「おっほぉ、すげえなタヨコ! コイツは
スキッパーキの甲板の上から、破壊された機体達を眺めてユデンは手を叩く。
「
タヨコは大鎌を
「そうそう! あいつのビッグスーツ、光学迷彩とか特製クローとか――おっとダメだ、来やがったな」
タヨコはユデンの視線の先に目を向ける。二機のビッグスーツ――カリオとニッケルが、左右から回り込むようにして、スキッパーキに低空飛行で接近してくる。
「ふーむ、二人で俺達四人を倒せるとは思っちゃいねえだろう。フロガーを大人数で先に叩きのめす算段みてえだな。そうはさせるか、
「まあ普通に向かってきてる奴から殺せばいいんでしょ? ユデンとあーしは軽装の方行こうよ」
「なら俺とフリクは盾持ちの方だな」
「決まりだな、先に上から行くぜ」
フリクはユト背部の翼を展開し、空へ飛び上がった。他の三人も続いて、甲板から飛び降り、それぞれのターゲットに接近し始める。
◇ ◇ ◇
ニッケルは自分の方向へ向かってくる二機を確認する。一機は空から、もう一機は地上をホバー走行で前進してくる。
(この前の緑と青の奴ら……青い方は武装が変わってるか?)
ニッケルはチョークを空中に展開し、その場で停止して待ち構える。緑の方は、武器の外観こそ変わっているものの、おそらく前回と同じチェーンソーとガトリングガン。青い方は左手にコンテナと、右手に何やら
「切り
シュンシュンシュンシュンシュン!
フリクが羽団扇型武器のトリガーを引くと、薄い羽状の部品が空中に飛び出し、ニッケルに向かっていく!
バシュゥ!
ニッケルは大きく横へ跳びながら、向かってくる羽に対してビームライフルで迎撃を試みる。
シュンシュン!
――が、羽は突然軌道を変えてビームを回避!
「んな!? チョークと一緒かよ!」
「慣れりゃあチョロいもんだぜ、こんなもんの操作なんか!」
シュシュシュシュシュン!
フリクの操作に応じて向かってくる羽を、ニッケルは体を反らし、紙一重でなんとか
ガガガガガガ!
チネツもガトリングガンをニッケルに向かって発射する! ニッケルはもう一度地面を強く蹴り、空中へ飛び上がってこれを回避する。
(クソッ、逃げてばっかじゃジリ貧だ。こっちからも手を出さねえと!)
空中でニッケルは地上のチネツに向けてビームライフルを撃つ。同時に二基にチョークが
「!!」
チネツは体を
バシュゥ! バシュゥ!
ガガガ! ガガガ!
ニッケルは後方に下降しながらビームライフルをチネツに向けて連射する。対するチネツもガトリングガンを断続的に撃つ。フリクの羽もニッケルを追いかける。
バシュゥ! バシュゥ!
二基のチョークが少しタイミングをずらして、二方向からフリクにビームを放つ。フリクは頭を下にして、十メートルほど急降下してこれを躱す。
シュシュシュン!
ほぼ同じタイミングでフリクの羽がニッケルに襲い掛かる。ニッケルは側宙して羽を避け、地面に着地する。
(くっ、こいつはちょっと……!)
(頭が忙しいな……!)
複数の射撃が飛ぶ中での浮遊砲台・短剣の操作、特にニッケルは二機を相手にしながらの操作となり、かなりの集中を強いられている。だがニッケルもフリクも、チョーク・羽の展開をやめるつもりはない。
(まだ手数は増やせんだよ!)
フリクが乗るユトの左手のコンテナが開く。前回のような投下型爆弾ではない。
バシュシュシュシュシュッ!
コンテナから白煙を出して飛び出すのは超小型ミサイル! ニッケルはチョークを一旦退かせて、シールドを構える。
ドドドドドン!
ミサイルが着弾し、爆発で周囲が煙に包まれる。
「へへ、やったか?」
「……まだだな」
チネツがチェーンソーを構え、煙の中へと加速する。ビッグスーツの接近による風圧で煙が逃げていくと、中からシールドを構えたニッケルの姿が
ブォオオオン!
チネツはチェーンソーを回転させて横に
「――!? フラッシュグレネード!?」
カッ!
晴れ切っていない煙の中から白い閃光が放たれる! チネツ、そして上空にいるフリクも閃光を食らって目を手で
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
同時にチネツ・フリクに対してチョークが一機ずつ接近し、相手に対する位置を変えながら射撃を開始する!
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
「く……」
「ああくそが!」
目が十分に機能しない状態で、チネツとフリクはジグザグに動き回避行動を取りながら、ニッケルとの距離を開ける。
二人のビッグスーツの数か所にビームが接触する。赤熱する傷が生じ、コックピットにいる彼ら自身の体も数か所から出血する。
「……参ったね、今ので一人は落ちて欲しかったんだが……」
ニッケルの
(魔人血戦⑤へ続く)