◆ ◆ ◆
「フン、一機は市街地から人の少ない農業エリアに抜ける気か……とんだ甘ちゃんだな、
「アルファ一、三、四、ベータ一は北東へ。残りは北西へ向かえ」
九機の白いクロジ達は、二手に分かれてカリオとユーリの機体を追う。
北西の商業エリアに向かう機体を追う五機。その前方には砲撃で破壊された建物の
「……! 動きが止まった」
五人の襲撃者達はレーダーを確認する。移動を続けていた影が確かに静止している。その影は恐らく、あのビームソードのみを装備した機体だ。
「まだ砲撃が及んでいない市街地に入る前に迎え撃つつもりか。無意味なことを、どうせ続きの砲撃で破壊されるというのに」
五人の乗ったクロジは、一軒の崩れかけたビルを包囲するように進んでいく。レーダーの影はそこで止まっている。この建物の裏に、先ほど自分達の味方を
ゴゴゴゴゴ!
「……! チィッ!」
五人の目の前で元々崩れかけていたビルが、下から
「アイツが仕掛けたのか!」
「来るぞ! 集中し――」
ブォン!
通信する襲撃者が言葉を言い終わるより先に、瓦礫と砂埃の中から青い
「え――」
一機の襲撃者のクロジの頭部が、胴体から斬り離され宙を
ブォン!
また青い閃光が飛ぶ。
その光を目にした襲撃者の目に映る
「こいつ
ブォン! ブォン! ブォン!
……
…………
…………
――――
「――クソ」
砂埃の中でカリオは
「なんだよ……なんなんだよこれ。すぐやられやがって、大した奴らじゃなかったじゃねえか……! こんなんだったら……」
カリオの声が
「こんなんだったら、俺がもっと器用に判断してたら、ちゃんと動いてたらカンタローは死なずに済んだじゃねえか……! ハヤトだって
「聞こえるかユーリ! 返事出来るか?」
「ユーリ! 返事出来るか! ユーリ!」
「……カリオ」
少し小さく、弱いユーリの声が返ってきた。
「ユーリ! こっちの
「無理だな」
ユーリは即答した。あまりに早く返ってきた
「何言ってんだ、諦めんなよ! すぐに行く、それまで――」
「足は千切れて、バッテリーもやられてんだ。畑のド真ん中でな。あちこちに穴あいてそうなんだけど
ユーリの声に荒い息が混じっている。カリオは
「ユーリ、ダメだ、なんとか――」
「俺の方はいい。おまえは……せめて、一緒に住んでる彼女連れて町を出ろ」
息を荒げながら言葉を
「ゴーヤのおっさんも、ハヤトもカンタローも……だからおまえだけでも、町を出て今度は兵士じゃな――」
ガガガガン!!
「!!」
カリオのコックピットのスピーカーから大音量の金属音が
ユーリの声は、もう聞こえてこない。
カリオは少しの間、打ちのめされて目を閉じていた。瓦礫とビッグスーツの残骸が転がる中、ただ一機立つクロジのコックピットで、
彼女と一緒に住む白壁の家。町から出かけて
カリオは彼女の勤める第九技術研究所のある方角を見やる。恐らくまだ砲撃は来ていない。
ドォン!
だが砲撃は着実に町の被害を広げている。狙いも読めない。いつ研究所が破壊されてもおかしくはない。
カリオは地面を
空には黒い雲が広がり、静かに雨が降り始めていた。
◆ ◆ ◆
ドォン!
町への砲撃の爆発音が、ルースとマヨのいる倉庫に響き渡る。
「あの砲撃もあなた達の仕業?」
「ああ、私にとって不都合なモノが色々残っているこの町には無くなってもらいたくてね。幸い内戦直後で大陸の治安は悪い。町一つ消えても食うに困った
「あなた達共和国軍の
パァン!
発砲音。ルースとマヨはびくり、と身を
「彼氏に似て
「彼氏?」
「カリオ・ボーズだろう? あいつも何かと文句を言ってくる男でね。この砲撃で死んでくれるか、今この町を攻めさせている我々のビッグスーツに倒されてくれるとありがたいんだが」
ルースは左手の拳をギュッと
「……この変態。人の交際関係まで調べておいて彼まで殺そうとするの? 絶対に許さない。とさかに来た」
ルースはポケットの中のリモコンのスイッチを押した。
キュイイイイイ!!
「なんだ!?」
「ルース!!」
中からマヨが叫ぶ。ルースはずっとコレスを睨みつけている。
「どれだけここの情報が
ルースは
「……タイムマシンが実在する話とか。あっても信じませんよね」
(マヨ・ポテトの災難EX⑮ へ続く)