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第18話本当の共鳴

「おい、ここで終わるつもりか?」

「全部出し切りました、でも勝てなかった」

「だからって諦めるのか?」

「でも、霞斬りも避けられて」

「完全には避けられてない」

「え?」

「顔に傷つけていたぞ」

「は、こっちの最終手段でもそれが限界か」

「お前の限界はまだこれからだ」

「でも、もう手がないし」

「ここで諦めたらまた、誰かが村正によって苦しむぞ。それはお前が一番嫌がっていたことじゃないないのか?」

「でも、全力で殺意を込めても、勝てない相手にどうやって」

「勝手に限界を悟り、お主位の童が決めるなど百年早いわ!!」

そこで何かが吹っ切れたような気がした。

「うるせーよ、爺さん」

「お、言い返すか」

「そう言うって事は策くらいあるんだろうな?」

「ああ、こっちの最後はこっちで決めるわい」

「さあ、どうする」

「拙者の魂と彦真の魂を共鳴させる」

「そんなことできんのか?」

「ああ、遠くても血がつながっている拙者と彦真にしかできない。そしてこの戦いで成長したお前とだから出来る御業だ」

「分かった」

そして俺の前には、村正を持ち背を向けている黒神。

「おい、まだ終わってないぞ」

「ん?その傷でやる気か?」

「やりたいんだろ?殺し合い。こっちはまだ余力残ってっから」

「満身創痍の奴とやってもつまらん」

「怖いのか?血を求める村正を持っているのに?」

「言うじゃねぇかクソガキ。もう致命傷受けていんのにやれんのか?」

「ふざけんじゃねぇよ、死なないと殺し合いにならないだろ」

「そうか、意識が戻って不意をつかないとはお前の方がふざけてんだろ」

「死ぬまで付き合ってもらうぞ、黒神!!」

「いいぞ、その目だ!!」

「継魂・零式!!」

[これは、完璧な共鳴して状態でしか使えんが、一時的に全ての身体能力が上限を超える力を使える。だが今の彦真の体ではもって三分程しか動けないぞ]

[三分、上等やってやる]

