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第5話 リアムと楽しいお茶会を



カオリさんの誤解をなんとか解いた後、またいつものように仕事をして、今日も何事もなく1日を終えた。


そして1日の中で一番楽しみな睡眠の時間がやってきた。

布団の中に入って瞳を閉じる。



ああ、今日はどんな甘い夢が待っているのかな。



夢で今日も会えるであろう恋人たちのことを思いながら私は意識を手放した。




*****




「エマ?」


「…っ」



夢で意識が覚醒する。

私の目の前には不思議そうに私を見つめるリアムの姿があった。


リアムの後ろに広がるのはそれはそれは美しい花たちの園。

リアムは白い2人がけの可愛らしいベンチに座っており、私もその隣にピッタリとくっついて座っていた。


リアムから視線を逸らして前を見れば机があり、そこには私好みの様々なお菓子とティーセット。

視覚だけの情報からここはこの宮殿自慢の中庭で、今はリアムと2人でお茶会をしていた、と何となく状況を理解した。




「急に黙ってどうしたんだい?」


「あ、いや、アナタの美しさに見惚れていたのよ」


「ふふ、エマ」




どう考えても様子がおかしい私を不思議そうにリアムが見てきたので私は妖艶に微笑んでリアムの頬に触れた。


するとリアムは嫌な顔をせず、むしろ嬉しそうに微笑み自分の頬に触れる私の手に優しく触れた。




「嬉しいよ。キスをしても?」


「ええ」




私に許されて触れるだけの甘酸っぱいキスをリアムが私に落とす。




「リアム、アナタは本当にキスが好きね」


「エマだからだよ。エマのキスだから僕は欲しいんだ」


「ふふ、そう」




触れるだけのキスを終えたリアムの唇に私の口紅がついている。

私はその姿を見て満足げに微笑みながら、指でその口紅を拭った。

そんな私を見て甘い笑顔を浮かべるリアムに私はさらに満たされる。


ああ、リアムは私の欲しいもの、欲しいこと何でもくれる。




「アナタの部屋でならもっと先のこともできるのに」


「そうね。だけど私はアナタと楽しくお話もしたいわ」


「僕じゃエマは満たされない?」


「何を言っているの。十分よ」




物欲しげに私を見つめるリアムだが、私はそれには答えなかった。

するとリアムは不満そうに私を見つめてきたので私はリアムの頬に優しくキスをした。




「エマはずるいね」


「あら?今更?」




困ったように笑うリアムに私は意地悪く笑う。




「今晩の相手は僕がいいな」




笑い続ける私を愛おしそうにリアムが抱きしめる。

私はそんなリアムの背中に手を回し、リアムと同じようにリアムを抱きしめた。




「考えておくわ」


「いい返事を楽しみにしているよ、エマ」




広く、しっかりとしたリアムの胸に体を預ける。

何と落ち着く胸なのだろう。




「さて、離れて、リアム。お茶会にしましょう」


「名残惜しいけどわかったよ」




私がリアムの胸を軽く押すとリアムは本当に名残惜しそうに私の頭に軽くキスをして私を離した。


そして美しい中庭の景色と美しいリアムを眺めながらの、なんとも贅沢なお茶会が始まった。




*****




「それでその時彼はこう言ったんだよ「今度こそ絶対大丈夫」だって」


「ふふっ、何それ。不安しかないじゃない」



リアムが甘い笑顔を浮かべたままそれはもうおかしな話を面白おかしく私に話す。

私はそれが本当におかしくてお腹を抱えて笑い続けていた。


リアムは隣国の王子様であり、外交官だ。何でもできる彼の体験談は山の様にあり、何より外交に必要な話術に長けている。


リアムの話は本当に面白くて飽きない。

ずっと私はリアムの話に夢中になっていた。




「あぁ、ははっ、笑い疲れちゃったわ。休憩よ、休憩」


「え?もう?まだあるよ?」


「ダ、ダメよ。死んじゃうわ」


「死んでも大丈夫だよ。僕がずっと側にいる」


「嫌よ。死にたくはないもの」




とても面白い話ばかりだが、笑いすぎて疲れたので私は休憩をリアムに申し出る。

するとリアムは残念にそうに私を見つめた。


そんな甘い顔をしてもダメなものはダメよ。このままでは笑い死んでしまう。




「リアム。私はアナタの話が一番好きよ」


「いつもそう言ってくれるね。僕はエマの一番?」


「ええ。一番よ。アナタの話が一番楽しいわ」


「そっか」




私の言葉を一つ一つ噛み締めてリアムがどこか嬉しそうに笑っている。


私はそんなリアムの姿を見てまた満たされた。

大切にされていると、愛されていると嘘でも思えた。


私は彼と過ごす、この楽しい時間がとても好きだ。

彼がたまに見せるこのどこか嬉しそうな顔も。




「エマ、愛しているよ」


「私もよ」




リアムが私の耳元で甘く囁く。

私はそれを受け止めて微笑んだ。




「今晩の相手は絶対僕を選んで、エマ」




焦がれるような声が私に届く。そしてリアムは私の耳を優しく舐めて甘噛みをした。




「ん、こら、リアム」




いきなりのことで私から甘い声が漏れる。




「可愛い。可愛いよ、僕のエマ」




そんな私を見てリアムは満足げに笑った。

そして私をとても愛おしそうに見つめた。



甘い。まるで毒の様に私を麻痺させるリアムの言葉と行動。

欲しいものを欲しい時に全てくれるリアムが私は大好きだ。

それが例え全て私が縛り付け、強要させた偽りのものだったとしても。


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