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GET READY FOR SECOND JAM⑦

 超高速で接近するブンドドマル。バッケは迎撃げいげきせんとサブマシンガンを構えようとするも、間に合わない。


 ブォン!


 カリオは抜刀ばっとうし、水平方向に斬りつける! バッケは素早く後ろへび、紙一重かみひとえでこれをかわす!


(……ダメだ! さっきまでのコイツじゃねえ! 体勢が……!)


 バッケの機体は急激な回避運動でバランスをくずし、倒れかける。カリオはそのすきを逃すまいと再び距離を詰めて斬撃ざんげきを繰り出す。


 袈裟斬けさぎり!




 バキィン!


「む!?」


 カリオのビームソードがバッケの機体に触れることなく停止する。バッケの機体の周囲に、六角形をいくつも並べたような球状のバリアーが展開されたのだ。


「コレスの時と同じようなバリアか!」


 ズダダダダダ!


 バリアの中からバッケはサブマシンガンを連射! カリオは慌てて飛び退き、体勢を立て直す。


「中からの攻撃は通すのかよ!? インチキ装備が!」


 カリオの斬撃をしのいだバッケのほおを、汗が一筋ひとすじつたう。


(危ねえ野郎だ、カリオ・ボーズ……バリアーはバッテリーの消耗しょうもうがキツい。頃合いを見計らって逃げた方がいいか――)




 ドォン!


 バッケが退く事を考え始めたその時、再びカリオのブンドドマルが突撃してくる!


「っと、せわしない!」


 バッケはすぐにバリアーを再展開。 カリオは真上から下へ真っ直ぐにビームソードを振り下ろす!


 真っ向!


 ビキィ!


 バッケのバリアーはこの斬撃に耐える!


(よし凌い――)


 バッケが再びサブマシンガンのトリガーを引こうとした時である。カリオは剣を振り下ろした勢いそのまま縦に一回転。再度真上から遠心力を乗せた斬撃を放つ!


「クソッ!」




 パキィン!


 二度目の一閃いっせんでバリアーがくだけ散る! ウキヨエ流・ざん刃車はぐるま」!




「ぐあああ!!」


 ズザァン!


 斬撃はバリアーを破壊するとそのままバッケの機体も縦に一刀両断いっとうりょうだんする! 縦にきっちり割れたビッグスーツはそのまま地面に倒れ、沈黙ちんもくした。




「やりやがった!」


 外から様子を窺っていたコマイが、興奮こうふんして声に出す。


「……! 気を抜くなコマイ! 手下どもがまだだ!」


 カリオの戦いに圧倒されていたナツトだったが、奥に見える地上艦から飛び出てくる影を見て、意識を切り替え銃を構え直す。


「クソ! バッケさんの応答がない!」

「とにかく依頼を片付けねえと」

「全員殺せ殺せ!」


 後続の艦から様々なビッグスーツに乗ったバッケの手下達が出撃し、街の正門目指して進み始める。




 ガァン!




 その時、独特の轟音ごうおんひびく。遠方から緑色のビームが飛来し、手下の機体の内、一機の頭を吹き飛ばした。


「な!?」

「今度は何だ!?」

狙撃そげき!?」




 そこから二キロメートル離れた荒野の岩場の上。頭部にスコープ付きバイザーを備えた黒いビッグスーツが、スナイパーライフルを構える。


 そのコックピット、シートに座るのは赤いモヒカンがトレードマークの女性、「ブラックトリオ」と呼ばれる傭兵ようへいチームの一人、リンコ・リンゴである。その頭には布が巻きつけられ、両目がかくれている。


 そのコックピットのスピーカーからハスキーな女性の声が聞こえてくる。


「あとコンマ三秒早く撃ち抜ければ理想だったんだがな」

「こっち目隠ししてるんですよ!? 無茶言わないでくださいよ師匠~!!」


 ハスキーな女性の声に対し、リンコは泣きそうな声で返事する。




 ビュンビュンビュン!



 さらにバッケの手下達の上空。突如板状のドローン兵器が降下しながら近づいてくる。


「また新手!?」


 バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!


 その数八基。ドローン兵器は戦闘機のように華麗かれいに飛び回りながら、バッケの手下達をビームで撃ち抜いていく!


「ドローンのクセに速すぎ……ぐわああ!」


 次々と撃破されていくバッケ一味の上空に、また黒いビッグスーツが一機。そのコックピットシートには体格のいいショートアフロの男性、「ブラックトリオ」と呼ばれる傭兵チームの一人、ニッケル・ムデンカイが座っている。彼の鼻にはピエロの赤い球のように小型の爆弾が取り付けられていた。


「おい! 昨日の爆弾から難易度上がりすぎじゃねえか師匠!?」


 ニッケルの膝の上では、爆弾を起動させる装置のようなモノが置かれ、その上で握りこぶし大より小さいくらいのロボットがせわしなくアームを動かしている。

 ニッケルはドローンによるバッケ一味との戦闘、小型ロボットによる爆弾の起動解除作業の両方を脳波コントロールで行っているのだ。


 そのコックピットのスピーカーからは野太いオカマの声が鳴り響く。


「やーねぇ! 難易度なんて毎日上がってるじゃない! ニッケルちゃんなら絶対できるし、できなかったら絶対ユデンファミリーかイニスアの囚人しゅうじん辺りに殺されるわよ!」

「その前にアンタに殺されそうだ!」


 オカマに対し、ニッケルは泣きそうな声で返事する。




 ガァン! ガァン! ガァン!

 バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!



 ドローンとスナイパーライフルのビームが次々とバッケの手下達を射抜いていく。ナツトとコマイは目を丸くし、口を半開きにして眺める他なかった。




 ブォン!


 最後の一機をカリオが斬りせる。敵が沈黙したのを確認するとカリオは長いさやにビームソードを収納した。


「あいつらも帰ってきたかぁ。ちょっとぶりだな、どうなるやら」




(GET READY FOR SECOND JAM⑧ へ続く)

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