翌日。
ヨクハ達騎士団の団員は全員が、ソードの格納庫に集合し、何やら揉めていた。
「で、結局俺ってどのソード使えばいいんだ?」
ソラの操刃するソードが無いからだ。
「そういえばお主のソードの事などすっかり忘れとったな」
「こんな出陣直前になって思い出さないでくれないか団長、俺何の為に訓練とかしてたの?」
「うるさいのう、お主も人任せにしとらんで自分から聞くとかすればよかったじゃろ」
「そんな事言ったって、何か考えてくれてるだろうって思うだろ普通」
「だろうだろうって、そのだろうが最近の若者の悪い所なんじゃ、もっと自発的にじゃな――」
「ちょっともう止めてよ団長、ソラ君。今そんなこと言い合ってる場合じゃないと思うよ」
互いに責任を擦り付け合うソラとヨクハに、プルームが割って入った。
「予備部品用のカットラスがもう一振りあるから、それじゃ駄目かな?」
しかし、カットラスの聖霊石は風属性。ソラは光属性である為相性は最悪、模擬戦程度なら何とかなったとしても実戦では録に戦えはしないと言いながら、ヨクハはハッとしたようにシオンの顔を見る。
「光属性のソード……そういえば」
「まさか、いやいやいや、あれは駄目だぞヨクハ団長」
「何故じゃ?」
「あれは俺の久々の傑作ソードだぜ、何で新参の蒼衣騎士の小僧なんぞにあれを使わせなきゃならねえんだよ」
ヨクハの考えを察したのだろう、何やら渋り出し始めるシオン。するとヨクハが目を細め、シオンに詰め寄りながら問う。
「シオン殿お主、新たなソードを開発したいとか言ってソードを手掛けていたのはいいが、蓋を開けてみれば光属性のソードで、この騎士団の誰も扱えないんじゃが、どういうつもりであれを造ったんじゃ?」
「あ、いやあ、それはそのな」
ばつが悪そうに後頭部を掻きながら目を反らすシオンに、ヨクハが更に追い打ちをかけた。
「まさかお主、以前珍しく純度の高い光の聖霊石が手に入ったもんじゃから、光属性のソードを造ってみたいというただの欲求に任せてあれを造ったんじゃあるまいな? 団の資金を散々投入して」
シオンの肩に手を置いて、冷たい笑みを浮かべるヨクハ。
「わかった、わかったよ、あれをソラの小僧に貸してやるよ!」
するとヨクハの静かな追及に観念したようにシオンが言った。
「おっ、何やら光属性のソードがあるっぽいじゃん、シオンさんってば勿体ぶっちゃって」
「ったく」
シオンは嘆息すると、ヨクハとソラを連れて、アロンダイトの隣にある、大きな布が掛けられたとある物の前に立つ。そしてかかった布を一気に取り払った。
「お、おおっ!」
そこにそびえ立つのは、白を基調としたカラーリングに、刺々しさと曲線美を兼ね備えた鎧装甲、黒と赤の紋様、金色の関節部、
「こいつは宝剣カレトヴルッフ。神剣エクスカリバーを越えるソードを造るという俺の趣味……じゃなくて俺の情熱が詰まった快心の業物だ」
「神剣エクスカリバーを? そういえばどことなく……」
ソラは七振りの神剣の内の一つエクスカリバーを実際に見たことは無いが、書物で見たことはあり、その姿とこのカレトヴルッフがどことなく似ているように感じていた。
「こいつはかなり高水準に性能のバランスがまとまった優秀なソードだ、はっきり言って蒼衣騎士のお前が扱うには過ぎた代物だが、こいつを撃墜されたらどうなるかは解ってんな?」
拳を握りしめ、不自然な笑顔を浮かべるシオンに、ソラはたじろいだ。
「……凄い嫌なんだけど、これ操刃するの」
「まあ兎にも角にも、これで出陣の準備は整った。全員ソードに搭乗しろ」
ヨクハの合図で、ソラ、プルーム、エイラリィ、シーベットとシバ、デゼル、カナフはそれぞれのソードに乗り込む。
またヨクハが搭乗するソードの騎体名はムラクモ。ヨクハ専用の宝剣であり、灰を基調としたカラーリングに、比較的軽装な鎧装甲、黒い紋様。
格納庫の天井部分が開かれると、ヨクハが宣言する。
「ホウリュウイン=ヨクハ、ムラクモ、出陣する」
戦場に出陣する為格納庫から飛び立つヨクハのムラクモに続き、プルームのカットラス、エイラリィのカーテナ、シーベットのスクラマサクス、デゼルのベリサルダ、カナフのタルワール、それぞれのソードが発進し空へと飛立った。
一方、最後に出陣を控えるソラは、一人気恥ずかしそうな面持ちで言う。
「えーコホン、ソラ=レイウィング、カレトヴルッフ、出陣する」
そしてソラの操刃するカレトヴルッフは、ヨクハ達のソードと共に、空の彼方へと翔び立った。