「調子に乗るなポメラニアン
ゲイリーの号令と共に、町に
ヒュルルルル……
そこへ再びの風切り音。複数のロケット弾がビッグスーツの群れに降り注ぐ!
「ぬわああ!」
ボボボボンボン!
三機のゴロゴロ団ビッグスーツにロケット弾が直撃し、それらは大破する!
「アキタタウンの
「勇者はズルなどしない! これは友情アクションだ!」
ダダダダダ!
ゲイリーの部下達がボンを狙って銃火器を
「ギャリワン・サンダアアア!」
ギャーオン!
ボンの
「クソッ! 相変わらずイカれた装備だ!」
「フン、使えん部下達だ。あっさり死におって」
「貴様の人材活用スキルの低さのせいで、奴らはギャリワン・サンダーの
「ベラベラベラベラと本当に口やかましい
ゲイリーは機体に持たせているライフル状の兵器の銃口をボンに向けて、トリガーを引く。
ボォオオオオオ!!
その瞬間、
「なんて
歓声を上げる部下達。
「そんなことはねえんだが!!」
その言葉とともに、ゲイリーの目の前で荒れ狂う炎の嵐の中から、ボンが飛び出してくる。ボンは勢いそのままゲイリーを引き裂かんと、
「ギャリワン・スラッシュ!」
「クッ!」
ゲイリーは横に転がって、間一髪爪を
「火炎放射なんぞすぐに貴様の
装甲の所々が、熱でチリチリと音を立てるエクスギャリワンを前にして、ゲイリーはたじろぐ。
(攻撃を見てから行動を選択するまでの判断が早い! 相変わらず駄犬のくせにこなれてやがる……!)
「ふん、貴様あれか。いつものベンピとかいう
「ククク……気づいておらぬようだな。ベンピならここではなく、町の別の方角から
「何!?」
「俺は
「なるほど、アレはベンピの隊だったのか! 何なんだろうなアイツらと思ってモヤモヤしてたんだ!」
ゲイリーの顔から笑みが消える。
「……えっ、もしかして気づいてた?」
「うん」
◇ ◇ ◇
「聞いていないぞ!」
ズバァン!
眼前で部下の機体が真っ二つにされるのを見ながら、ベンピは叫ぶ。ベンピの部下を斬ったカリオは体の力を抜いて、ベンピの黄緑色のビッグスーツと向き合う。
「
「そんなことない! あの駄犬に味方がいる方がおかしい!」
ため息をつくカリオの横に上空からニッケルが着地する。その後ろにはニッケルが撃ち抜いたゴロゴロ団の機体が転がっていた。
「てか俺らが居なくてもそこそこのレーダーが配備されてたら察知されるぞ、お前らがいた場所」
「そ、そ、それでもアイツ一匹だったら手が回らなくなるはずだったのに!」
ニッケルの
「リンコは先にボンの援護に向かわせた」
「わかった。俺らもさっさと片付けよう」
武器を構えるニッケルとカリオをベンピは血走った目で
「ぶっ殺したらああ!!」
ベンピの機体の両手には、
ズババババ!!
「!?」
鉄球が避けられた直後、それに付いていた棘が外れて飛び出し、ミサイルのようにカリオとニッケルへ向かって飛んでいく! 予想だにしないギミックにカリオとニッケルは思わず防御の構えを取る。
ザシュッザシュッザシュッ!
「クソッ」
ニッケルは飛んできた棘を、コイカルに装備された左腕のシールドで全て受け止めた。シールドには無数の棘が刺さっており、その危険性を物語っている。
「ってこりゃ……おい、カリオ! 大丈夫……そうじゃねえなぁ」
「あー痛え! ふざけやがって」
ニッケルはカリオの乗るクロジを見る。盾を持たないその機体の左腕には三本の棘が刺さっていた。コックピットのカリオの左腕からは、少なくない量の血が流れ出る。
「クククッ。意表を突いた攻撃ゆえ、思わず腕を前に出してしまったみたいだな! 奇襲! アンブッシュ! それこそが老若男女種族問わず最大の武器とされた世界共通の必殺――」
ズバァン!
上機嫌で笑うベンピの首が、胴から離れて膝の上に転がり落ちる。カリオのビームソードの
「ア……?」
「ヤッパ抜いてる相手の前では喋りすぎない方がいい」
頭部を失ったベンピのビッグスーツは仰向けに倒れ、動かなくなった。
「部下も残ってはいないみてえだな」
「左腕は大丈夫か?」
「クソ痛えが戦闘は
カリオとニッケルはレーダーで位置を確認し、リンコに通信を入れる。
(にしても、思ったより敵が大したことねえな。かえって後で一波乱ありそうな気がしてイヤなんだが……)
◇ ◇ ◇
ガァン!
リンコの狙撃がゲイリーの部下の機体を射抜く。ボンとリンコの攻撃によって部下連中は全滅、残りは親玉のゲイリーのみだ。
「もしかして、私援護に来なくてもよかったっぽい? ワンちゃん」
「ワンちゃんじゃないボンだ」
「あはは、ゴメンゴメン」
ゲイリーは絶体絶命のピンチに目を血走らせ、歯ぎしりする。
「クソッ! エクスギャリワンに味方のビッグスーツだと……」
「言ったはずだ。今日の正義は大盛だと」
ボンとゲイリーから離れた位置の大きな岩の上で、リンコはビームスナイパーライフルのスコープを覗き、銃口をゲイリーに向ける。
「さて、降参する? 悪党さん。悪いけどアンタの顔面にもう照準は合わせ――」
「ギャリワン・トルネェエドォオオオ!!」
ギュォオーン!
リンコがゲイリーに
「ちょ――」
ゲイリーは断末魔を上げる間もなく絶命。肉体は跡形もなく消滅し、穴のあいた機体は様々な箇所から火花を上げて崩れ落ちた。何故頭部が二つあったのか結局わからないまま。
「えー……
「この勇者ボン、涙と甘さは
「やっぱ私いらなかったっぽい?」
(名犬勇者エクスギャリワン⑥へ続く)