ムルカがミッツ教団の教徒より、砦へ救援に向かうよう司祭からの伝言を受けている頃、ギンとエイムはスップの街中でプラナが率いる魔導騎士団との戦闘態勢に入っていた。
戦闘に入ろうとしている際にギンがエイムに声をかけている。
「エイム、俺が前面で奴らを引き受ける。隙をついて魔法を奴らに放つんだ」
「はい、でも無理しないでくださいね」
ギンとエイムが声をかけあっている様子を見てプラナ従士達に指示を出す。
「皆の者、奴はカイス様をも退けた。決して油断するでないぞ」
「はっ!」
「ではいくぞ」
プラナがそう言うと全員が一斉に手より魔法を放つ。それも違う属性の魔法をだ。
ギンは回避は難しく、エイムにも危険が及ぶと判断し、前面に出て剣を魔法で強化して全てを防ぐがかなり神経を削られる攻撃であり、ギンは戸惑いの表情を見せる。
「なんていう攻撃方法だ」
ギンの呟きが聞こえたのか、プラナが強気の言葉をギンに対して放つ。
「いくら貴様が魔法剣を使えようといつまでこれを防げるかな」
プラナの言葉に対し、怒りを覚えるギンであったが、攻撃を防ぎ続けることは難しいと実感はしている。そのうえ反撃の隙は見いだせない。そんな中エイムがギンに対し提案をする。
「あのギンさん、さっきは無理しないでほしいと言ったのにこんなこと言うのもどうかと思うんですが……」
「何だ?言ってみろ」
「もう1回だけあの攻撃を受け止めてくれれば、攻撃の隙を突ける魔法が放てるんですが……」
エイムはギンを危険にさらすことに抵抗があるが、自分が今思いつく方法もそれしかないことに心苦しさを感じているが、次の瞬間ギンがエイムに言葉を放つ。
「分かった。やってみよう」
「いいんですか?」
「俺はお前を信じている。だから今回は俺を信じてくれ」
「……分かりました!」
ギンとエイムがやり取りをしている中、プラナが2人に対して言葉を放つ。
「今生の別れをすましたか?だが安心しろ2人仲良く同じところに送ってやる。騎士としてのせめてもの情けだ」
プラナがそう言うと魔法を放ち、ギンは再度剣で防ぐ行動をとる。その間エイムは呪文の詠唱を始める。
「水を司りし者よ古の盟約に従ひて我の望みに応えよ。天より多数の矢を放ち給へ。
エイムが呪文の詠唱を終えると小さいが空に雨雲が創られ、そこからまさに雨の矢がプラナ達に向け放たれる。
「何⁉皆の者さがれ!」
プラナが従士達に指示を出し雨の矢を回避するが数名に刺さり負傷者が出る。
その隙を突きギンがプラナに対し剣を振りかざし、プラナが咄嗟に剣で受けた。
「くっ!」
「さっきお前は騎士の情けと言っていたが、戦場に出た以上騎士も傭兵も魔術師もない」
「何を」
「それを理解しない限り、お前は俺達に勝つことができない」
そう言ってギンはプラナに対し剣を振り今度は回避行動をとるが左腕をかすめ出血してしまう。
「あーーーーっ!」
「プラナ様!」
出血に狼狽するプラナに従士が駆け寄り声をかける。
「このままではいけません。退きましょう」
「くっ!止むを得んか、だが次はこうはいかんぞ!」
プラナはそう言うと右手より火の魔法を放ちギンをたじろがせ、その場を離脱する。
「待て!」
今回は逃がさんとばかりに追撃を試みるが数名の従士がギンに対し剣を向ける。
「どけ!」
そう言ってギンは従士を斬りつけるがすでにプラナの姿はなかった。
プラナ達の姿が見えなくなってエイムに駆け寄るがエイムが膝を地面についていた。
「エイム!大丈夫か?」
「あ、はい少し疲れました。あと……」
ギンは以前、エイムが強力な魔法を使用して空腹をしたことを思い出したが、すぐにエイムに対し言葉を放つ。
「いや、その話はいい、とりあえずお前は今は教会で休んでいろ。俺は残存戦力を確認してくる」
「すいません」
「気にするな。とりあえず教会までは一緒に行こう」
そう言ってギンはエイムと共に教会まで行くこととした。