トリガーを引け
迷わず でも慎重に よく狙って
そう進むと決めたのなら
あいた風穴と手に入れたガラクタが
おまえの行き先を決めてくれる
◇ ◇ ◇
ひと月ぶりの雨が止み、強い日差しが街の土に照り付ける。
テエリク大陸中央の少し南寄りに位置する街、タカハシシティの屋台街は多くの客で
通りの真ん中をずんずんと歩いて突き進む、少年と少女。身長は百三十センチメートルぐらいで十歳前後だろうか。
少年の方は
「……お! ちょっとだけ席空いてる! タニシャ、こっちだ!」
少年――スケト・ウダラは少女を急かす。「タニシャ」と呼ばれた少女は小走りして追いかける。
「おぉ、スケト! ここが
スケトとタニシャは急いでカウンター席に座る。「カニチャーハン」と書かれたのれんの下で、スケトとタニシャ――タニシャ・メークインはその匂いからまず
「カニなんて内陸じゃあまり食えないからなぁ! バイオテクノロジーさまさまだぜ!」
スケトとタニシャは中サイズのカニチャーハンを店主に頼み、お冷を受け取る。
「おいスケト、これあげるです」
タニシャはバッグから一冊の本を渡すとスケトに手渡した。
「ん? どして?」
「この前スケトの
「……この本、えちえちユニバースじゃねえか。気持ちは
「え、男はエロ本が好きだって知り合いのおっちゃんが」
「……俺からのアドバイスだ、そいつは信用するな」
ガーンと口を縦に大きく開けてショックを受けるマ……タニシャを見て、スケトは困ったように頭を掻く。
「あー……気持ちは嬉しいし受け取る。あんがとな」
その言葉を聞いたタニシャはみるみるうちに笑顔になり、彼女のサイバーサングラスに表示される文字が「ライオン」に変わる。
「カニチャーハン中、二つお待ち!」
店主が二つのカニチャーハンを、二人の目の前のカウンターに置いた。卵が均一に行き渡った
二人は雑に手を合わせて食前の挨拶を済ませると、すぐにチャーハンにがっついた。期待以上の美味が口の中に広がる。危うく魂も抜けてしてしまいそうになる絶品。
「スケト、誕生日はどんな感じだったんですか」
「んー?」
口いっぱいにチャーハンを頬張りながら、何と無しにタニシャが聞くと、スケトは前の一点を見つめながら話し始めた。
「大したことはしてねえよ。かーちゃんと小さいケーキ食ったぐらい。プレゼントは一応
「とーちゃんは?」
「仕事だった」
スケトはチャーハンをレンゲですくって口に放り込む。
「毎日毎日よく休まねえもんだな、街の門の見張り」
「どれくらい休み取ってるですか」
「月一ぐらいかな。カラダは
もぐもぐとチャーハンを
「ひょっとしてとーちゃん誕生日いなかったんで寂しいですか?」
「んなっ!? バカ! そんなわけねーだろ! 俺だってもう十歳だ、親父が誕生日にいないくらいなんてことねーよ! ……ってかよタニシャ、お前――」
顔を真っ赤にして怒りながら話していたスケトの声色が急に落ち着く。
「――背伸びすぎじゃね?」
「そうですか?」
「そうですかじゃねえよ。おまえがこの街に来てからまだ半年だろ? ニ十センチぐらいは伸びてるぞ」
マ……タニシャは自分の頭のてっぺんをぽんぽんと叩いてみる。
「成長期じゃないすかね」
「ありえねーから! 新記録だと思うんだけど……ちょっとおまえのことをメディアに紹介してもいいか」
「やっぱ男はスケベじゃないですか」
「スケベな話はしてねえよ」
そんな話をしていると、屋台の奥のラジオからニュースが聞こえてくる。地上艦の車列を襲撃した、逃亡中の盗賊に関するニュースだ。女性アナウンサーの声が、予測される逃走ルートを読み進めていく。
「……この辺りの近くにまで来てるかもしれないのか、レッドハイエナ団」
「この前のニュース、
「結構この辺りも増えたよな、
それを聞いてタニシャは飲みかけていたお
(GET READY FOR SECOND JAM② へ続く)