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第2話 あれから3年

あのカミングアウト後は散々だった。


父親は血圧が上がりすぎて寝込み、気力もなくなってしまったのか仕事は人任せになってしまっていた。


母親はあの日、立ち直ったように思えたが、調査会社に依頼しても兄ちゃんの居場所が一切わからないとの報告を受けとってからは精神的なショックが大きく部屋から出れない日がつづいた。


兄ちゃんは本当に姿を消した。


父親も母親も兄ちゃんの行方とパートナーの存在探しを‥‥‥あらゆる調査会社を使って探し出そうとしたが3年たった今も出来ていない。諦める事なく探しつづける両親にも感心するが、こんなに探されも一切みつからないのは、さすが兄ちゃんだなって感心する。

兄ちゃんを探せず連れ戻す事が出来ない父親はますます弱っていった。


兄ちゃんのパートナーは中学から大学まで同じでずっと一緒にいた佐々ささき  未来みらい先輩だと思っていた。もちろん調査会社にも1番に疑われていたが違うかった‥‥‥‥。しかし、未来先輩もゲイらしいっという報告があがってきたのも3年前。この報告を聞いた時に何故か心が躍るような感覚を感じて戸惑った。なぜ、未来先輩がゲイなら心が躍るんだ??俺のひたすら隠していた感情が顔を出してしまったのではないかと焦って【違う・違う・違う】っと何度も何度も呟いた。

兄ちゃんと未来先輩は女子からモテモテだったが10年間2人に女性の恋人は出来なかったらしい。2人は‥‥告白されては「ずっと好きなコがいるから付き合えない。」っと決まり文句で何人もの女子を振った。だから、必然的にふたりがあやしいとの噂もあったが真実はわからずじまいだ今も。

事実として今はパートナーではないという事だけは分かっている。


3年ぶりに調査報告書を見ながら「未来先輩どこにいるのかな〜。」と1人ごちり未来先輩の写真の顔を無意識で指でなぞっていた。ううん?兄ちゃんじゃなくて未来先輩の居場所を気にしている自分に何なんだよっと笑ってしまう。


未来先輩はたぶん‥‥‥‥俺の初恋の人。小学5年生の時に家に遊びによく来ていた未来先輩が好きだったと思う。断言できないのは当時は好きと自覚しないように必死だったから本当の心情が自分でもわからない。

あの時は幼いなりに‥‥‥男性に恋心を抱いてはいけないという自己防衛が働き、ただの憧れだと思うようにしていた。

でも‥‥‥‥あれから誰にも恋はしなかった。

いつも未来先輩が心の中に居座って誰も入ってくる事ができなかった。


ふいに思う。未来先輩に会いたいな‥‥‥‥‥。


こんな弱気になるのは仕事が大変だからかな‥‥‥‥3年前は兄ちゃんが抜けても大丈夫のようにしていてくれていたので問題なくここまでこれた。引かれたレールを全力で走っただけで成長ができていない。引かれたレールが残り少なくなってきているし、父親は体調が悪くて頼れないし、会社内は誰が味方で誰が敵かもわからない。ただただ1人で決めて1人で考えている。

兄ちゃんがいたらな‥‥‥‥って最近は思わない日がない。誰かにすがりたい。誰か‥‥‥。頭の中は未来先輩しか浮かんでこない。

そっと引き出しに写真をしまう。




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