目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

マヨ・ポテトの災難EX⑫




 ◆ ◆ ◆




「動けるのは……三機、いや四機か」


 クロジのコックピットのシートにすわり、脳波のうはコントロール用のヘッドギアを装着したカリオは、生き残りの兵士が乗る他のクロジと通信状態を確認する。


「クソ……もうすぐに町の中に進入してきそうな影が映ってる。大きさからしてビッグスーツだ」


 一人の兵士がレーダーを確認して、忌々《いまいま》し気にそう口にする。


流石さすがにこっちより数が多いな」

「急ごう、町のおくに入られると被害ひがいが広がる」




 四機の白いクロジは半壊はんかいした格納庫かくのうこで、強引にハンガーをこわしながら歩き出す。くずれ落ちた巨大なとびらえて、アイカメラを光らせながら外を見やる。




ドォン! ドォン!




 砲撃ほうげきは続く。駐屯地ちゅうとんちを破壊した砲撃を含めて四回の爆音ばくおんが、兵士達には聞こえていた。


「……他の場所の被害はここからじゃわからないな。しかし、この駐屯地に直接かよ」

「……待機指示出てるからってのんびり休日してたら、まさか町が無防備むぼうびになってるたぁな。誰も気づかなかったのが間抜まぬけで悲しくなってくる」


 怪我けがが少なくクロジに乗り込むことができたのは、カリオとユーリの他に、カンタローとハヤトという名前の二人の兵士だ。二人の通信を聞いて、カリオの頭の中に一つの推測すいそくが浮かんでくる。


(……駐屯地の上層部の仕込みなんじゃね? とか思ったけど流石にあり得ないか――)

「南西からだ。そっちへ向かおう」


 ユーリの声を聞いて、カリオは自分の推測を頭のはしへ追いやり、町の南西の防壁を見据みすえる。




 ◆ ◆ ◆




歩兵ほへいだと……!? この研究所に!?」


 空爆くうばくと同じく命をうばう、しかししつことなる脅威きょういの接近を感じたジローは、その理由を考える。


「……バレてます? ひょっとして」

「かもしれん。ここには遺跡いせきから発掘はっくつしたオーバーテクノロジーがいくつもある。早くシェルターへ!」


 ルースとジローはそうやり取りすると、マヨを連れてシェルターへ通じる廊下ろうかを進んでいく。




 パリィン!




「!!」


 ルースは咄嗟とっさにマヨを引き寄せる。進行方向の先にある階段、そこからつながる上階でガラスの割れる音。


「マズい! ルース、こっちだ!」


 ジローは数メートル戻り、別の廊下へルース達を連れて進んでいく。そして地下へ続く階段に到達とうたつすると、ルースとマヨに降りるよううながした。


「待って、ジローさんは!?」 


 来た方向を見やるジローを、ルースは一緒いっしょに来るように呼び掛ける。


「いいか、どう逃げてもどんまりに行きつく。ダメ元になるが俺が注意を引き付けるしかない」

「バカ言わないでください! 相手プロですよ!?」

「わかってる! でもこのまま三人で行っても追い込まれるだけだ!」


 ジローのあせりのにじんだ声を聞いて、ルースは押しだまり、こぶしをギュッとにぎる。


「……どこまでやれるかわからんが、やれることはやってみる。ルース、お前は――マヨちゃんを死ぬ気で守ってくれ」


 ジローはそういって二人に背を向け、道を戻り始める。その背中を見て、マヨは思わず声をあげる。


「ジロー……ジロー! ジロー! 一緒に行くです!」

「マヨちゃん! ゴメン! こっちに」

「ジロー! 来やがれです! ジロー!」

「ゴメン、マヨちゃん、ゴメン……」


 ルースはこみあげてくるなみだをこらえながら、マヨをかかえて地下への階段を降りていく。




 ◆ ◆ ◆




冗談じょうだんだろ……」


 防壁ぼうへきの近くにまで進んできたカリオ達。その時、まさに防壁の上から飛び降りてくる機体を見て、ユーリは目をうたがう。


「クソッ……白いクロジじゃねえか」


 十体の白いクロジが防壁の内側へ進入し、町を見渡す。カリオ達と彼らが今立っている場所は商業地域しょうぎょうちいき。しかし先ほどの砲撃のせいか、建物はくずれ落ち、炎と煙が上がっていた。


「なんでこんなことを、まさか本当に共和国軍なワケ……こちら、ハヤト・センナ。そちらの所属しょぞくと目的を――」




 ダダダダダ!




 ハヤトが侵入者しんにゅうしゃに通信を試みたその時、侵入者達の機体が持つサブマシンガンから一斉に実弾が連射される!


かくれろ!」


 ユーリとカンタローは素早く瓦礫がれきの影に飛び込み、銃弾をしのぐ。


せろハヤト!」


 咄嗟とっさにカリオはハヤトの機体に体当たりする。ハヤトの機体がそのまま転倒てんとうすると、先ほどまで彼が立っていた場所を銃弾じゅうだんが通り過ぎていく。


 カリオは体当たりした勢いそのまま、転がりながら立ち上がり、手近な敵一機のふところに飛び込むと、腰のビームソードを抜いて一閃いっせんを放つ。




 横一文字!




 敵のクロジは腰から一刀両断いっとうりょうだんされ、瓦礫の上にたおれた。


「カリオ! 助かっ――」

馬鹿ばか、動きを止めるな!」


  起き上がろうと膝立ひざだちになっていたハヤトにカリオがさけぶ。




 ダダダダダ!




「あ――」


 ハヤトが気づいた時には遅かった。続けざまに放たれた敵機の銃弾が、ハヤトのクロジの頭部を吹き飛ばした。ハヤトの肉体も機体からのフィードバックによるダメージを受けて、彼のいるコックピットが、真っ赤な鮮血せんけつで染まる。


「ハヤト!!」


 カンタローの叫びも空しく、ハヤトの機体はそのまま倒れ、動かなくなった。


「ハヤト!! チクショウ!!」


 カリオは叫びながら、素早くユーリ達とは離れた位置の瓦礫に身を隠す。




「……一機撃破、残り三機。今、アダハレの機体を倒したのは恐らくカリオ准尉じゅんいだ。気をつけろ」

「……本当に装備がビームソード一本だけとはな」


 カリオ達の隠れた瓦礫に銃口を向けたまま、敵兵達は通信を交わす。


「町の外から来た奴らは知らなくて当然か。腕利うでききの剣士けんしで、奴のクロジは独自に改造されている。けん一本だけだからって油断はするなよ」




(マヨ・ポテトの災難EX⑬ へ続く)


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?