「おいおいおいおいおーいおい!!」
お座りして大人しく聞いていたボンが、また
「俺は勇者だからわかるぞ! こんな竜巻に飛び込んだら――」
「超高温で機体ごと
平然とそう口にするシャマスに対してボンは低く
「カリオ! これは悪の
「……」
カリオは数秒、
「続けてくれシャマス」
「カリオ!」
「ボン、心配してくれるのは
カリオになだめられて、ボンは
「悪いなボン……シャマス、いまいち〝受け入れる〟って言葉の意味がわからないんだが」
「エメト操作能力の他人による強引な発動、それもこの
「ぼんやりとしか、か。おまえが現象の
「この現象は彼女自身が望んで起こしたモノじゃない。カリオさんを認識して完全に
そこまで聞いてたまらず、ボンはまた二回吠えて威嚇する。
「おいおいおいおいおーいおい!! 感覚的な話って、つまりその作戦の安全を
「そうですね、僕は成功する自信あるんですけど根拠っていうのは……示せないかも」
ボンに
「私は関係ないのなら帰っていいか? その二人は今殺すのはダメなんだろう?」
「犬の方は殺してもいいですよ」
「……やっぱり帰る。今からなら例の限定ピザをテイクアウトしても間に合うはずだ」
「あはは、そうですね。すみません、お楽しみの邪魔しちゃって」
イルタが乗るフライデの頭上に、先の戦いの時と同じように、
(コイツら……イルタもシャマスも、何考えてるかイマイチ読めねえ)
「どうします? カリオさん。無理なら僕は別の方法を考えます」
「……シャマス、ゆっくり考えている時間はないよな?」
「……最悪のケースを想定するなら、一時間以内にマヨの精神が完全に破壊される可能性もゼロじゃありません」
カリオは目を閉じる。十秒ほどの
「やろう。俺は飛び込む。シャマス、手伝ってくれ」
◇ ◇ ◇
(ぐぬぬ……)
ぼんやりとした意識の中、マヨは周囲を飛び交う熱と光に
――今、危険な状態にある自分に近づけさせるわけにもいかなかった。
(ニッケル、リンコ……カリオ……帰ってくれです。私が我慢できなくなったら、みんなを――)
不意に、意識が少しだけ光のする方へ浮上する。飛び交う熱と光をかき分けて、何かが、誰かの気配が近づいてくる。
(……シャマス兄ちゃん?)
◇ ◇ ◇
「おーすげえな……いや、俺は正義の味方としてまだコイツのことは信用して――」
「少しマズいですね」
「セリフぶった切られた」
ボンの言葉を
「マヨは、カリオさん達への被害を防ごうとしているだけじゃない――あなた達を近づけないようにしようとしている」
「何?」
カリオは
「今の自分の状態が不安定であることを理解している。あなた達を巻き込みたくないと思っている」
「……助けを求めたりはしてないってのか、あんなガキなのに」
「カリオさんが飛び込もうとして、下手に
カリオは竜巻に
「……行くさ。大丈夫」
カリオはゆっくりと渦巻く光の風に向かって一歩踏み出す。
(――まあ、そこまで優しくしてやった覚えもないが――)
カリオの腰のポケット、マヨから預かった
(――そこまで嫌われてもいねえだろう)
踏み出した足が、光の中へ入っていく。
(――俺を見ろ、マヨ)
(マヨ・ポテトの災難EX㉕ へ続く)