使われていた時代。その使用者は皆、何かしらの悲劇に苛まれて亡くなったとされている。それが村正が妖刀と言われ始めた要因だった、もしそれが現代にも起こりうるのであれば相田さんの命のリミットは今どこまで行ってしまっているのだろうか?

「神崎君?」

「はい?」

「もう皆帰ったよ」

「知っています」

「じゃあ何していたの?」

「いや、考え事があって。もう下校時間ですか?」

「いや、まだ時間は大丈夫だけど教室に一人だったから」

「そうですか、あの神谷先生」

「なに?」

「明日は演劇部の演劇は中止にできないでしょうか?」

「その話ね、さっきの人にも言われたよ」

「じゃあ」

「でもね、田宮君も倉上君も戻ってきたし予定通りやるよ」

「そうですか」

「それに、これからリハーサルをやらないといけないしね」

「リハーサルは何時からですか?」

「後夜祭のリハーサルとダンス部のリハーサルをやった後になるから、あと一時間くらいした後になると思うけど」

「そのリハーサルって、演劇部以外その場にいないですか?」

「多分」

「分かりました、それで俺もリハーサルに同席することはできますか?」

「いいけど、どうかした?」

「いや、ただ気になったので」

「分かった、それで先生からも質問していい?」

「いいですけど」

「進路とかどうしようと考えている?」

「進路ですか」

「うん、前は確か大学に進学するって聞いたけど」

「そうですね、今の所は」

「そう、ならいいけど」

「何か、ありました?」

「いや、神崎君は今、何をやっているの?」

「何をって、ただ高校生ですけど」

「そうじゃなくて、昨日一緒にいた人達と何をしているの?」

どうやら、神谷先生は皇護の事を気にしているらしい、でも本当の事を話す訳にはいかない。

どう切り抜くか考えていると先生は話を続ける。

「先生は生徒が危険な事をしようとしていたら、止めないといけない。それが自分のクラスの生徒なら尚更」

「心配しなくても大丈夫ですよ、あれはこの前少し事件に巻き込まれた時に、警察に助けてもらってそれで今回、相田さんが失踪した状況と似ていたので強力して欲しいって言われてそれで」

「組織って言うのは?」

しまった、組織に入っていると龍馬さんが言ってしまっていたのを忘れていた。

「それは、その」

「話せない組織ってこと?」

「話せないわけではないですけど」

「じゃあ話して、神崎君が危険なことをしようとしてないって教えて」

「組織って言うのは警察の中で、失踪者を探すための部署ができるって話しがあってそれに誘われていて、でも大学に行こうか迷っていたら、また事件が起きたのでそれで手伝ってくれないかって言われて、手伝いならいいかって思って来たら此処だったってだけで」

「そうだったのね」

「でもまだ正式に決まった訳ではないので周りには言わないようにって言われたので」

「なるほど、それは警察で働くってこと?」

「まあ、そうなりますけど、ただ大学もまだ考えているので働くとなったらバイトって扱いになるみたいですけど」

「まあそれでも、危険は付き物だよね」

「そうですね、まあでもそんなこと言ってもどんな仕事も危険度が比べられるだけで危険がない仕事なんてないのではないでしょうか?」

「そうかもね、まあ分かった」

なんとか乗り切れたのだろうか?

「それで僕も質問していいですか?」

「なに?」

「相田さんと倉上君の関係性は理解していますか?」

「誰かから聞いたのね?」

「はい」

「あの二人は少しこじれてしまったみたいで、私から相田さんには部活を休んだりするのもいいけどって言ったんだけどね、相田さんは気にしないって言われて、でも気になってはいたようだったけど」

「そうですか」

「それじゃあ私はもう時間だからリハーサルに行くけど一緒に行く?」

「いや、もう少しここにいます」

神谷先生はそのまま教室を出ていった。

俺は龍馬さんに電話した。

『もしもし』

『坂本さん、やはり話した通りでした』

『じゃあ相田さんが狙っているのは』

『はい、このまま予想通りなら被害も最小に抑えられるかもしれません』

『分かった、これから準備する』

『お願いします』

電話を切って、無銘を持ち体育館に向かった。


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