◇ ◇ ◇
夕方。赤い夕陽が荒野に差し込む。
レトリバーの三人の傭兵、そしてクロキシティ治安部隊のビッグスーツ、総勢二十五機が、標的が潜伏している拠点を離れた場所から見据える。
「あまり大きな拠点じゃねえな……」
ニッケルは拡大表示された拠点の映像を見る。所々
「気を付けるとしたら地雷ぐらいか……一人で暗殺を専門的に請け負っているタイプかもな」
「どうしよっか? この数なら拠点ごとすぐ潰せちゃいそうだけど……」
ニッケルとリンコが話す横で、カリオは周囲の様子を探っていた。見回す限り、自分を含めた二十五機以外には何もいない。
不意に、
カリオは無意識のうちに、左腰のビームソードに左手をかける。
「? どうしたカリオ」
「どしたの?」
カリオはレーダーを確認する。特に違和感を感じるものは映っていない。
「何かいるよう――」
カリオがそう言いかけるとまた陽炎が見えた。
その次の瞬間。
「ぐあああ!!」
治安部隊員の一人が悲鳴をあげ、そのビッグスーツが胴体に風穴を開けて、倒れる! カリオ達は一斉に武器を抜いて周囲を警戒する。
「!? 光学迷彩か!」
ザシュッ
ニッケルは
バシュゥ!
緑色のビームは荒野の土を
バシュッバシュッバシュッバシュッ!
続けざまにリンコがビームピストルを陽炎を狙って連射する。僅かにビームが陽炎に
ニッケルは突然、バックステップで後ろに下がる。直後、その地面に何かが衝突し、激しく地面が
バシュゥ!
腰を落として着地すると、ニッケルは再びビームライフルを撃つ。ビームが陽炎に
ノイズは止むことなく、やがて陽炎だったモノが徐々に姿を現す。
「大所帯でようこそわが家へ。死ね」
ドン!
地面を
フロガーは
(クソッ、浅い……!)
ドドドドン!
フロガーのトードンの左肩部からロケット弾が連射される! カリオは素早く横に転がって回避、ニッケル・リンコ・周囲の治安部隊は銃口を一斉にフロガーへ向ける。
バシュシュシュシュシュッ!
フロガーを狙ってビームが斉射される。フロガーは高く飛び上がってこれを避けると、後方へ宙返りしながら右肩部の高出力ビームキャノンを展開、下降しながら発射する。
ズガァーン! ズガァーン!
高威力のビーム二発が、治安部隊のビッグスーツに向けて放たれる! 一発は回避されるが――。
「しまっ……」
もう一発が治安部隊のビッグスーツの右半身をゴッソリと
ニッケルは手動操作型浮遊砲台「チョーク」を展開、フロガーの方へ移動させる。一方、フロガーは着地すると、左手に持つサブマシンガンと高出力ビームキャノンを連射する。
ズガガガガガ!!
ニッケルのチョークとビームライフル、リンコのビームピストル、治安部隊の射撃、フロガーの射撃が入り乱れる! 各々が撃ちながら回避行動を取る。
一瞬、しかし激しい射撃戦。ニッケルの左肩を銃弾が掠る。リンコの右足をビームの熱が襲い、治安部隊も数人被弾して
(動きいいなおい!)
射撃が止んだ隙を狙い、カリオはビームソードを振りかぶって、再びフロガーへ接近する。
ゴォッ!
斜め前方から急接近するカリオを見据え、フロガーは右腕のクローを展開し、カリオを掴みかからんと振り下ろす!
(……ヤバい!)
フロガーのクローが想像以上に速い。カリオは無理やり体を倒す。クローをなんとか回避するが、足が地面を離れ、カリオは激しく転倒して地面を転がる。
(クローが開いた真ん中に隠し剣みたいなの見えたぞ、掴まれたらグサッて刺されて終わるなアレ……!)
カリオは
(今
(手強いが数の上では有利だ。時間が経つほどその差は効いてくるはず)
リンコとニッケルは再び引き金に指をかける。
(一億の賞金首、流石にキツイな)
カリオは剣をグッと握り、構え直す。
(けど……勝てねえ相手じゃねえ!)
「十二時の方向三キロ先にこちらへ接近中の機影あり、地上艦と予測! 七十秒でそっちへ到着しそうだ!」
突然、後方で待機しているレトリバーの通信士から一報が入る。三人の傭兵は思わず動きを止める。
タタタタタ! ズガァーン!
フロガーはそれを見逃さずにビームキャノンとサブマシンガンを撃つ。慌ててニッケルとリンコは横へ跳んで回避する。
「何だって……?」
カリオはフロガーに注意を向けながら、一旦後ろに跳び、距離を置く。
「迷子の船とかじゃなくて?」
「ブリッジ、もう少し情報――」
ニッケルが言い終えるより先に、通信士が追加で情報を伝え始める。
「地上艦の色は黒、甲板に四機のビッグスーツを確認。機体の特徴から恐らく――」
三人はレトリバーから見て十二時の方角を見やる。
「――ツツミシティで交戦した奴らだ!」
(魔人血戦③へ続く)