◇ ◇ ◇
さて、先ほど
ヘッヘッヘッヘッヘッヘッ……
舌を出しながら歩いていた白いバトルポメラニアン――ボンは足を止めると四人の方へ振り返った。
「ちょっとそこで待っててくれ。……
「カブーム研究所」と
「ボン! 散歩は終わったのか……生きのいい人間!? 新発明品の被検者か!?」
建物の奥から、ボサボサの
「違う! ゴロゴロ団と戦ってくれる生きのいい戦士だ!」
「なんと」
男はゴーグルを上げると目を丸くして四人に近づく。目力が強い。
「私はカブーム博士。こいつはボン。えーと、なんだったかな……そうだ! レトリバーって船の傭兵さん達か! 案内する、こっちへ来てくれ」
「待っ、その、ごめんなさい待って、ちょっと」
「ミス・ズドン、四人分のお茶を用意してくれ!」
リンコの制止を聞かずに、煤だらけのカブーム博士は作業場の脇にあるドアへと速足で進んでいく。
「……ここまで踏み込んじまったらヤケだな」
言葉の通り、四人はヤケクソ気味にカブーム博士についていく。ドアの中へ進むと、ずらりとコミックが並んだ背の高い
「
「あの……じゃあもう少しあなた方の事を聞いてもいいだろうか」
ソワソワするカブーム博士にカソックはそうお願いしてみる。横で三人の傭兵がブンブンと頭を縦に振って
「まずその……博士というのは……ここで何か実験などをしている感じ……なのか?」
「
カソックからの質問に答えるカブーム博士に、ニッケルが続けて
「じゃあさっきの爆発は」
「ああ、アレを見てたのか。
……四人は額に手を当てて
「あー、そうだった……この犬」
「犬じゃない。いや犬だが、ボンだ」
「ああ、すまんボン。その……ボンはなんか普通に人の言葉を話してるんだが」
質問するニッケルと横に座るカリオとリンコ、カソックの視線がカブーム博士に集中する。
「んむ、ボンは古代イニスア文明の
そう話す博士に続いて、ボンも話に加わる。
「俺はその時代の研究施設で誕生した人工ワンコだ。コールドスリープから目覚めた時、この世界に危機が迫っていることを察したのだ。そこで
「勇者……ってか隣って言った今?」
「んむ、研究所の隣に穴がいっぱい開いてる空き地があっただろう。あれがボンの眠っていた遺跡だ」
カブーム博士は
「オチャトオカシヲオモチシマシタ」
テーブルにメイド服を着た白いボディのアンドロイドが、紅茶とクッキーを運んできた。どうやら彼女がミス・ズドンのようだ。
レトリバーの四人はお茶とお菓子にはすぐに手を付けず、顔を寄せ合い小さな声で相談し始める。
(アウトだよな。カリオ、リンコ、オヤジ)
(アウトだろ)
(
(流石に断るか? どうやって断ろうか……)
「大変だカブーム博士! ボン!」
研究所の外から博士とボンの名前を叫ぶ声が聞こえてきた。聞くや否やボンはそちらへ全力で走っていく。カブーム博士とレトリバーの四人も慌ててその後に続く。
「どうしたボブ、そんなに慌てて」
ボンは声の主であるボブ、近所に住んでいる青年に尋ねた。
「トサタウンへ向かっていたウチの車列が悪魔ロボを見かけたらしい! 慌てて逃げたから怪我人はいないみたいだけど……こっちに向かってくるつもりかも!」
それを聞いたボンはワン! と
「場所はわかるかボブ!」
「車列にいた奴らが座標を記録してるよ! 画像データもある!」
ボンは振り返り、カブーム博士と目を合わせる。
「博士、エクスギャリワンは出せるか?」
「いつでも出せる! ボブ! ワシにそのデータを送れるか、エクスギャリワンと共有する!」
ボブは頷くと携帯通信機を取り出し、仲間に連絡する。
「悪魔ロボ? エクスギャリワン?」
カリオは疑問形でそれらの単語を口にする。
「道すがら話す! ついてきてくれ! 船着き場までの地下シャトルポッドに乗る!」
「どうしよう。私、展開に頭が追い付かない」
ボンは研究所内の地下への入り口に向かって駆け出した。
◇ ◇ ◇
「ベンピ、問題ないか」
ビッグスーツのコックピットでハライータ・フック二世の部下、ゲイリーは仲間のベンピに無線で話しかける。
「問題ない。これであの
それを聞いたゲイリーの口角が少しつり上がる。
「そうだな。あの町の次は大陸全土だ! ハライータ様の帝国を築くのだ!」
(名犬勇者エクスギャリワン④へ続く)