メロ・ユーバリは敵の数を確認する。
(十二機。どれも同じ機体・兵装というわけじゃない。〝要注意〟はさっき浮遊砲台持ちの高級機を難なく倒した、白い機体と黒い三機か)
ドタタタタタ!
ボルキュバインの自衛用機銃が連合の機体に向けて発射される。各々が回避行動を取る中、メロも敵が死角に入らないよう動き、間合いを保つ。
(こっちのビッグスーツの数は……十六機か。ここまで攻め込まれるとボルキュバインの攻撃は当てに出来ねえし、厳しいな。やっぱ残りの
メロは敵機を見る目を細くする。
(そうか、どっかで見たことあると思ったら……〝
メロはネイルガンのトリガーに指をかけ、ハンマーを握る手に力を込める。
(一機か、二機……全員じゃなくても首を
ラタタタタタ! ドタタタタ!
ホエイ側のビッグスーツ隊が、ボルキュバインの下に敵を潜り込ませまいと、連合のビッグスーツを狙って一斉に射撃してくる。
カリオはそれを左右に跳び回り回避しながら、メロの機体を見据える。
(メロ・ユーバリ……あの機体に
ガシュガシュガシュガシュガシュッ!
ネイルガンからビッグスーツの
ブォンブォンブォンブォンブォン!
カリオは釘をビームソードで打ち払いながら、メロに向かって突撃する。ニッケルとリンコは味方を守るように、ビームライフルとビームピストルで釘を撃ち落としていく。
「カリオ!」
「いつも通りだろ! 俺はコイツを抑える! おまえらはボルキュバインを頼む!」
ドン!
カリオは地面を強く
メロは大きく身体を左へ動かし回避する。同時に腰を落とし、左手のハンマーを思いっきり横に振るう。
ゴオォッ!
ハンマーの外周部に配置された四基のブースターから、青い炎の柱が噴き出す。ハンマーは一気に加速してカリオを狙う!
「あぶ……!」
カリオは体を
ズザザザ!
互いに横へ大きく動いた両者は、共に腰を落とし足を
ガシュッ!
「ッ!!」
カリオの右足に強い痛みが走る。見ると釘が右足の甲を貫通している。メロがネイルガンの銃口をこちらに向けていた。恐るべき早撃ち!
ガシュガシュガシュガシュガシュッ!
メロはネイルガンを連射しながらカリオに向かって突撃してくる! カリオは足を釘で地面に打ち付けられた状態で剣を振り、釘を打ち落とす!
メロが再びハンマーを構える。四基のブースターから炎が噴き出す。一方、カリオはビームソードをエネルギー
◇ ◇ ◇
「よし、張り付いた!」
ニッケルとリンコ、連合兵はボルキュバインの真下の空間へ到着した!
「迷うな撃て撃て撃て撃て!」
バシュシュシュシュシュシュ!
各々ビームライフル、ビームピストル、ビームサブマシンガンetc.を上を向いてとにかく撃ちまくる!
ガラガララガラ!
底面外装が破壊され落下する。
ゴゴゴゴゴ……
ボルキュバインの動きが
「右第一、第二、左第一
「クソクソクソクソクソ! 何をやっているんだ!」
大量の警報が鳴り
「イケてる? これ、動き止まったよね?」
「まだこのデカブツの攻撃能力は生きているはずだ、攻め続けねえと! ……つってもこのままじゃ時間かかるな……」
リンコとニッケルが再び銃を上に構えたその時、横に一機の
「俺にぃいいい!!」
突如並んできたその連合のビッグスーツは、巨大な大砲状の武器を両腕で持ち、上に向ける。
「任せろぉおおお!!」
ゴボォオオーン!!
「な、お、おおおおお!?」
巨大な大砲の正体は大型ビームバズーカ。取り回しと
ゴゴゴゴゴォン!!
上から響いてくる
バズーカのビームが通った跡はまるでトンネルのようになっていた。金属が溶けて出来た赤い縁取り輪が、
「すっご……やったんじゃない? アレ? っていうか敵さん邪魔しに来ないね?」
ミシ、ミシ、ギギ、ゴゴゴゴ……
ボルキュバインから
「ヤバい! 崩れる! 離れろ離れろ!」
ボルキュバインの下の空間からニッケル達は
山と見紛う二百メートルの怪物が、内側からズタズタにされて崩れ落ちていく。砲塔が地面に突き刺さり、巨大な鉄塊が地面を
◇ ◇ ◇
自身に
「これでまず一人!」
メロは勢いよくハンマーを振り下ろした。
キキィン!
青白い閃光が走る。
次の瞬間、メロのハンマーは突然、四つに割れて砕けた。
(……!? 何だ? 斬られた!?)
突然の出来事に集中が途切れたメロは、反射的に右腕のネイルガンを前に突き出す。
ガキィイン!
「なっ!?」
「む!?」
ネイルガンの銃身が斬られ、宙を舞う。この斬撃は、相対するカリオの攻撃ではない。
「――ウキヨエ流の居合術、一瞬二斬・バッテン。やはり
白いビッグスーツ、レイラが二人の間に割って入る!
両手の武器を破壊されたメロはすぐに距離を取る。
(
「もう少し周りに気を
(え?)
カリオは周囲を見渡す。そこら中に手足がもげたり、腰から真っ二つになって、動作を停止したビッグスーツが何機も転がっている。十六機いたホエイ側のビッグスーツは、カリオとメロが戦っている間にレイラによって全滅させられていた。
(いや、そんな時間経ってなかっただろ!? すげえな!?)
「くそったれが!」
ガシャン!
メロのビッグスーツの前腕部が開き、隠しナイフが飛び出す! メロはそれを
タン!
「金に目が
繰り出されたナイフの刺突を、レイラは
その瞬間、メロの機体に幾つもの線が走る。
「来世ではお金以外のモノも大切にした方がよろしくてよ。例えばそう――愛とか」
ズパァン!
その線に沿って、メロの機体はバラバラに吹き飛んだ。
一回の跳躍の中で放たれた無数の斬撃。神業ともいえる剣技は名うての傭兵が
「ぐぬぬぬ……! ぐっ、ああーっ! くそっ、痛ってぇー!」
カリオは右足に刺さった釘を抜くと、痛みに
「……素晴らしい居合でしたわね。もしかして
「いや、すんげえ助かった。ほら足、こんなだし。あー
「ロマン流の
ゴゴゴゴゴゴゴォ!
カリオとレイラの二人が話していると、突然轟音が辺り一帯に鳴り響く。ニッケル達の攻撃が成功し、ボルキュバインが崩壊を始めたのだ。
「……勝負あったな」
「……ええ」
(ダンス・オブ・バトルオジョウサマ⑦へ続く)