◇ ◇ ◇
「なんじゃ、じゃあ酒の
空の見えない庭でニヌギルは
「ごめーんおじちゃん」
「まあいいわい、おまえの間抜けなところは想定の範囲内じゃ」
「頼んでおいてひどくない!?」
「背中を斬られたそうじゃないか」
「……いや、イルタが望んでるような奴らではなかったぞい。そんな奴らじゃったらワシは一分持たずに死んどる」
「……そうか」
ナハブはイルタの顔を見た。無表情で変化はないが、少し落胆していることは伝わって来る。彼は視線をニヌギルに戻した。
「無人修理システムがここにあってよかったねえ。俺らを封じ込めた奴らもだいぶドジというか……おじちゃん、サタデが直ったらまた出掛けるの?」
「いや、ワシは少しのんびりするかのう。イルタと違って、無差別に
「なるほど、そこを確かめるために出張ってたんだ」
ニヌギルは立ち上がって、自分より頭一つ分背の高いナハブの胸を小突く。
「次に出る時はおまえがいい酒と女の
「ああなるほど……いやいや雑! 雑じゃない!? 一人じゃ無理じゃん! ってか自分で調べなよ!」
「細かいことはおいおい考えるわい。さてワシは飯を食うとする」
「ええ……」
ニヌギルは背伸びをしながらその場を歩いて去っていく。
「……お? これは……イルタちゃんと二人きり! イルタちゃんどっか遊びに行かない?」
「……」
「おーい?」
デートに誘うナハブを無視して、イルタは上を向いて、庭を舞う
◇ ◇ ◇
地上艦「マルチーズ」。
空が
「来ないとは言っとったけど、取り敢えず様子見やな。ワイとナスビはもう何日か同じ場所で張り込むわ。アオキシティで
「……気づいたら結局
「そういうもんや忍者は。慣れろ」
レイラは立ったままティーカップで紅茶を一口飲む。
「補給の件は街の方へお伝えしておきますので遠慮なさらないで。それと申し訳ありません、私は別件の対応で明日の一日は同行が難しいのですが……」
「かまへんかまへん、こっちの調査に時間
「フフッ、こちらも改めてスズカ連合へのご協力、感謝致しますわ……それで、あの者が言っていた〝イニスアの囚人〟ですけど」
ショウはその言葉を聞くと頭上を見上げて考える。
「〝イニスア〟ってアレやろ? 古代文明。三、四千年かそれくらい前の。何の関係があるんや」
「勉強不足!」
そう叫ぶなりナスビがショウの
「痛いわアホか! なんぼ暴力振るうねんおまえ!」
「〝イニスアの囚人〟くらい知っとけ! 大昔のイスニア文明で暴れとったとびっきりの七人のワルや! いやまあ言うて
「眉唾を知らんくて蹴られたんワイ!?」
「〝イニスアの囚人〟……確かに
「助かるわ。よしやることは決まったな」
ナスビが怪我を負った左肩を気にする様子をレイラは見ていた。
「……スズカ連合に応援の人員を頼んでみます。無理はなさらぬよう」
「
「今日はもう私どもの邸宅でゆっくり休まれるとよいですわ。来客用の部屋も空いてますし」
ショウとナスビは首と手を横に激しく振った。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ!」
「あら?」
「ワイらは自分とこの艦で寝る! そこまで世話にならんでも大丈夫やし!」
「そうですの……?」
レイラはぽかんと不思議そうな顔をしながら、またティーカップに口をつける。
(アカン、あの豪邸は……ウチらには不相応すぎる! 絶対腹下すわ!)
(あんな家のベッドで寝た日にゃ、ワイは二度と人間に戻れなくなる気がする……!)
――その後、一通り今後の流れを再度確認して、その場は解散した。レイラは空になったティーカップを色んな方向に
(
「お
「
レイラは真剣な眼差しで言った。
「一度モッツァ
「お嬢様!?」
(ファスト・フィスト・ビースト おわり)
(名犬勇者エクスギャリワン へ続く)