モンスタンク「サダイタン」は
「やべえなアレ」
「いや」
ニッケルは歩くサダイタンを見上げながら話す。
「これ相当無理してるぞ、二足歩行。どこか
そう聞いてカリオはサダイタンの各部を観察する。このような時、
「……
「カリオもそう思うか。足首の関節は装甲が
二人はそう狙いを決めて武器を構える。その時、サダイタンの両の手のひら中央が
(攻撃……!)
カリオとニッケルは地面を
ピギャーオン! ゴゴゴ!
「つぁっ……!?」
カリオのクロジとニッケルのコイカルは思わぬ規模の爆風を受けて真横に体勢を崩して吹き飛ぶ! 周囲に激しく
「
「ボンはどうした!? 無事か!?」
ニッケルが周囲を見回したその時、砂埃の中からボンが飛び出す。
「やらいでか!」
ボンは背中のビームキャノンをサダイタンへと向ける。その時、サダイタンの肩部から何かが飛び出して、ボンのエクスギャリワンに向かっていく。飛んできたそれは自身の下部に装着された小型のビームガンで、ボンを狙って射撃を始めた!
バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!
「ぬわー!
慌ててボンは横に
「数が多いな、三十基ぐらいいるか?」
「それだけじゃない。あのデカブツ、体のあちこちに
ニッケルは二の腕や太ももに無理やり配置したかのような砲台を目にして言う。
「簡単に
ボンがそう話すとエクスギャリワンの緑のカメラアイが光り、カリオのクロジを見つめる。
「
「なんでだよ!」
「貴公の連れよりちょこまか動けそうだし」
「それ言ったらこの中だと四足歩行のお前が……うわっ!」
ドタタタタ! バシュッバシュッバシュッ!
サダイタンの火器が
ガァン! ガァン!
後方からリンコが、サダイタンの護衛ドローンを狙撃して数機落とす。
ガァン!
続けてリンコはサダイタンの膝関節を狙って撃つ。ビームは命中するも、関節部は少し
「関節自体の強度はかなりありそうだねー、私じゃ時間かかりそう」
「リンコのでもキツイか。俺が注意を引き付ける、カリオとボンで強めの一撃を叩きこんでくれ」
ニッケルはそう言って囮役を引き受けることにした。リンコのビームスナイパーライフルの出力でも破壊できない部位を、ニッケルのコイカルに搭載された装備で破壊するのはより難しい。逆にチョークを装備したニッケル機であれば、一機で三人分の囮役もできなくはない。
「まあ貴公がそこまで言うなら……」
「そんなに必死に
「すまねえが
ボンへのツッコミもほどほどに、一同はそびえ立つサダイタンに向かい合う。
ニッケル機の背中からチョークが射出される。まずサダイタン本体に対して
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
上空へ飛び上がったチョークから放たれたビームは、サダイタンの腰部に命中する。ビームを受けたその装甲はほぼ損傷を受けていない。恐るべき強度の合金。
サダイタン本体への攻撃を感知した護衛ドローンが、ニッケルのチョークに狙いを定めて動き始める。
(ドローンの方は釣れたか、自動タイプで助かったぜ。ただ本体側装備の迎撃砲はダメか……)
ドローンの動きを確認したカリオとボンは、速度を上げてサダイタンの足元に向かって飛びこむ。
(アレはニッケルに任せられそうか、チンケな砲台ぐらいなら……って
不意に動かしたカリオの左腕に強い痛みが走る。カリオは思わず足を動かす速度を
ドタタタタ!
カリオに向けて迎撃砲から射撃!
「ギャリワン・テツザンコウ!」
「のわっ!?」
ボンは思いっきりカリオのクロジに体当たりする。機体が迎撃砲の射線から外れ、弾を浴びることなく地面に転がる。
「ぐうぅ、助かった……いや助かったけど体当たりて!」
「ひょっとしてどこか
「大丈夫だ、同じヘマはしねえ」
体勢を整えて二機は再びサダイタンへ突っ込む。
サダイタン内部の玉座で、ハライータは複数の巨大なモニターを
「……正直、サダイタンの戦い方を真剣に考えたことがなかったな。使う機会も少ないし、使ったときはデカすぎて大体
ハライータはモニターの内の一つに視線を移す。敵側の狙撃手――リンコが小さく映るモニターだ。
「あやつ相当サダイタンに撃ちこんどるな……装甲があまり削られ過ぎるとマズい。それに護衛ドローンも落とされとるし」
ハライータは部下に手を挙げて合図を出す。
ガァン! ガァン!
遠距離からリンコは一機ずつ、落ち着いて確実に護衛ドローンを落としていく。
(本体への狙撃も続けているけど効果
リンコはサダイタンの頭部から光が発せられていることに気づく。
「え? ビーム? ひょっとしてこっち見てる?」
サダイタン頭部前面、人間でいう口の辺りに装備された高出力ビーム砲が
「まっずい!」
ギュコォーン!
サダイタンの口からリンコがいる場所へ向けて、さながら
ゴゴォン!
地面を横にゴロゴロと転がりながらビームを回避したリンコ。先ほどまで彼女がいた場所にはまたも大きなクレーターが出来ていた。
「イタタ……変な盗賊のクセになんでそんなヤバい威力の兵器ばっかり!」
「無事かリンコ! 無茶せず安全な位置に移動しろ!」
ニッケルが護衛ドローンと迎撃砲の相手をしながらリンコに叫ぶ。
(こりゃリンコと俺で長々と注意引き続けるのは厳しそうだな……カリオとボンは間に合うか……?)
(名犬勇者エクスギャリワン⑧へ続く)