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バギー・バギー・ディザスター⑥




 ◇ ◇ ◇




 一夜明けてようやく事態は落ち着きを見せた。




 ネモトシティの治安部隊の奮戦により、残りの巨大虫も掃討そうとうに成功。怪我人の収容しゅうようも完了した。


 とはいえ街は盛大に破壊されてボロボロ、そこらじゅうに放置されたままの巨大な虫の死体、何より死者が十数人、重傷者も多数出ており、とても手放しで喜べる状況ではなかった。


 ちなみに騒動の発端となる事故を起こしたハマグリン化学工業は、全社屋全壊、行方不明の社員が九人、それ以外の社員は全員死亡という壊滅かいめつ的な打撃をこうむったため、事件の諸々の調査・処理を行うであろうネモトシティ自治体は頭を抱えることになりそうだ。




 事態の収拾に尽力じんりょくしたレトリバーのクルー達に、ネモトシティから謝礼金を贈るという提案があったが、街が先述の状態でこれから復興というときに、とても受け取れる気にはなれず、辞退することとなった。


「ボランティアはとてもいいことだって聞きました。お小遣いはもらえなかったですけど、すごくいいことしたんですよ。元気出してください。お小遣いは貰えなかったですけど」


 格納庫の階段に座ってうなだれるカリオとリンコを、トウモロコシマンのお面を被ったマヨがはげます。




 一方、MVPモノの活躍を見せたニッケルは戦闘後、即座に医務室に運び込まれた。船医のヤムによると二日間安静にとのこと。


 カリオとリンコが見舞いに来ると、ニッケルは脂汗をかいて、うーんうーんとうなりながら眠りについていた。


「……まあ夢にみるよね。私達でもキモかったもん、アレ」

「無茶するよなぁ。実際ヤバかったからマジで助かったけど」

「……ってか! アンタ達なんで出撃させるのよ! 言ってたでしょ!」


 怒るリンコの視線の先では、タックとミントンが正座している。


「ま、まさかそこまでとは思ってなかったし、えへへ……」


 ほおをかくミントンを見て、リンコはため息をついた。


「……ったく、なんでもかんでもバカ真面目にやりやがって」 


 カリオはうなされているニッケルを見る。


「今度、一杯おごらねえとだなぁ」




 ◇ ◇ ◇




 ――数日後。


 夜。地上艦「レトリバー」は、赤土の荒野を走る。




「よし、これで最後か」


 その食堂にて。綺麗きれいに書類がじられた二冊のファイルがテーブルの上に並べられている。ニッケルは三冊目のファイルに書類を綴じると、それをテーブルに並べ、ふうっと大きく息を吐いた。


「あれ? また書類整理手伝ってるの?」


 通りかかったリンコがロリポップキャンディーをめながら、ニッケルに聞く。


「格納庫で見つかった書類があってな。片付けるの忘れてたんだろう。まあ暇つぶしにはちょうどいいと思ってよ」

「ふぇー……」


 ニッケルが四冊目のファイルを手に取って開こうとすると、ファイルの中から何かが飛び出してきた。だ。


「おお、びっくりした」


 蛾はひらりひらりと飛んで、食堂を出ていく。ニッケルは少し驚いたが、すぐに落ち着いてファイルに書類を綴じ始める。


「あれ? 虫もう平気なの?」

「平気ってワケじゃねえけど、こないだのあのクソデカいのに比べたらなぁ……多少は慣れたのかもな」




「ふぇー……」


 リンコは書類を綴じるニッケルの腕をジーっと見る。


(……めっちゃ鳥肌立ってんじゃん。やっぱダメじゃん)




 リンコはキャンディーを舐めながら、しばらくニッケルの作業を眺めていた。




(バギー・バギー・ディザスター おわり)

(魔人血戦に続く)

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