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繋ぐ聖女

 バンス隊をなんとか撃退したギン達は安堵した表情で過ごしていた。その状況の中ムルカが一同に声をかける。


「皆、先に戻っていてくれ。私はまだ寄る所がある」


 ムルカが一同に呼びかけるとルルーが反応を示す。


「分かりました。みんな私達は先に教会に戻りましょう」


 ルルーの呼びかけにギンとブライアンが応じる。


「分かった」

「おう」


 そう言ってギン達はスップの街へ向かい歩き出し、ムルカもまた自らの寄る所に歩き出す。


 帰路を歩いている時にギンがルルーに声をかける。


「お前や他の教徒達がずっとムルカ殿を見守っていた。その思いがあの人に希望を与えたんだな」

「ううん、きっと私達だけでは無理だったわ。ムルカ様のおっしゃるように、あなた達がムルカ様や砦を守る人達を助けたこと、それがムルカ様の心を救えたと思うの。それまで私達はムルカ様の為に何もできなかったの」

「……だが、お前がいたから俺達はムルカ殿と会うことができたんだ。お前が俺達とムルカ殿を繋いでくれたんだ」

「……ありがとう、私も少しは役に立てたのかな」


 ギンとルルーがやりとりをしている中ブライアンがルルーに話す。


「そうだぜ、お前がいねえとムルカの旦那と会うきっかけすらなかったんだ。それにお前はいつもみんなの為に頑張っているじゃねえか。だからよ手当係なんて言って悪かったよ」

「……ブライアン、ううん、もういいわ。そこまで言ってくれるだけで私はうれしいから」

「だからお前は手当係じゃなくて、手当係兼とりもち係だ」


 先程までブライアンの言葉に感激していたルルーであったが、その発言に怒りを露わにする。


「ちょっと待ってよ!なんか変な称号ついてるし、っていうか結局手当係残してるじゃない!」


 ルルーがブライアンに抗議をしている時にヨナがギン達の姿を見かけ、話に行く。


「あ、おーーい。ん?」


 ルルーがブライアンに対し抗議をしている様子を見て、ギンに尋ねる。


「ねえねえ、あいつら何やってんの?」

「あれはいつものことだ放っておけ」

「ふうん、ま、そう言うんなら別にいいんだけどさ」


 とりあえずルルーがブライアンに抗議している様子は置いて、ヨナはギンに事の成り行きを聞く。


「今あんた達がここでのんきに過ごしているってことは帝国に勝ったの?」

「ああ、お前も敵を撃退したのか?」

「まあね、あたしらにかかりゃああんな奴ら敵じゃないさ」

「だが、魔導師団がバンス達を逃がすために現れた。帝国は俺達に対し本気になってきているかも知れない」


 ギンの言葉に不安をおぼえたヨナは思わず言葉を発する。


「そんな、あたし達勝てるの?」

「もう退くことはできない、最後まで戦うだけだ」


 ヨナの言葉に対しギンは自らの決意を示す。

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