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第3話 兄ちゃんからのプレゼント①

執務室から窓の外を見ていた。行き交う車が小さく見える。兄ちゃんは日本にはいないのだろうか‥‥‥‥。話を聞いてくれるだけでも良いのに‥‥‥‥。窓の下を見ても人は小さく小さく動くのが確認できるだけなのに‥‥‥‥兄ちゃんがいるんじゃないかと探すのが日課になってしまっている。ここ最近は探す時間が長くなっている。見つけ出せるはずもないのに。それは兄が決めてくれていた仕事が終わりに近づいていて焦っているからだろう。なんとか新規の仕事を決めないといけない。決断ができずにいる。


決められない‥‥‥‥‥。舞い込む仕事はいっぱいあるが、どれを選択すれば1番有益なのか??何万人もの従業員の生活を支える重圧がのしかかっていると思うと書類を持つ手が震える。はぁァァァ胃が痛い。

ゴクッ。

あまりにも胃が痛すぎて胃薬をお茶で流し込む。


ハァー。右手で目を覆う。秘書や周りに頼れば良いと父親に言われたが周りには、どっかの会社社長の息子やどっかの会社社長の娘婿で‥‥‥‥本当に一橋商事の事だけを考えてるヤツなんか1人もいない気がして誰も信用できない。ずっと孤独とも戦っている。ハァー。出るのは毎日ため息ばかり。兄ちゃんはこんな中‥‥‥みんなの信頼を得て人望があった‥‥‥‥すごい兄をもつとしんどいな‥‥‥。毎日毎日、兄ちゃんと比べて劣等感を勝手に感じている。

シーンとしていた部屋に、ルルルルルルルルル

受け付けから内線が鳴り響く


「はい。一橋です。」

「受け付けです。専務にアポなしの訪問者がいらっしゃってお断りしたんですけど、名前を言えば大丈夫だからと、お引き取りしてくれません。どう致しましょうか?」

「そうですかー。お名前は?」

「佐々木 未来様と仰っておられます。」

【佐々木 未来】頭が一瞬真っ白になる。さっきまで会いたいと願い写真をなぞっていた未来先輩が!!

「えっー。‥‥‥‥‥。み‥‥‥みら」

「専務、どういたしましょう?」受けつけが答えを急かす。未来先輩に会わずに帰す選択肢はない。未来先輩が会いにきた意図は不明だが意図なんかどうでも良い。ただただ会いたい。

「‥‥‥あっ。部屋に通して下さい、」

「承知いたしました。」

未来先輩??引き出しにしまったばっかりの写真をもう一度みて自然と口角があがる。

未来先輩が大学を卒業してからは1度も会っていない。5年ぶりの再会に胸の高鳴りを抑える事ができなかった。


コンコン。 ノックの音がする。


「どうぞ。」


「失礼します。」秘書の声が聞こえドアがひらく。


「よっ!久しぶり!」秘書の後ろから未来先輩が出てきて手を挙げながらいう。

緊張が一気にほぐれ緊張していた自分がバカバカしく思いフッと笑ってしまった。


「久しぶりです。急にどうしたんですか?」未来先輩は秘書に目をやる。

あっ。あ〜。

「すいません。外して下さい。」っと秘書に伝える。

秘書は怪訝な顔を一瞬見せたが「かしこまりました。」っと会釈をしてドアの方に歩きだす。

秘書が出て遠ざかったのを確認して‥‥‥未来先輩が近づいてくる。一歩一歩近づいてくる。


一歩一歩、先輩とのキョリが短くなりドキッと胸が高鳴るのを抑えることは出来なかった。


先輩の手がこちらに伸びてきているのがスローモーションのようにゆっくり見え触られると胸の高鳴りは高まる。



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