ピリリピリリピリリ。
携帯が鳴り確認しようとして手を伸ばし未来を起こしてしまう。
「うーぅん。龍輝おはよう。」もう一度抱きしめられる。
「おはよう。」未来に抱きしめられながら何とか
携帯を確認すると兄ちゃんからのメッセージだった。
はあぁぁぁぁー。っとため息をつく。
「誰から?」心配そうに顔をのぞいてくる。
「兄ちゃん。」
未来の顔が強張り「俺の癒しの時間を邪魔してまで伝えたい事って何??」いつもより低い声で言う。
「【親父は敵じゃない。敵は誠二おじさんと誠だ。】って‥‥‥‥‥‥。」
「ふ〜ん。龍輝はどう思う?」
「伯父さん達親子は‥‥‥‥‥会社を乗っ取ろうとしていた思う。兄ちゃんが、自分がいなくなる前に‥‥‥そうならないように伯父さん派の不正をあばいて処分をくだしたから今は力を持っていないはずだけど、兄ちゃんが言うなら念には念をで調べた方が良い。」
「そうだな。了解。手を打っておく。」
「うん。頼む。」
「仕事の話は終わり。まだ寝てよう。」どさくさに紛れて太ももをなぜまわしてくる。
「いや。帰るよ。明日の仕事の準備をしないと‥‥。」
未来の手をとめる。
「えぇぇぇー。」抱きしめられていた手に力が加えられる。
「えーじゃない。帰るよ。」
「‥‥‥了解。俺もシャワーしたら、そっちの部屋に行く。」
「‥‥‥‥‥仕事するんだけど。」ジロっと未来を見る。
「分かってる。俺も仕事する。」頭をポンポンとなぜられる。
「‥‥‥‥‥‥仕事ならいいよ。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥仕事もする。」
【も】って‥‥‥‥まぁーいっかー!!
ブツブツ言ってた未来を振り切って部屋に戻りシャワーして明日の社長への説明を確認していた。
成瀬貿易の名前だけで大丈夫だと思うけど‥‥‥‥兄ちゃんがいなくなってからは‥‥‥‥執念深くなっているからな‥‥‥‥‥。頭をガシガシとかいて決めた。
念入りに資料作る事にした。
カタカタカタカタカタカタ
資料作りを初めて30分ぐらい経った頃にインターホンが鳴る。
確認せずとも未来だとわかるが、一応、確認する為にモニターを見ると未来が手を振っていた。その姿にただただ癒された。一瞬で心を穏やかにさせる未来は精神安定剤より何百倍も効果がある。
モニター越しの未来に微笑みドアのロックを解除する。
未来が入ってきてキョロキョロまわりを見渡して一言ボソッと言う。
「龍輝の部屋ってカンジだな。」
黒を基調とした家具家電に物は最小限しかない。
「面白味がなくて悪かったな。」拗ねたように言う。
「想像通りでよかったよ。」未来は勝ち誇ったように笑う。
机の上のパソコンの画面を見入り真剣な顔になる。
「見積もりが甘いな。もっと詳細な数字を出せるだろ。」
「‥‥‥‥‥。どうやって?」
未来はカタカタカタカタカタカタっと数式を入れて簡単に数字を出す。
「そんなに利益出るか?」
「出る。」
「‥‥‥‥‥‥‥。分かった。」
数字を入れ直す。未来のおかげで完璧な資料が出来た。
「未来。ありがとう。おかげで良い資料が出来た。」
「じゃー。今日も泊まって?」ニッコリ笑う。
「えっ。ムリ。明日は仕事やし。」
「はぁ?隣の部屋だし明日、仕事でも泊まれるだろ?」
「‥‥‥‥‥。準備がある。」
「今、したじゃん。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「わかった。俺が泊まるわ。未来はいつも通り過ごして。邪魔しないから見守るだけ!」
「‥‥‥‥‥‥‥。わかった。」
邪魔をしないと言っていた未来だったが‥‥‥風呂にもついて来て一緒に入ったりと‥‥‥‥いつも通りとは、ほど遠い1日になった。
翌日は1度、部屋に戻った未来と一緒に出勤した。
朝イチで社長室に押しかける事にしている。
出来るだけ考える時間を与えないように即決させるように‥‥‥持っていくつもりだ。
9時10分
「行ってくるわ。」資料を片手に持って未来に声をかけ椅子から立ち上がる。
「おぅ。」っと未来が言うから「秘書だから!」っとニヤつきながら注意する。
「行ってらっしゃいませ。」っとニヤつきながら未来が言う。片手を挙げて部屋を出た。緊張して胃が口から出そうだったけど未来の他愛ない会話で落ち着きを取り戻した。
社長に事業内容と子会社化について説明する。資料をペラペラめくりながら聞いていた社長が口を開いた。
「有栖川と成瀬の息子の会社か‥‥‥‥‥。なぜ双方どちらかではなく一橋なんだ?」
「佐々木未来は有栖川の人間だと自分で思っていない。彼の生い立ちはご存知ですよね?成瀬貿易には石油事業がない。1から部署をつくるよりも一橋に入る事で準備に時間と金と人材をかけずに利益が分配される。成瀬貿易にもおいしい話に十分なってる」
「‥‥‥‥‥‥。そうか‥‥‥‥‥。」
「悩んでるうちに成瀬貿易、有栖川にもっていかれる可能性がある為、早めの決断を‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥。わかった。子会社化を了承するかわりに条件がある。」
バンッ!
重厚感のある台紙の冊子を机の上に置く。
「代議士の河本先生のところの娘だ。お前の事を大層、気に入ってるそうじゃ。子会社化にしたいなら今週末に見合いしろ。」
「‥‥‥‥見合いをするだけでいいんですね?」
「そんなわけないだろうが。お前から断る事は許さん。向こうから断られるなら仕方ないがな‥‥‥‥‥‥。どうする?」
クッソ‥‥‥‥‥‥‥この女性は兄ちゃんにつきまとってたヤツだな。ただただ一橋家の嫁というポジションが欲しいヤツだ。そんなヤツが断る事なんてあるわけがないと見込んだ条件だ。
やられた‥‥‥‥‥‥‥‥でも会社の為に仕方がない。
「わかった。見合いする。」