◇ ◇ ◇
ブォン!
ギンヨロイオオケントウシムシが勢いよく左の爪を、カリオのクロジ目掛けて振り下ろす。カリオはバックステップで冷静に回避する。
(めちゃくちゃ速えな……でもあの金色強盗やこの前のお嬢様ほどじゃねえ)
逆水平!
カリオは横にビームソードを振って、オオケントウシムシが振り下ろした左の爪を斬りつける。爪の先が斬り落とされ、オオケントウシムシが甲高い鳴き声を上げて後ろに下がる。
(よし、いける! 腕利きのビッグスーツ乗りと
「うわあああああ!! カリオーーー!! 全部こっちに飛んできたああ!!」
「なっ!? はぁ!?」
ブブブブブブーン!
五匹の超巨大虫がこっちに飛んでくるのを見てリンコが叫んだ。
「どどどーしよ! とにかく数を減らして、いやまずは街の外に――」
虫達の接近が速い。リンコはビームピストルに武器を替えて狙いをつける。
先頭を飛ぶ黒い虫が、リンコ目掛けて突撃してくる。それをギリギリまで引き付けて、リンコは防壁の外側へ仰向けに倒れ込むようにして落下する。
バシュッバシュッバシュッバシュッ!
地面に背中を向けて落下しながら、上を通り過ぎる黒い虫へ二丁のピストルを連射する。腹側にビームの連射を受けた黒い虫は、緑色の血を噴き出しながら絶命し、高度を下げていく。
後ろ向きに宙返りして着地すると、リンコは再び上を向く。残る四匹の超巨大虫が防壁を超えてくる。
(爪斬り落とした時の鳴き声に反応したのか!?)
もう一匹のギンヨロイオオケントウシムシが、爪を斬られた個体の向かい側、カリオを挟むようにして着地する。一方、三匹の黒い虫は羽音を立てて、リンコの頭上を旋回する。
(……いや考えてる場合じゃねえ!)
カリオはビームソードを充填部へ納刀する。手負いの一匹をすぐに仕留め、数的不利な状況を少しでもマシな方へ変えたい。
ドン!
地面を強く蹴り、オオケントウシムシの
ブシュゥウウウ!
「ぐあっ!?」
突然、オオケントウシムシは口から紫色の液体を吐き、カリオのクロジの頭部に吹き付けた! クロジの円形のアイカメラが液体で汚れ、カリオの目にはフィードバックとして強い痛みが走る。
「カリオ! ってヤバ、こっちも――」
カリオを援護しようとするリンコだが、上空の三匹の黒い虫がリンコ目掛けて突っ込んでくる!
ピストルを上空に向けて構えるリンコ。一方、目潰しを食らったカリオの後ろからオオケントウシムシの爪が迫る――!
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
突如、三本のビームが飛来する! 一本はカリオを斬り裂かんとしていたオオケントウシムシの爪を破壊、もう二本は降下中の黒い虫達の目の前を通り、驚いた虫達は上空へ戻り散開する。
(……!? 何だ!?)
「え、何!?」
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
カリオとリンコが驚く中、また緑色のビームが飛来する。一発のビームがオオケントウシムシの背中に着弾。甲殻を赤く溶かすと同じ場所に次のビームが着弾する!
シシシシシー!
ビームが貫通し、オオケントウシムシの胴体に風穴が開く。甲高い断末魔を辺りに響かせると、銀色の巨体は力なく倒れた。
死体となったオオケントウシムシの向こう側で、ライフルを構えて立つビッグスーツ、コイカル――ニッケルだ!
ビュン! ビュン!
二基の浮遊砲台「チョーク」が、もう一匹のオオケントウシムシの頭上を取る。
バシュゥ! バシュゥ!
オオケントウシムシの頭部の一点に、二発のビームが命中する。耐えきれなかった頭部が爆散し、オオケントウシムシは倒れた。
ビュン! ビュン!
間を置かずにチョークは三匹の黒い虫の方へ飛ぶ。ニッケルも浮遊して二基のチョークと共に虫を囲む。
ブブブブブ! ブブブブブ!
虫達はUFOのような不規則な飛行で狙いを
ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
ニッケルは自機の位置も調整しながら、チョークを高速で動かし、虫を捉えようとする。
ブブブブブ! ブブブブブ!
ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
高速で目まぐるしく動く虫とチョーク。ニッケルは慌てずに、集中して二基のチョークを操作する。
「すごー……なんかめちゃくちゃ上手になってるじゃん」
バシュゥ!
リンコが感心しているその上空で、一基のチョークがビームを発射する。
バシュゥ! バシュゥ!
続けてもう一基のチョークとライフルによる射撃。虫達はビームを避け、散開しようとする。
バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!
直後、一匹の虫に対して三つの銃口から一斉にビームが飛ぶ。
バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!
二基のチョークは複雑な軌道で飛びながらビームを連射する。何発ものビームが虫に命中し、羽も体もズタボロになった虫が地面に墜落する。
バシュゥバシュゥバシュゥ!
次の瞬間、別の一匹に向けて、チョークとライフルから三発のビームが一斉に放たれる。三発とも命中し、虫の頭部が爆散。また一匹墜落していく。
残りは一匹。
バシュッバシュッ!
「てい!」
下の方からの射撃。リンコのビームピストルだ。最後の一匹は慌てて回避する。
バシュゥ!
ニッケルのライフルから放たれたビームが、横からその頭部を貫通する。羽音が消え、その巨体が墜落した。
ニッケルのコイカルは地面に着地し、二基のチョークがその背中へ帰って来る。
「ニッケル! 大丈夫かよ!」
なんとか目が開くようになったカリオがニッケルに声をかける。
「大丈夫なの!? おかげで助かったけど」
「……」
リンコも声をかけるがニッケルの返事がない。
ンゴ…ゴゴ…ゴ…
ニッケルの乗ったコイカルが斜めに傾き始め――
ドタァン!
――倒れた。
「……ニッケル?」
「え、ニッケル?」
カリオとリンコは顔を見合わせると、慌ててそれぞれの自機から飛び出し、ニッケルのコイカルのコックピットを外側から開ける。
「おい泡吹いてるじゃねえか!」
「顔なんか青白いんだけど!? ねえどうすんの!?」
「おいニッケルしっかりしろ!」
「いやー! 死なないでニッケル!」
(バギー・バギー・ディザスター⑥へ続く)