「お前が皇護の新人か?」
「ああ、お前は何者だ?」
「俺は黒神朧だ、以前は皇護にいた」
「は?」
「これを見たら信じてくれるか?」
黒神は汚れたらバッチを持っていた。あれは皇護のメンバーになった証のバッチだった。
「嘘じゃないみたいだな」
「まあ、もうこれに意味はないがな」
「ああ、お前に勝って村正を止める」
「勝って?」
「ああ」
「甘いな、甘すぎる。そんなんでは生き残れないぞ!!」
黒神は刀を出した。
それは綺麗な色の刀だった、これが本物の村正。
俺も無銘を鞘から抜く。
「殺すつもりで来い!!」
瞬穿で距離を詰めて刀を黒神の腹を胴斬りを繰り出す、でもそこに黒神は居なかった。
「え?」
「残念だ、死ね」
背後から殺気を感じた。そしてそのまま斬り殺されると思ったが俺は霞歩と言う、視線を外さずに相手の死角へ滑るように移動する足技を使い、縦切りをする。
「おお、良い判断だ」
それでも、黒神は簡単に交わす。
「そんな」
「良い反射神経はしているが、圧倒的な実践不足」
分かっていた、分かっていたけどこれでは差は埋まらない。
だったら技で押し切るしかない。
「お前に足らないものは何か教えてやろうか?」
「実践だろ?」
「それもそうだが、それ以外で戦闘で一番大切なものがお前には欠けている」
「一番大切なもの?」
「殺意だよ」
「殺意?」
「ああ、普通、剣士や銃など武器を持ってない素手でも戦う時、真っ先に死ぬ奴は殺意がない奴だ、お前には殺してでも相手に勝つと言う殺意がないんだよ」
「それでも!!」
今度は右袈裟斬りで斬りつけるがそれも交わされる。
「大方、突然レガシーホルダーになって、きちんとした戦闘はこれが初めてなんだろ?」
何も言えない。
「黙っているって事は図星だな」
「笑いたければ笑えよ」
「笑わねえよ、さっきの村正の模造品とは言えあの数を、一度に戦闘不能にさせることができるんだ。それは評価できる、だがあれも誰も傷つけないようにする技だろ?」
「そうだ」
「それが気持ち悪いんだよ」
「いつから皇護はそんなアマちゃんな組織になったんだ?ああ!!」
なんだこいつ急に、怒り出して斬りかかってきた。今の俺には、それをぎりぎり避けることしかできない。それも霞歩を使わないといけないくらい黒神は速かった。
このままぎりぎりで避けていてもいつかは、こっちの体力が切れて殺されるだけだ。
それから、俺は正面斬り、縦斬り、胴斬り、突き、を繰り出した。これは剣術の基本の打ち込んだ、それは沖田さんに教わった事だった。
「そんなんじゃ、いつまで経っても当たらねえよ。次は袈裟斬りだろ?」
そして黒神は刀を斜めに構えた。
でも、武蔵さんからは技を引き出してくれた。
「ああ、正解だ、でも不正解だよ!!」
俺の刀は右下から一気に加速し、振り上げる。その速度の速さから刀が一瞬赤く染まった。
「赫刃!!」
「こいつ」
黒神は後ろに吹っ飛んだ。
「凄い速さだ、一瞬、刀に力を入れないと村正ごと俺の体に傷つけただろうな」
「これでも駄目かよ」
「ああ、まだだな。でも良い今度は殺気が籠っていた。もっとだ、もっと斬り合いを、本気の殺し合いをしようじゃないか!!」
黒神は一気に加速して、さっきの剣術の基本の九つの打ち込みを繰り出す。それを受け流しながら反撃と行きたいがその隙はもう与えられない。
反撃のしようがない、そこまで剣の腕では黒神の方が遥か上にいた。それこそ速さの沖田さんより速い、技も武蔵さんよりも遥かに上だ。まあ修行の時は二人は本気じゃなかっただろうけど、それでも本気で二人で戦っても相手にできる程の実力を黒神は持っていた。
でも、やれる、いややらないといけない。
一瞬、わざと隙を作り誘い込む。それをこんな剣士が逃すはずはないだろう。
その隙をついて刀を斬りこんでくる。そこを刀で守り視線で相手を誘導し次の斬り込み予測させる。
「おい、そろそろ限界か?そんなフェイクばればれだぞ。次はこっちか?」
そんなもの分かっているわざと、そっちに誘導させたんだから。
「こっちだ!!」
霞斬り、相手の視線を誘導し、予測不能な角度から斬るフェイント技。これが最後の足掻きだった。
「惜しいな、視線のフェイクか」
でも、寸前で交わし、逆にがら空きの場所に村正が当りそのまま袈裟斬りをくらう。
「う…」
俺は倒れた。
「まあ、楽しかったわ。新入り」
そこで意識が落ちたと思った瞬間、目の前には彦齋さんが立っていた。