何も気にしてないし、気にしても仕方ない。
いつも通り稜輝と話しながら一橋家に行く。
稜輝の部屋に行く途中にある廊下から中庭を見ていたら‥‥‥‥‥龍輝がやってきた。
「よっ!」
「未来先輩、いらっしゃい。」
「未来先輩‥‥‥‥何かあった?」俺の顔をじーっと見てくる龍輝に戸惑いながら
「いや。何もない。」
「そうかな??元気ないよ。大丈夫??」
「大丈夫。」誰にも言われなかったのに龍輝には分かるのかとドキっとした。
稜輝とおばさんの話声がして‥‥‥‥
「龍輝。家族は大事にしろよ!いつ消えるか分かんねーからな。」
龍輝は俺の生い立ちを知っているのだろう。
「うん。わかった。」って素直に受け入れる。
「俺には家族がいないから〜大事にしたくても1人だからな!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。未来先輩?」
「うん??」
「未来先輩のお父さんやお兄さんについては、未来先輩自信で決める事だと思う。いやなら家族と思わなくて良い。けど‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥お母さんは違う。お母さんはいつまでも未来先輩の家族だよ。会えなくても、話せなくても、未来先輩の心で会えるし話せるよ。ずっと家族。そうでしょ?それに、寂しかったら家にきたらいいよ。僕も兄ちゃんもいる。僕はそう思うよ。」
2個下の小学生に諭されてカッコ悪い。
「うん。そうだな。」龍輝の顔を見ると笑顔だった。
癒されたのか分からないが‥‥‥‥涙が流れてきた。
涙を見て‥‥ビックリしたのかアワアワしていた。その様子がおかしくて泣きながら笑った。
母さんが亡くなった時から1人で生きていくしかない。しっかりしようとがむしゃらに過ごしてきた。
俺は‥‥‥‥‥‥【大丈夫。1人じゃない】と言ってほしかったんだろう。ずっと‥‥‥‥‥‥その言葉を待っていたのかもな。
何かに開放された気がした。
龍輝に対して初めてドキッとした。
あの日、ずっと弟ポジションだった龍輝が恋愛対象になった。
この日から龍輝の大人びた言動も、コロコロかわる表情も愛おしくおもった。
ただ‥‥‥‥自分なんかが汚してはいけないと心に言い聞かせてブレーキをかけていた。
大学に入り稜輝が家を出て1人暮らしを始めると実家に行く用事がなくなり龍輝に会える日は減った。
それでも‥‥‥‥‥龍輝の存在が薄れる事はなかった。
大学3.4回生は‥‥‥‥ヤバかった。同じ大学になり、あらゆる所でいち早く見つけてしまう。
女子と話しているだけど胸がチクッとしたり‥‥‥‥俺を見つけて「未来先輩」って嬉しそうに手を振る姿にキュンとしたり‥‥‥俺の心が忙しかった。