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名犬勇者エクスギャリワン④




 ◇ ◇ ◇




「地下にこんなもん作ってるとは」


 研究所奥の階段を降りると、そこは小規模しょうきぼなターミナルとなっていた。トンネルの奥まで続くレールの上のたまご型のシャトルポッドに、一同は乗り込む。シャトルポッドは徐々に加速しながら、レールの上を走り出した。


 カブーム博士はタブレット端末を小型立体映像プロジェクターに繋ぎ、映像を出して説明を始めた。色々な形状のビッグスーツらしきロボットが映し出される。


「悪魔ロボはハライータ・フック二世が率いるゴロゴロ団のビッグスーツだ」

「普通のビッグスーツと違うのか?」

「いや、ワンオフではあるものの基本的に同じだ」

「え」


 じゃあもうビッグスーツって呼べばいいのでは? と四人が心の中でツッコミを入れる中、博士は説明を続ける。


「共和国解体戦争の後、アキタタウンから少し離れた荒野に突如とつじょ巨大な要塞ようさいが出現した。ハライータが近隣の盗賊やならず者をまとめ上げてゴロゴロ団を結成したのだ。奴らは世界征服の野望を達成する足掛かりとして、アキタタウンを狙っている」


 プロジェクターは角の生えた悪魔のような珍妙ちんみょうな形状をした巨大な建造物を映し出す。


「なんか随分妙ちくりんな話だが、これだけ大きい要塞作れるだけのリソースは持ってるってことか……」

「……色々ツッコみたいところだけどよ、とりあえず規模の大きい盗賊団と考えておけば大丈夫だよな」


 ニッケルとカリオは眉間みけんにしわを寄せながら立体映像を見つめる。




 次にプロジェクターに映し出されたのは、おおかみのようなフォルムのロボットの立体映像だ。


「今まではボンがこの犬型ビッグスーツ、『エクスギャリワン』に乗り、襲い来る悪魔ロボと戦っていたのだ」


 カブーム博士がそう説明すると、ボンはほこらしげにワン! と吠えた。


「犬型のビッグスーツ!? そんなもんあるのか」

「作るのにかなり苦労したぞ。だがその甲斐かいはあった。減る一方だった町の防衛戦力がボンのおかげで再び充実してきている」


 レトリバーの四人はお互いの顔を見合わせる。犬のビッグスーツ乗り……警察犬けいさつけんとか災害救助犬さいがいきゅうじょけんとかもいるし、まあいてもおかしくないのかもしれない。どちらかというと喋れることの方がおかしい。四人は思考を完了し、カブーム博士に向き直る。


「つまり今回の依頼って、ボンと一緒にアキタタウンを攻撃してくるビッグスーツを撃破したらいいのか。あ、それとも敵のアジトも破壊する……のか?」

「その通りじゃ! 近いうちに奴らがアキタタウンを再襲撃さいしゅうげきすることは読んでおった。流石に今来るのは想定外じゃったが……つい最近ボンと戦闘したばかりじゃから向こうのリソースに余裕はないじゃろう。しからばまずは町の防衛。襲い来る敵機を撃破後、ゴロゴロ団に態勢を立て直す間を与えずにアジトである要塞をたたく! 今までこの町を守ってきたボンに君たちが加われば不可能ではない!」


 シャトルポッドは徐々に速度を落としていき、地上港側のターミナルで停止する。

 レトリバーの面々は階段を上がり地上へ、ボンとカブーム博士はエクスギャリワンの待つ地下格納庫へ向かう!




 ◇ ◇ ◇




「ゲイリー様! もう仕掛けますか!」


 アキタタウンを遠目ににらむビッグスーツの一団。どれもこれも錆びた装甲に無駄にトゲトゲした装飾が施された珍妙な機体だ。その中央、同じく刺々とげとげしいデザインの地上艦の甲板の上。何故か頭が二つ付いているピンク色のビッグスーツのコックピット。そのシートにゲイリーは腕を組んで座っていた。


「んむ、エクスギャリワンは不在のようだな……行くぞ!」


 部下の言葉にそう答えると、ゲイリーは前方を指さして号令をかける。地上艦に随伴ずいはんしていた複数のビッグスーツが、町を目指し前進を開始する。




 ヒュルルルル……


 風切り音。ゲイリーはその音に反応して空を見上げる。白煙を上げながら飛ぶロケット弾が見えた。


「なっ!?」


 ロケット弾は真っ直ぐに、ゲイリー率いるゴロゴロ団へ向かって落下してくる!


 ダダダダダ!


 ゲイリーの乗る地上艦が対空砲を連射! ロケットに何発か命中、撃墜げきついに成功した。


「むむう……我々が来ていることに気がついていたか」

「貴様らのくっさい臭いなどすぐに気づいたわ!」




 上を見上げるゲイリーの視界に再び何かが飛び込んでくる。白銀に輝くソレはクルクルと縦に回転しながら、ゲイリーを飛び越えて地上艦の後ろに着地する。


「エクスギャリワン・エントリィイイイ!」


 シャウトとともに姿を現したのは、四つの足で地面に立つ狼型のビッグスーツ。そのビッグスーツは天に向かって咆哮ほうこうし、緑色のカメラアイでゲイリー達を見据みすえる。


「来おったかエクスギャリワン!」


 ゲイリーが忌々《いまいま》しげにその名を口にすると、狼型のビッグスーツ――エクスギャリワンは再び咆哮した。


「先にお別れを言っておくぞゴロゴロ団! 今日の正義はいつもより大盛おおもりだからな」


 コックピットでヘッドギアを付けたボンは、フワフワの毛に包まれた体をブルブルとふるわせ、姿勢しせいを低くして構えた。




(名犬勇者エクスギャリワン⑤へ続く)



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