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カリオのクロジは、そこで青いビームソードを
数機のビッグスーツの
コックピットでカリオは冷たくなったルースの体を抱え、
前方から近づいてくるビッグスーツの影。
不思議と敵ではない、とすぐに感じた。その直感の通り、現れたのは白いクロジではなく、二機の黒い「コイカル」というモデルの量産機。
通信が入り、カリオのコックピットのスピーカーから男性の声が聞こえてくる。
「そこの白いクロジ。俺達二機は反乱軍に
◆ ◆ ◆
一つ夜を
雨は上がり、日差しが
「ごめんニッケル、あちこち焼けていて添える花なんて見つからなさそう」
ニッケルの後ろから声を掛ける赤いモヒカンの女性。もう一機の黒い機体のパイロット、リンコ・リンゴだ。ニッケルはショートアフロにした頭を
「俺たちみたいな通りすがりの祈りだけが手向けか。済まねえなぁ」
町は近隣から
「……さっき言っていた事だが、アンタの気分が落ち着いてからでいい。と言うか無理だろ。少し俺達の
ニッケルは瓦礫にもたれ掛かって座るカリオに声をかける。カリオはニッケルを見上げて目を合わせたが、すぐに目を泳がせた。
「そこまで世話になるつもりは……」
「世話もへったくれもないでしょ。住んでる町も大切な人も
「見えるんじゃねえの、傭兵だし頭モヒカンだし」
カリオの顔を
「うぐ」
「お
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日はあっという間に空を横切って夜になっていく。医務室で横になっていたカリオは
「よう、起きたか」
寝ていたベッドの向かい側、デスクに座った
「俺……あ、
「まだゆっくりしておけ。ここに来る途中で気を失って倒れたんだ。相当大変な一日だったみてえだな。
カリオはそう言われて自分の右肩を見る。肩には白く、大きなガーゼが
「そんな状態でよく戦えたもんだ。しばらくは動かさないようにしろ。あと一日に一度俺が
「いや、ちょ、気失ってどれくらい……」
「半日ぐらいさ。腹が減ってるだろう。メシ、余ってないか見てきてやるよ」
カリオは立ち上がろうとするヤムを
「ちょっと待て、飯から治療まで何から何まで面倒見てもらうなんてその……」
「んなこと言ったってなぁ。お前さんの機体も艦に入れちまったし、部屋だって空き部屋がちょうどあるからそこをお前さんの……」
「……え?」
◆ ◆ ◆
「フレーム
地上艦「レトリバー」。
サンディブラウンの色をしたその艦の格納庫で、チーフメカニックのタック・キューがカリオの機体をあちこち観察している。
「いや、ちょ、なんで俺の機体が!?」
クレーンの先に乗ったタックが、調べていた機体の足元、声のする方へ目を向けると機体の
「おー、話は聞いたぜ。すげえなアンタの機体。こりゃじっくり勉強しないと
「整備って、おい、あの俺は……」
混乱するカリオの横に、並んでくる男がいた。レトリバーの艦長、カソック・ピストンである。
「起きたか。早速だがおまえ、ウチの艦で傭兵やってみねえか?」
「ハァ!?」
突然のカソックの申し出にカリオはさらに困惑する。
「共和国軍で名を
「いやいやいや! 三桁はやってねえよ!?」
「これから先、どうするつもりなんだ? 何か決めてるのか」
「む……」
カリオは自分のクロジを見上げる
「……流石に今日いきなり決められねえよ」
今日は何から何まで散々《さんざん》だった。仲間を殺され、住んでいた町を
「……そうだな。そりゃそうだ」
カソックは
「空き部屋の話は聞いてるよな。もうすっかり夜だし、そこでゆっくり休んでくれ。多分この町には、クライアントから次の
「いや、流石に泊まるとこまで世話になるわけに……」
カリオが
その白いクロジを見上げて、カリオは小さい頃に
(……)
大きくなって彼等に追い付こうとしたら、いつの間にか自分の手は血で
そんな俺に、
最後まで自分のことを気にかけてくれた軍の仲間たち。
(……地獄に行くのは、俺一人でいい)
カリオは目を
(神様、神様よう……俺はどうしたら……どう生きれば、ルースとみんなは天国にいける?)
◆ ◆ ◆
一週間ほど経った。襲撃を受けたホシノタウンでは、まだ多くの医師や
そんな状況の中、サンディブラウンの地上艦「レトリバー」に次の任務が
多くの大切な物を失い、「剣」だけが手元に残った新たな仲間を乗せて。
それから二か月後、テエリク大陸の中部である傭兵グループの
マジメな奴からマジメな仕事しか受けないマジメちゃんの傭兵達、「黒」一色に塗装されたビッグスーツに乗る三人組の傭兵――
――「ブラックトリオ」の噂である。
(マヨ・ポテトの災難EX⑰ へ続く)