それから、柚葉とは分かれて家に帰る。
「お帰り」
「ただいま」
俺には家族がいる。柚葉には帰っても声をかけてくれる人はいない、自分はいかに家族がいると言う普通の当たり前を享受している。
「彦真」
「なに?」
母さんに呼び止められた。
「勉強ちゃんとしてるの?」
「ああ、ちゃんとしている」
母さんは俺がまだ大学に行くと思っている。でも俺は皇護として活動することを決めた。
でも親にレガシーホルダーのことや、皇護、それから新維新志士と戦うと言えば即刻怒号がなるだろう。だから俺は高校卒業したら何も言わずに家を出るつもりだ、だから大学入試までは家で大人しく過ごすつもりだが親に心配をかけるのは目に見えている、だから手紙くらいは残すかなど色々と悩んでいたがどうするか。
「母さん、父さんは?」
「仕事よ」
「そう」
俺は二階の自分の部屋に向かう。
ドアを開けるとそこには自分の趣味が詰まった場所であり、自分が最も落ち着く場所だった。
そして肩から無銘を持ちベットに寝こっりがる。
そして、鞘から無銘の刀剣が見える。そして俺は真っ白な空間に迷い込む。
[久しぶり、でもないか]
「彦齋」
あれから、川上彦齋のことは彦齋と呼んでいたがあれ以来まともに話していなかった。
[どうだ、調子のほどは?]
「特に変わったことはないけど」
[そうか、朧との戦いで彦真は大分変わったようだ]
「まあ、大分力はついたけど、この先のことを考えるとまだまだ足りない」
[そうだな、それでこの先のことは考えているのか?]
「ああ、卒業したら本格的に皇護で活動する」
[そうか、彦真が決めたのなら言いはしないが本番はこれからだぞ]
「分かってる」
「彦真~夜ご飯できたよ」
「分かった」
外の世界で出ると丁度夜ご飯だったらしい。
「ただいま、彦真」
「お帰り、父さん」
父さんは普通のサラリーマンだ、母さんは専業主婦。ごく普通の過程だ。
だからこそ、一人いなくなれば大事になるだろう。
ご飯を食べて、また自分の部屋に戻る。
暫くベットで寝転んでいると、携帯が鳴った。
「誰だ?」
携帯を見ると龍馬さんから電話だった。
『はい?』
『今、いいかい?』
『はい、なんかあったんですか?』
『ああ、少しね。新維新志士がここ最近暴れてるらしくてね。その報告をと思い』
『具体的には?』
『レガシーホルダーをさらって戦力を集めているらしいんだ』
『レガシーホルダーを?』
『ああ、近い内に皇護での活動があるから』
『分かりました』
そこで電話を切った。
暫くぼーっとしていると、柚葉から連絡があった。
(明日時間ある?)
(大丈夫だけど)
(明日でかけるから付き合って)
(分かった)
それから、時間を言われた。
明日は学校は休みだし、久しぶりに柚葉と出かけられると少し楽しみにしていた。
翌日、最寄り駅で待ち合わせをした。
「彦真、お待たせ」
「ああ」
柚葉は見慣れない私服姿で登場した。
「今日はどこ行くの?」
「ちょっと遠出」
「遠出ってどこ行くんだよ」
「それは着いてからのってことで」
「分かった」
それから、柚葉とはたわいもない話しをして、電車で数時間経った。
「ここだよ」
そう言われて連れていかれたのは、霊園だった。
「ここって」
「そう、お兄ちゃんと両親のお墓」
「なんで俺を連れて来た?」
「だって、お兄ちゃんと話したんでしょ?」
「そうだけど」
柚葉は悲しそうな背中で俺の先を歩く。
柚葉は花を手向けて手を拝んだ。
「じゃあ、私は先に行くから後は好きにして」
「分かった」
俺は朧の墓の前でしゃがむ。
「朧、これから俺はちゃんと皇護としてやっていけるだろうか?」
こんなことを言っても答えが帰ってくるわけではないのに、つい聞いてしまう。
正解なんて分からないしこれから世界はもっと、残酷になるだろう。
それを止めるのは俺じゃなくて朧の方が、ちゃんとできたのではないか?
そんな疑問が湧いてくる。
でも俺は残された。
だからやらないといけない。
「また来るよ、次はちゃんとした報告ができるように」
そう言って俺は朧の墓から離れた。