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GET READY FOR SECOND JAM⑥

「お、おいホントにブラックトリオなのか……」


 コマイは目の前で起こる事の展開についていけず、只々《ただただ》外側から様子を見ることしかできないでいる。


「……」


 口には出さないもののナツトも同様であった。




 対峙たいじするカリオとバッケの機体。




 ドン!




 カリオは強くみ込み、バッケに高速で接近しながら左から右への横薙よこなぎを放つ。




 横一文字!




 バッケは上空へ高く飛び上がりこれを回避、続けざまに上空からサブマシンガンを斉射せいしゃする。


 ズダダダダダ!


 カリオは冷静に先ほどとは違う方向へ地面を強くり、斜め横に跳躍ちょうやくしてこれを避ける。


 お互いに二度ずつの攻撃のやり取り。その感触をもってカリオは確信した。




「……さては本物のレッドハイエナ団じゃねえな。恐らくはもっと有名人だ」

「ほう……」

「その赤い機体、低スペックの量産機に見せかけてはいるが、実際はかなりの額積んだワンオフだろ」


 カリオの言葉を聞いてバッケの口角が上がる。


「こんなデカい街をおそうリスクをおかす奴はそうはいない。盗賊のようなおたずね者ならなおさらだ。地上艦の車列を襲撃しゅうげきしたばかりで、付近のコミュニティの追手から逃れなきゃならねえレッドハイエナ団が、わざわざタカハシシティをこのタイミングで襲うってのは不自然だ」

「つまり?」

「レッドハイエナ団の名をかたって何かしら悪事を働くつもりなんだろ? 連中の旗をかかげて。そうすりゃ一旦追跡ついせきの手を逃れてしまえば、あとはそいつらが罪をかぶってくれる」


 はははっとバッケは笑い声をあげた。


「あっさりバレたか。殺すしかねえな」

「ふざけやがって、元々そのつもりだろ」




 ドン!




 カリオとバッケは同時に大地を蹴って突撃する。




 ブォンブォンブォンブォンブォン!

 ズダダダダダ!


 常人ではとらえることのできない速度の斬撃と銃撃の応酬おうしゅう! 二秒後、再び両者は距離を取って向き合い動きを止め、対峙たいじする。


 カリオの機体のマントにはバッケの射撃によっていくつもの破れが出来ていた。一方でバッケの機体にはほとん損傷そんしょうが見られない。


「む……マジで手強いな」

「うるせえな早く死ねよブラックトリオ」


 言いながらバッケは顔をにやつかせる。


(カリオ・ボーズ……裏社会での懸賞金額は二億テリ! 手が出せない相手かと思っていたがそうでもないな。上手くやれば勝てるぞこれは!)




 カリオが剣を再び構えようとした時、そのコックピットのスピーカーからしゃがれた声が聞こえてくる。


「……かーっ! 仕方ねえな。もいいぞカリオ」

「……! ! いいのかよ!?」

「本当ならそのままで乗り切って欲しい所じゃが、及第点きゅうだいてんってことにしといてやる」

「よっしゃ……!」




 通信を聞いたカリオは突然、巨剣きょけんを投げ捨てた。


「あん? なんだぁ?」


 バッケが怪訝けげんそうに宙を舞う巨剣を見つめる。次の瞬間――




 ズドォン!




 巨剣が落下した衝撃で地面から大量の土埃つちぼこりが上がった。カリオの機体をおおいい隠かくさんばかりのその量にバッケは目を丸くする。巨剣は地面を割り、その切っ先より二回り大きいクレーター状の穴をあけて突き刺さっていた。


「な……なっ!?」


 バッケは目の前で起こった出来事におどろく。カリオは続けてマントを脱ごうと、その肩当かたあてを持ち上げる。


「ふんぬぬぬぬぬ……!」


 コックピットの中で顔を真っ赤にしてふんばるカリオ。黒い機体はなんとか頭からマントをぐと、それも投げ捨てた。




 ズドォン!




 またも地面から大量の土埃が上がる。落下したマントは地面にめり込んでいる。


(こ、こいつ一体……何なんだあの剣とマント!?)


「合計二百トンの大剣とマント……アホみたいにキツかったぜ」




 マントを外した黒い機体の外見があらわになる。クロジよりわずかながらマッシブになったフォルム、背面の首の下からは二本の布状の部品がマフラーのように風になびく。腰の左には長いさやに収納されたビームソードが一本。


「よしっ。『ブンドドマル』の初陣ういじんだな」


 カリオはゆっくり深呼吸して、力を抜く。




 ドォン!




 「ブンドドマル」は大地を蹴り、先ほどまでとは桁違けたちがいのスピードで前へ跳んだ!




(GET READY FOR SECOND JAM⑦ へ続く)

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