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世界を支配する悪い魔女は こっそり気紛れの人生を過ごすことにした ~可愛い勇者に倒して貰うまで~
世界を支配する悪い魔女は こっそり気紛れの人生を過ごすことにした ~可愛い勇者に倒して貰うまで~
白山 いづみ
異世界ファンタジー戦記
2025年03月21日
公開日
8万字
連載中
 300年前。巨大な羽根蛇に乗った魔法使いが、戦争の地を水で沈め、2つの国を滅ぼした。  小さな戦争には魔物を、大きな戦争には洪水をおこす、災厄の魔法使い。  やがて、人々は彼女をこう呼ぶようになった。『世界を支配する魔女』――と。  星を見上げ続けた魔女は、長い時間に飽き、別の人間として世界に紛れることにした。  記憶を封じ、性別も変え、普通の人間として生きる時間。  しかしその間に、待ち望んだ流れ星はすぐ近くに落ちてきていた。  遠くない未来、魔女を倒すことになる、少年の姿をして。  偽りと気紛れの人生をおくる魔女。試練を乗り越え強くなる聖女。巡り落ちた流れ星の勇者。  優しい3人の人生が織り成す、世界平和の物語。

星の無い夜の中で






「……私、行かなくちゃ」


 深い、黒。

 星の無い夜空のような闇に、イオエルがぼうっと薄く浮かぶ。

 ふたりの距離が、いつのまにか、遠くなりかけていた。


「待ってください! 俺も…………っ?!」

 ――届かない。ぐっと胴体を掴むような力強い何かに、引き戻される――。


「幾億の夜を越えて、ずっとずっと、待ってた。でも結局、一番大切な流れ星に、私は、気付けなくて……。ごめんね…………」

「でもこうして、出会えた……!」


 魔法拘束から脱するのと同じ要領で、謎の拘束力から抜け出す。

 ――今度こそ絶対に、離さない。伸ばした自分の腕で、薄く輝く身体を、強く、抱き締める。


「………………っ」

 ひとまわり小さな身体が、震える。


 ずっと一緒にいる、約束。

 その言葉のまま、彼女は純粋に、真っ直ぐに、待っていてくれた……。


「生きることを、諦めないでください。たとえ限りある命が終わっても、また新しく出会い、新しい大好きなところをみつけるんです。一緒に、何度でも。――愛しています…………イオエル」















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