◇ ◇ ◇
キクチシティ、
街で夕食を済ませたレトリバーのクルー達は艦に戻り、各々《おのおの》自由に夜を過ごしていた。
「カリオ~。カリオ~いますか~」
自室のベッドで
「おい、もうちょい静かにノックしろ」
自室のドアを開けるなり、カリオは視線を下に落とし、そこにいるマヨを
「マロンナおばさんがシャボン玉作ってくれました! やりましょうぞやりましょうぞ!」
「マジか~……明日にしねえか? 今日はまあまあ
カリオの気の抜けた顔を見て、マヨはビッと右手の人差し指を立てて言い放つ。
「古代のことわざ知ってますかカリオ。『急がば回れ』」
「難しい言葉知ってるのは
ほっぺを
「明日朝メシ食った後で付き合ってやるから、今日はもう寝ろ。ほら、部屋に送ってやるから」
◇ ◇ ◇
テエリク大陸西部の荒野。
「カーッ! シケてやがるぜ!」
「いい加減切り替えろよ、グチグチ言ってたってしょうがねえだろうがよ」
夜の荒野を
「アイツ、明らかに
「まあその辺り
自動車の車内より少し広い程度のブリッジで、太り気味の男と細身の口ひげの男が会話している。二人は
「この流れ、なんか負のループに入ってねえか? 新しい取引先が出来たと思ったら足元見られて、それで別の取引先に乗り
「それを言うんじゃねえ! 口に出すとまた……おい、アレ見えるか?」
細身の男が突然前を指さす。太り気味の男が目を細めて、ライトで照らされた先を見ると、岩とは違う大きな何かの塊が見える。太り気味の男は地上艦の速度を落としていく。
「前にこの辺り通った時にあんなのあったか? 土に埋もれていたとか?」
「……あれ、船かなんかじゃねえのか?」
地上艦が停止する。
その目の前に現れたのは、ロケットのような形をした金属の乗り物の
◇ ◇ ◇
カリオの意識は眠りの底に落ちていた。
クルーの
……――……
何かが朝まで帰ってこないはずの意識を呼び戻す。覚醒した
……! ……!
カリオは再び低く唸る。これは、音だ。
……タタタ! タタタタタタ!
目を瞑った暗闇の中、聞き覚えのある音が呼ぶ。
「……!」
カリオは
タタタタタタ! タタタタタタ!
銃声! そう遠くない場所で戦闘が行われている!
カリオは自室を飛び出してまず艦内の状況を
「カリオ! ちょうど起こしに行こうと思っていたところだ! 聞いたか、銃声」
「ああ。でも今起きたところで何もわからねえ。外だよな?」
「俺もわからねえ。とにかく俺は上の階を見てくる……お、リンコも起きたか。二人は万が一に備えて
リンコが部屋から頭を出して廊下を
「二人とも起きてんじゃん、もしかしてヤバいの?」
「俺も起きたばかりでわかんねえ、ニッケルの言う通り格納庫へ行こう……あ」
「あ……マヨだよね? 部屋から出ないように言っておかないと」
リンコとカリオが話していたところに、ふくよかな女性がやってくる。レトリバーの料理長、マロンナ・モンブラだ。
「二人とも出るのかい?
「まだわからねえが……おばさん、危ないから部屋で待機しててくれ。マヨにも言ってやらねえと」
「子供一人じゃ少し不安でしょ、私がマヨちゃんの部屋に行って二人で待っておくのはどうだい?」
カリオとリンコは
◇ ◇ ◇
ダダダダダ! ダダダダダ!
キクチシティから一キロメートルほどしか
ダダダダダ! ダダダダ!
その後方で、白い船体に
「……手間取っているな。私も出る」
「コレスさん!? で、出るんですか!?」
「
驚く地上艦の艦長にそう答えると、「コレス」と呼ばれた四角メガネの男はブリッジから格納庫へ向かっていった。
(マヨ・ポテトの災難EX③ へ続く)