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魔人血戦④

「おっほぉ、すげえなタヨコ! コイツはしびれるぜ!」


 スキッパーキの甲板の上から、破壊された機体達を眺めてユデンは手を叩く。


めて褒めて~。フロガーはねらわないようにしといたから。そんなにいい獲物なの?」


 タヨコは大鎌をかつぎなおしてユデンを見る。


「そうそう! あいつのビッグスーツ、光学迷彩とか特製クローとか――おっとダメだ、来やがったな」


 タヨコはユデンの視線の先に目を向ける。二機のビッグスーツ――カリオとニッケルが、左右から回り込むようにして、スキッパーキに低空飛行で接近してくる。


「ふーむ、二人で俺達四人を倒せるとは思っちゃいねえだろう。フロガーを大人数で先に叩きのめす算段みてえだな。そうはさせるか、獲物えものこわさせはしねえぞ!」

「まあ普通に向かってきてる奴から殺せばいいんでしょ? ユデンとあーしは軽装の方行こうよ」

「なら俺とフリクは盾持ちの方だな」

「決まりだな、先に上から行くぜ」


 フリクはユト背部の翼を展開し、空へ飛び上がった。他の三人も続いて、甲板から飛び降り、それぞれのターゲットに接近し始める。




 ◇ ◇ ◇





 ニッケルは自分の方向へ向かってくる二機を確認する。一機は空から、もう一機は地上をホバー走行で前進してくる。


(この前の緑と青の奴ら……青い方は武装が変わってるか?)


 ニッケルはチョークを空中に展開し、その場で停止して待ち構える。緑の方は、武器の外観こそ変わっているものの、おそらく前回と同じチェーンソーとガトリングガン。青い方は左手にコンテナと、右手に何やら羽団扇はうちわのような装備を携えている。


「切りきざんだらぁ!」


 シュンシュンシュンシュンシュン!


 フリクが羽団扇型武器のトリガーを引くと、薄い羽状の部品が空中に飛び出し、ニッケルに向かっていく!


 バシュゥ!


 ニッケルは大きく横へ跳びながら、向かってくる羽に対してビームライフルで迎撃を試みる。


 シュンシュン!


 ――が、羽は突然軌道を変えてビームを回避!


「んな!? チョークと一緒かよ!」

「慣れりゃあチョロいもんだぜ、こんなもんの操作なんか!」


 シュシュシュシュシュン!


 フリクの操作に応じて向かってくる羽を、ニッケルは体を反らし、紙一重でなんとかかわしきる。チョークと似たタイプの浮遊短剣のようだ。羽は一旦空中へ離脱すると、大回りしながらもう一度ニッケルの方へ向かってくる。


 ガガガガガガ!


 チネツもガトリングガンをニッケルに向かって発射する! ニッケルはもう一度地面を強く蹴り、空中へ飛び上がってこれを回避する。


(クソッ、逃げてばっかじゃジリ貧だ。こっちからも手を出さねえと!)


 空中でニッケルは地上のチネツに向けてビームライフルを撃つ。同時に二基にチョークが蛇行だこうしながらフリクの方へ飛んでいく。


「!!」


 チネツは体をかたむけ、横にスライドしてビームを回避。フリクは迫ってくるチョークから離れようと飛行する軌道を変える。


 バシュゥ! バシュゥ!

 ガガガ! ガガガ!


 ニッケルは後方に下降しながらビームライフルをチネツに向けて連射する。対するチネツもガトリングガンを断続的に撃つ。フリクの羽もニッケルを追いかける。


 バシュゥ! バシュゥ!


 二基のチョークが少しタイミングをずらして、二方向からフリクにビームを放つ。フリクは頭を下にして、十メートルほど急降下してこれを躱す。


 シュシュシュン!


 ほぼ同じタイミングでフリクの羽がニッケルに襲い掛かる。ニッケルは側宙して羽を避け、地面に着地する。




(くっ、こいつはちょっと……!)

(頭が忙しいな……!)


 複数の射撃が飛ぶ中での浮遊砲台・短剣の操作、特にニッケルは二機を相手にしながらの操作となり、かなりの集中を強いられている。だがニッケルもフリクも、チョーク・羽の展開をやめるつもりはない。


(まだ手数は増やせんだよ!)


 フリクが乗るユトの左手のコンテナが開く。前回のような投下型爆弾ではない。


 バシュシュシュシュシュッ!


 コンテナから白煙を出して飛び出すのは超小型ミサイル! ニッケルはチョークを一旦退かせて、シールドを構える。


 ドドドドドン!


 ミサイルが着弾し、爆発で周囲が煙に包まれる。


「へへ、やったか?」

「……まだだな」


 チネツがチェーンソーを構え、煙の中へと加速する。ビッグスーツの接近による風圧で煙が逃げていくと、中からシールドを構えたニッケルの姿がうっすらと見えてきた。シールドに多少のへこみ、機体には小さな傷が出来ているものの、大したダメージはなさそうだ。大体回避されたか。




 ブォオオオン!


 チネツはチェーンソーを回転させて横にごうとする。その時、ニッケルのライフルを持っていたはずの右手から、何かが放り投げられた。


「――!? フラッシュグレネード!?」


 カッ!


 晴れ切っていない煙の中から白い閃光が放たれる! チネツ、そして上空にいるフリクも閃光を食らって目を手でおおう。ニッケルは地面に落としていたライフルをすぐに拾い、連射する!


 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 同時にチネツ・フリクに対してチョークが一機ずつ接近し、相手に対する位置を変えながら射撃を開始する!


 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


「く……」

「ああくそが!」


 目が十分に機能しない状態で、チネツとフリクはジグザグに動き回避行動を取りながら、ニッケルとの距離を開ける。


 二人のビッグスーツの数か所にビームが接触する。赤熱する傷が生じ、コックピットにいる彼ら自身の体も数か所から出血する。


「……参ったね、今ので一人は落ちて欲しかったんだが……」


 ニッケルのほおを汗が一筋つたっていった。




(魔人血戦⑤へ続く)

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