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相対する武人と神官戦士

 ブロッス帝国のバンス将軍はムルカやルルー達に対し、突如自らもムルカ同様、戦争によって妻を失った事実を語り始めた。


 そして今、その詳細が語られようとしている。


「反乱軍側についた将の家族が人質にとられたという情報にはさすがに我らに動揺が走り、軍が浮足立っていたのが目についた」


 バンスは自らを含めた将の家族が王国軍側に人質をとられ、それが自軍に動揺を呼び、軍の瓦解すら起きようとしていたことを語り、それらがどう収まったかを話そうとしていた。


「この情報で浮足立っている時に陛下が突如軍議をお開きになり、我らはそれに参加し、陛下のあるを耳にしたのだ」


 バンスの言葉を受け、ムルカが尋ねる。


「なんという言葉だ?」

「陛下はこうおっしゃられた。『王国につきたい者は今すぐここを立ち去り、人質になった家族のもとへ行かれよ。咎めはせぬ』だ」


 意外な言葉に信じられなかったのかブライアンがバンスに対し疑問を投げかける。


「ちょっと待て!それは裏切りを許すって事か?」

「我らが離反すれば反乱軍は瓦解したであろうが、わしはこの力強いお言葉を聞き、ここで我が妻かわいさに裏切るのは武人としてあるまじき行為だと思い、反乱軍として戦うと決意が固まったのだ」


 バンスは力強く自らの武人としての矜持を語り、戦争の結末、そして妻の最期について語る。


「そして他の将も陛下についていくことを決め、我らは戦争に勝利した。だが、わしの妻は2度とわしの元に戻って来ることはなかったがな」


 バンスの言葉を聞いて、ムルカが声をかける。


「バンス将軍、その選択に後悔はないのか?」

「……ない!わしは自らの武を陛下の理想の為に捧げると決意したのだ。そうでなければ妻の死は無駄になるからな」


 バンスの言葉を聞いて、バンスの言葉の意味、そして胸の内を理解できないでいるルルーはバンスに対し激しい抗議をする。


「あなたやギガス皇帝にどういう理想があるかは分からないわ。でも例えどんな理想を掲げようとあなた達のやっていることはムルカ様やあなた自身のような人達を増やしているだけなのよ!」

「娘よ、お前の言っていることは正しい。だがそれでももう我らは止まらん。我らを止めたいというなら、我らに勝ってみせよ!」


 バンスの言葉を聞いたムルカはルルーに対し呼びかける。


「ルルーよ、もはや彼らとの間に言葉は不要のようだ。私がバンス将軍を引き受ける、ルルーとブライアン殿は魔導騎士団の者達を頼む」

「ムルカ様……はい!」


 遂に相対するムルカ、バンス、決着の行方は?

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