敵対しながらも互いの過去を打ち明けたムルカとバンスはもはや言葉は不要と感じ、いよいよ決戦の時をむかえようとしていた。
その中でムルカがバンスに声をかける。
「バンス将軍よ、貴殿の相手は私が致す。貴殿の武がギガス皇帝の為にあると言うなら、私は自らの武をもって貴殿らの侵略行為を止めて見せる」
「ならば、やってみせよ!」
そう言ってバンスも自らの武器であるハルバードをムルカに対して向ける。武器を向けられたムルカはブライアンとルルーに対し声をかける。
「ルルー、ブライアン殿、私がバンス将軍を抑えている間に魔導騎士団を倒してくれ」
ムルカの言葉にブライアンが疑問を投げかける。
「1人で大丈夫なのか?」
「バンス将軍を抑えられれば敵の指揮系統はうまくは機能せん、そうしている間にギン殿達が来れば我々の勝ちだ」
ムルカの言葉を受け、ルルーが言葉を発する。
「ブライアン、バンス将軍はムルカ様にお任せして私達は周りの敵をどうにかしましょう」
「ルルー、お前……」
「ムルカ様のおっしゃる通り、バンス将軍が敵の指揮官である以上、彼に指揮をとらせないようにすれば敵は浮足立つわ。その間にギン達が来ればどうにかなるわ」
ルルーはムルカ、そしてギン達を信じ、自らの役割を徹するようブライアンに訴えかけ、更にムルカに声をかける。
「ではムルカ様、お願いします」
「うむ、貴殿らも気をつけよ」
そう言ってルルーとブライアンは魔導騎士団の撃退に向かい、ムルカは再度バンスと相対する。
魔導騎士団の騎士達に対しルルーは風魔法を奇襲で放つが彼らは魔力障壁で防ぐことに成功する。
「ふん、治癒魔法は一級品のようだが、攻撃魔法はこの程度か。それで我らに勝てると思うなよ」
騎士の言葉をよそにルルーはブライアンに作戦を伝える。
「ブライアン、もう1度私が風魔法を放つから敵が防御行動をとったら敵に接近して」
「何か作戦があるのか?」
「魔力障壁をあなたに張るからそのまま敵を攻撃して」
「分かった。頼りにしてるぜ」
ルルーはブライアンに対し作戦を伝えると再び風魔法を放つが騎士達に魔力障壁で防がれる。
「馬鹿め!何度やっても同じだ!ん?」
騎士が目にしたのは自らに対し突撃をしてくるブライアンであった。
「血迷ったか、我らの魔法の餌食にしてくれる」
そう言って騎士達は様々な属性の魔法を放つがルルーの魔力障壁がブライアンに張られ、全ての魔法はブライアンに対し無力と化していた。
「な、何⁉」
騎士への接近に成功したブライアンは騎士に対し斧を振りかざし騎士を斬りつけていく。
「ぐわーーーっ!」
ブライアンの斧の前に多くの騎士が倒れていき、撤退する者もいた。
「よっしゃーー!ルルー、ムルカの旦那を助けに行くぞ」
「待って、包囲部隊がなんか崩れているわ」
ブライアンとルルーが包囲部隊の方を目にすると戦線が崩壊しつつあった。包囲部隊に対し攻撃をしていたのはギンとヨナ達の傭兵団であったが、ブライアン達の目にはまだ入っていない。