◆ ◆ ◆
「ねえ、マヨちゃん。その……もし、もしだよ? 引っ越すってなったらどんなとこがいい?」
「んー」
仕事の
「ルースと
「ジローさんは?」
「ジローはイラネ」
「えぇ……」
ジローの
「えーと……じゃあさ、その、私のね、私の、恋人とも一緒に暮らすってなったら……どう? 私とその人と、マヨちゃんの三人で」
ガシャーン!
マヨは持っていたロボットの人形を
「
「え!? いやちがっ、結婚はまだなの!
「そこまでいっててなんで結婚しねえですか」
「待って流れ変わってる」
マヨに詰められルースがあたふたしていると、部屋のドアを誰かがノックする。開けるとジローの姿がそこにあった。
「ジロー! 焼きそばパン買ってこいです!」
「えぇ……俺は別に
マヨに
「
「こんな時に出張とかあるのか?
「通話
ルースの問いに、マヨに足をポコポコ
「仕方ない、他のメンバーと進めて後で共有するしかないな。知ってるか? ここ数日間、急に連絡が取れなくなった奴が
「……? ん? この研究所でってことですか?」
「この研究所もそうだし、
「えぇ?」とルースは思わず
「行方不明ってコトですか? 大丈夫なんです? それ……」
「何が起きてんのかわからんのが不気味だ。ルースも仕事はほどほどでいいから気をつけてくれよ。……マヨちゃんのこともあるし、もしかするとホントに引っ越す羽目になるかもな」
「……結構気に入っているんですけどね、この町」
ジローがマヨの頭に手を伸ばすと、彼女が思いっきり手に
◆ ◆ ◆
「おお、なんか
「思ったより作業が多いから助かる」
成り行きでゴーヤの手伝いをすることになったカリオとカボチ。機体格納庫で彼らが作業していると、駐屯地の様子を見に来た他の兵士達が続々と集まり、少し格納庫は
「おい、それは一人で持ち上げるな。腰がやられるぞ」
ゴーヤはすっかり仕事モードのスイッチが入り、あちこちに目を光らせてきびきびと指示を出す。
「なあ、ナイゾウさんも連絡つかないらしいぜ」
「ええ!? じゃあ俺が知ってる人だけでも四人音信不通じゃん!?」
「反乱軍のスパイが
「なんか機体少なくなってねえ?」
作業する兵士達の会話があちこちから聞こえてくる。どの会話も似たような内容。皆、カリオやカボチのように一部の上官や
「みんな一緒かよ」
「不気味だなぁ、外出るんじゃなかった」
「おまえさえ来なかったら
ぼやくカリオをカボチが軽く拳で
「なあカリオ。おまえ反乱軍の下に入っても、軍人、続けるのか?」
「わかんねえな。元々剣の
「……やめとけよ。俺より
「そうかねえ」
「そうだよ。学がねえって言ったって、これから戦後の
「……」
「命令で誰かを殺す仕事」か。カリオはその言葉を聞いて、孤児院にいた小さいころ、
「おっ、おーっ!?」
カリオ達の頭上から声が降って来る。上を見ると一人の兵士がビッグスーツのコックピットで、一部の機器を起動させているようだ。
「おい何勝手に起動させてんだ!」
「いーじゃん、どうせ後でこっちもいじくるんだろ? 今レーダーの調子見てたんだけどよ、町の外からなんか近づいてくるぜ。反乱軍じゃねえの?」
コックピットの兵士はゴーヤを軽くあしらった。
「え、もう来ちまったのか?」
「おいおい大丈夫かよ。こっち人が
真似してビッグスーツによじ登りレーダーを確認する者、会話するもので格納庫内のざわつきが大きくなる。
「……どうなるんだこれ」
「
「そこで自信なさそうにするなよ!」
ゴーヤが拡声器を手にして大きな声で話す。
「一旦作業停止! 出したもの片付けろ! 俺と各リーダーとでもう一度上層部に連絡を取ってみる。念のため家に家族がいる奴は連絡を取っておけ」
◆ ◆ ◆
「……そう、こっちは何の連絡もなくて。うん、とにかく気をつけて。無茶なことしないでね……大好き、また家でね。じゃあ」
ルースは通話を終えて、携帯通信端末をポケットにしまった。
「おお! ダンナさんですか!」
「いや、マヨちゃん、その、まだ結婚は」
「何かあったのか?」
足にちょっかいをかけてくるマヨの頭を
「一緒に住んでる兵士のカレから連絡があって……今日、駐屯地に行ってみたらレーダーで町に近づいてくる影を確認したって」
「本当か?」
「研究所にはまだ反乱軍からの……
「ああ、こっちで急いで確認してみる。ルースは今日の仕事は一旦切り上げて、いつでも帰れるように準備――」
ドォン!
ジローの指示を遮るように、突然爆音が
「爆発音!?」
ルースは思わずマヨの体を引き寄せた。
(マヨ・ポテトの災難E⑪ へ続く)