「なんだ?体から白いオーラ出しやがって」

「村正は黒いだからな、黒と白。粋だろ?」

「まあいい、来い!!」

構えた瞬間に神影斬を放つ、これは白いオーラすら見えない程の神速の一閃。

「くぅ!!」

黒神は辛うじて胸に打ち込まれた、斬撃を防ぐ。そして反撃しようと刀を振るうが俺は既に背後に回っていた。

「鳴神閃!!」

渾身の気迫とともに雷鳴のような斬撃を放った。

「うぉ!!」

黒神の背中には深い一撃が斬り込まれた。

黒神が村正を地面に着き、片膝をつく。

俺はそれを見逃さず、次の攻撃を繰り出す。

「絶影・九連閃」

剣術の九つ全てを打ち込む技で一気に追い込む。

だが、黒神は倒れない、血だらけになりながらも立ち上がる。

「いいぞ、これを待っていたんだ!!」

「構えろよ、あんたも抜刀得意だろ?」

「ばれてたか」

「まあな」

俺と黒神は刀を鞘に収めて、腰まで下げて俺と黒崎の右手が刀に触れた瞬間、一瞬をお互いに斬り合った。

そして倒れたのは黒神だった。

「ここまでか」

俺も三分の猶予が無くなり、倒れ込んだ。

「お前も限界かよ」

「悪いな、こっちが残った余力も無くなったみたいだ」

「そうか、勝負は付いた。俺を殺せ」

「分かった」

俺は立ち上がり、黒神の前に立って。刀を握った。

「村正を胸に」

「餓鬼のくせに男の死に方、指定してんじゃねぇよ」

「村正と一緒にあんたを斬ってやる」

「そう言えば、皇護の最優先の仕事は村正の模造品を何とかすることか」

「ああ、そうだ。本物を斬れば模造品の効力も無くなるだろ」

「そうだ、ほれ、これでいいだろ?」

黒神は村正を胸の位置まで持って来て目を瞑った。

「行くぞ」

「ああ、いつでも」

そして俺は無銘で村正ごと黒神を斬った。


「終わったぞ」

「あ?」

「なんだよ、あー、もう限界だ!!」

俺はその場に座り込んだ。

「おいおい、斬ったんじゃねぇのか?」

「斬ったよ」

「でも、何処も痛くねぇ」

「当たり前だ、この技は人を殺す為の技じゃねぇから」

「は?」

「俺が使ったのは浄破・零ノ型って技だ」

「なんだそりゃ」

「これは村正を止める為に今、考えていたもんだ」

「どんな技なんだ?まあ大方見当ついているが」

「呪いの源に直接干渉し、存在そのものを浄化する。って言うか見当ついているなら聞くんじゃねぇよ」

「お前は何処までも甘いな」

「俺がやりたかったのは村正を止めることだからな」

「それじゃあ俺を斬る必要ないだろ」

「あんたも村正の呪いに充てられていたんだろ?分かっているんだよ」

「気づいていたのか?」

「ああ、模造品でも素人とは言え二日でも持ち続ければおかしくなる。それを本物を長く持つなんてことしていたら平気な訳ないだろ?」

「お前やっぱり良い目、しているな」

「だろ」

「ああ」

黒神は隣に落ちてあった、皇護のバッチを見つめていた。

「こんなに汚れちまって、それを持ちながら俺は放置していたのか」

「あんた、なんで皇護を抜けたんだ?」

「俺が村正に選ばれた時、その時は呪いの影響を俺だけ受けなかったんだ。まあ呪いに対して抗体があったんだろうな、昔から全て呪って生きてきたからな、でも龍馬と村正はそんな俺に役割を与えてくれた。嬉しかった。でも、今、考えると村正が全ての力を貸さないとかして、上手く呪いを受けないようにしていたんだろうな。そうして俺は、新維新志士と戦って行く内にどんどんと力を求めるようになっちまった。そして俺は村正の呪いの全てを受け入れ力に溺れた」

「それがあんたが皇護を抜けた理由?」

「いや、そもそも、俺の体には抗体なんてもんは最初からなかったんだよ。だから完全に呪いに充てられて行く時間も速かった、気づいた時には全身に毒が廻っていた。どうすることも出来ずにそのまま俺は龍馬達の前から消えた、そして力を求めた俺は新維新志士に入った。それが理由だ」

「そうか」

突然、黒神の口から血が噴出した。

「おい、大丈夫か?!」

「ああ、最近止まらなくてな」

「止まらないって、待ってろ今救急車呼ぶ!!」

「ああ、頼むよ一台な」

「ああ」

そして俺は直ぐに電話をかけて救急車を呼んだ。

「あと、少ししたら来てくれるから頑張れ」

「そんなに元気なら救急車要らなかったかもな」

黒神はそんなことを呟く。

「は?何言ってんだよ」

「救急車に乗るのはお前だ」

「馬鹿な事言ってんじゃねえよ。口から血が出てるって言っても直ぐに病院に行けば」

「俺はもう助からん」

「さっきから何言ってるだよ!!おい!!」

「俺の寿命が宣告されてるしそれにその日は、もう遠っくに過ぎてる」

「は?」

「俺はもうお前に殺されているはずだったんだ、だからお前も殺さないとか甘いこと言ってないでこう言うこともあるって受け入れろ」

「そんなこと言ったって俺は、お前に何度も殺されかけたんだぞ。こんなの受け入れるわけないだろ」

「楽しかったぜ、最後にお前みたいな奴と殺し合いできて」

「おい!!冗談やめろって、まだ助かるって」

「最後にお前の名前は教えろ」

「最後とか言ってんじゃねぇよ」

「いいから」

「分かったよ、神崎彦真だ」

「そうか、彦真これからお前は強大な敵と相対することになる、だからこいつを持って行け」

黒神が俺に村正を差し出した。

「俺の役目は終えた、村正を頼むぞ」

「おい!!黒神!!」

「うるせーよ、最後くらい静かに逝かせてくれ」

「でも!!」

「これが本当の最後の頼みだ、妹を頼む」

「妹?」

「ああ、お前も良く知っている奴だ」

「誰だよ」

「頼んだ…ぞ、彦…真」

「嘘だろ!!黒神!!」

俺は名前を呼び続けた、でも黒神は胸には村正から皇護のバッチを持ち替えて死んだ。

死に顔とは思えない位に幸せそうな顔をしていた。まるで村正の呪いから解放されて深い眠りについたかのようだった。

それから、数分して救急車が来て救急隊員が黒神を見て、確認をしたが静かに首を横に振った。俺は初めて人を殺した。


その後、俺は入院することになったが、救急車まで運ばれたところまでは現実に意識はあったがそこからは眠りにつくように、精神世界に入った。

「彦真、よく頑張ったな」

「彦齋さん、俺、初めて人を殺したよ」

「そうか、それを無駄にするな」

「分かっている」

「彦真。客人だ」

「客?」

「久しいな、神崎彦真」

「その声、村正が何で此処に?」

「所有権が朧から神崎彦真に変わったんだ」

「俺に?」

「ああ、もう全て話してもいいだろう」

「どういう事だ?」

「どこから話すせば良いものか。まず俺と神崎彦真とは長い付き合いなのだ」

「長い付き合い?」

「ああ、あれは数年前のことだった…」

それから俺は黒神との出会い、そして村正を俺が止める運命だったことも。

長い話しだった、現実で意識が戻ると、どれくらいの時間が流れたか分からない程に。


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