「さて、まずは」
ニヌギルの両隣りに浮かぶ拳が独特の駆動音を上げ、再び高速で前方に飛び出す! ショウとナスビ、レイラの三人は体勢を
(マズい! 間に合わない……!)
レイラは拳の向かう先を見る。戦闘に気づいてすらいないであろう、
ゴギャンッ!
圧倒的な質量と速度の拳の衝突で、スカベンジャーの機体が吹き飛び、破壊される!
ゴギャンッ! ゴギャンッ! ゴギャンッ! ゴギャンッ!
拳は飛行して一機、時には二機
「このっ!」
ショウはヒート
「ぐあっ」
「動きが乱れとるのお、集中できんか。アレらのことを考えるのは無駄じゃ、見ろ」
ゴギャンッ!
ニヌギルと距離をとりながら、ショウはスカベンジャー達のいた方向を見る。
――既にそこにまともな形をした機械はなく、
ギュワッ!
スカベンジャー達を
(ショウさんが斬りかかって反撃していた時も、あの拳は止まることなく動いていた……
レイラは思考しながら空中を高速で移動する。サタデと手型兵器、両方を視界に入れるように立ち回らなければたちまちスクラップにされるだろう。ショウとナスビもそこに注意しながら位置をすばやく変える。
ゴオッ!
拳の速度はかなり速く、まるで
ゴオッ!
もう片方の拳がナスビを狙う。ナスビは身体を捻って避けようとする。が、間に合わず、拳が左肩を
「ぐあっ!」
掠っただけ。それでも人間に大型トラックがぶつかるようなものだった。ナスビのヤマガラは回転しながら大きく吹き飛び、地面に落下した。
「ナスビ!」
ショウは一瞬、ナスビのカバーに入ろうと考えた。しかし、目に入ってきたモノを見てすぐに後方へ全速で飛行する。
拳だった左右の手が大きく指を広げた状態で、ショウを
バァアン!
左右の手が離れる。ショウはそこに
バババババ!
ニヌギルは上空からビームマシンガンでレイラを狙って撃つ。レイラはジグザグに動いて避けながら、攻撃の機会をうかがう。
(手の形をした兵器、存外速く、よく動く。機体側の動きにも注意しなくてはならないし、それに――)
レイラの上から影が落ちる。左の手が大きく指を広げ、彼女の機体を叩き潰そうと急降下してくる!
レイラは器用に指の間に機体を滑り込ませる。同時に一本の指を剣で斬りつけていく。
(――見た目通りの
地上に落下したナスビは急いで機体を起こす。
「
ナスビは左腕を動かそうとするが、すぐに痛みで顔をしかめた。
(やっぱ痛っ! ……でも印を結ぶのは出来るな、どうしよ……)
右の手がショウを
ボボォン!
赤い炎が右の手を包み込む――だが右の手はすぐにそこから無傷で飛び出してきた。
(アカン、炎は通らへんな。水か雷も試すか悩むが、アレだけの兵器に電気系統のトラブルは望み薄やろな……なら!)
ショウとナスビはほぼ同時に両手で印を結ぶ。
(狙うなら操作側!)
(機体の方や!)
ボボボゥン!
ニヌギルは目を丸く大きくして少し驚く。周囲一帯に十何体ものオールリとヤマガラが出現する! 分身の術だ!
「これは
ギュワッ! ギュワッ!
左右の手は分身数体を狙って飛び回る。分身がそれを回避すると、両の手はニヌギルの隣へ戻り、滞空する。
(ウチらの機体が
(これ以上好き勝手はさせん、押し込むで)
(ファスト・フィスト・ビースト⑥へ続く)