スップの街中に既に侵入しているプラナ達、魔導騎士団をギン達に任せることとしたブライアンとルルーは、スップの東の砦に向かうこととした。
2人が街中を走っている時にどこからか声がする。
「あ、おーーい、ブライアン、ルルー!」
声のする方向を2人が向くとそこにいたのはヨナであった。ヨナを発見したブライアンが声をかけた。
「ヨナ⁉ちょうどいい、お前も俺達と一緒に東の砦に向かうぞ」
「東の砦?この街に帝国軍が来てんだろう、それにギンとエイムは?」
ルルーがヨナに対し、現在起きている状況を説明する。
「この街にしかけたのは陽動よ、本命は東の砦なの。そこに主力を送り込んでいるわ」
「ええーー、じゃあどうすんのさ⁉」
「この街の帝国軍とは既にギンとエイムが相手をしているわ。ここは2人に任せて私達は砦に行くのが良いって判断したの」
ルルーの言葉を聞いてヨナも決意を示す。
「じゃあ、あたし達も行くよ。あいつらを呼んで集めるから先に行ってて」
「分かったわ。お願い」
ヨナは他の街に散らばった傭兵を集めに戻っていった。その様子を見てからブライアンが呟く。
「あとはムルカの旦那だけだな」
「今、教徒が呼びに行っているからすぐに来るとは思うけど」
「こんな時に帝国と戦わなきゃなんねえなんて辛えよな」
「私もそう思うわ。でもムルカ様はきっと乗り越えるわ」
ルルーの言葉を聞いてブライアンが声をかける。
「お前がそこまで言うなら信じるしかねえな。急ぐぞ」
「うん」
再びブライアンとルルーは砦に向かって駆けだす。
その頃、ムルカは妻メイリーの墓の前に立ち尽くしており、墓、いや妻に対し呼びかけていた。
「メイリー、お前が天に召されてからもう15年程経った。あの日から私は騎士団にいる意味を見出せず、脱退したが、それが父上の逆鱗に触れ、実家よりも勘当された」
悲しげな表情で騎士団を脱退した経緯を妻に語るムルカは更に呼びかけていった。
「その後、司祭様の勧めで私はミッツ教団に入信したが、正直私は大して信仰心があったわけではない。ただ、こんな私でも生きる意味があるのかが分かるかも知れないと、そう思ったんだ。お前を失った私が……」
ここまで沈んだ表情で話すムルカであったが、次の瞬間わずかながら晴れやかな表情になって妻に語りだす。
「いつもはここで話を終えてお前に暗い思いをさせてしまうが、聞いてくれメイリー。今年は少しだけ違う話もしたい。それは……」
何かを語ろとしたムルカであったが、突如声が聞こえる。
「ムルカ様!」
声のした方を向くとミッツ教徒がそこにいた。
「どうしたのだ?」
「帝国軍が、スップの街、更にスップの東にある砦に侵攻しております!」
「何だと⁉それで今どうしているのだ?」
「はい、街のほうをルルー様とギン殿達が迎え撃っており、神官戦士団を砦に派遣しました。司祭様はムルカ様に砦に向かうようおっしゃっていました」
教徒の話を聞いて、ムルカは決断をした。
「分かった。砦に向かうとしよう!」
ムルカは砦の救援に向かうこととする。
過去と向き合いつつも帝国との戦いに身を投じるムルカであった。