ルルーの治癒魔法によって体に活力が戻ったエイムの父、状況について行けずにいた為、とりあえずエイムに見知らぬ人物たちのことを尋ねる。
「エイム……、この方たちは?」
エイムの父の問いにギン達がそれぞれ返す。
「自分は傭兵のギンと申します。娘さんの依頼で護衛を務めています」
「俺はブライアンって言います」
「お初お目にかかります。
エイムの父は自分の病気の治療を終えたと知るや、自分の体が軽くなったことを感じ、ルルーに礼を述べる。
「ありがとうございます、そういえば体が軽いような……」
激しく体を動かしそうであった為、ルルーがエイムの父に釘を刺す。
「お待ちください、病み上がりなのでご無理をなさらないでください」
「あ、そ、そうですね」
エイム、そしてエイムの母からもルルーに対して礼が述べられる。
「ルルーさん、ありがとうございます!」
「シスター様、ありがとうございます!」
「いえ、ミッツ教徒としての務めを果たしただけですから」
エイムは体を向き直してギンとブライアンにも礼を言う。
「ギンさんとブライアンさんもここまでありがとうございました」
「まあ、俺はここまで何もしていないけどな」
「良かったなお父さんが良くなって、それじゃあ俺はここで失礼する」
「えっ?」
ギンの言葉にエイムは戸惑いギンに問い直す。
「ま、待って下さい。魔力感知の話はどうなったんですか?」
「もちろんしてもらう。そいつはまたいずれ俺を狙ってくるだろう。その時に狙ってきた奴の持ち物の1つでも手に入れたらまたここに来て感知してもらう」
ギンの言葉を聞いたエイムは声をあげて自分の考えをギンにぶつける。
「待って下さい。それじゃあギンさんは危険にさらされます。帰る前の馬車の会話で私思ったんです。魔法剣を使うギンさんを戦争に参加させるか、殺そうとしている国があるかも知れないって」
魔法剣という言葉にエイムの父が一瞬反応を示すがエイムは話を続け、自分の思いを話す。
「それなのにギンさんがお1人でいたら今度こそ殺されかねません。探知以外でも私がどこまで力になれるか分かりませんがそれでもギンさんをお1人にするよりはいいと思うんです」
エイムの言葉を聞いてギンが強く反論をする。
「何を言っているんだ、例え本当にその話の通りだったとして君も俺と一緒に危険にさらされるだけだ。せっかくお父さんが治ったんだ、わざわざ危険を冒すことはない」
「でも私、ギンさんに助けられっぱなしだから力になりたいんです」
「そんなことを気にする必要はない。俺よりもご両親を大事にするんだ」
「でも……」
ギンとエイムのやりとりの最中に突如ルルーが話に入り込む。
「ちょっと待ってよ2人とも、国家が関わっているかもしれない話を2人だけで勝手に話を進めないでよ。ギンが本当に軍事的な理由で狙われてるとなると対応策が必要よ。またスップに戻って司祭様に相談してみましょう、なにかいい案があるかも知れないし、その上でエイムも付いてくるならどうかな?」
ルルーの提案に全員言葉が止まり、しばらく考えた末エイムが言葉を放つ。
「お父さん、お母さん、私に旅の許可を下さい」
「え、でも危険よあなたがそこまでする必要はないはずよ」
「お母さん、私はお母さんのように治療薬を作る魔法やお父さんのように魔導具を作ることもできません。でも私は強力な攻撃魔法で少しだけギンさんのお役に立つことが出来ました。ギンさんは危険を承知で私の依頼だけでなく、無実の罪を着せられたブライアンさんを助けたり、町を守るルルーさんを助けたりしてきました。そんなギンさんが殺されるかもしれないのに放っておくことなんてできません」
「で、でも……」
母が戸惑う中、父がエイムに告げる。
「エイム、父さんが病気の間にお前にそんなことがあったなんてな。いや、いつかはこういう日が来ることを覚悟しておかねばならなかったんだな」
「お父さん……」
「お前がそこまで言うならギン殿を助けてあげなさい。但し、無理はするな。自分の身を第一に考えるんだ。いいな」
「……はい!」
エイムの旅の許可を出した父はギン達に向かって言葉を放つ。
「皆さん、娘を……エイムをよろしくお願いします。皆さん今日はお疲れでしょうから今日はうちに泊まって明日出発してはいかがでしょうか」
ギン達はエイムの家に一晩泊って旅立つとした。