ミッツ教団の司祭より、魔物に襲われた村の復興支援と魔物の調査の要請を受けたギン達はスップより北にある村へと馬車で向かっていた。
ループの引いている馬車をギンが御しており、エイム、ブライアン、ルルー、ムルカ、ジエイが乗っており、ゲンジの引いている馬車はヨナ達傭兵団が乗っている。
そしてもう1台の馬車に支援用の物資が詰め込まれており、ミッツ教団員が馬車を御しているのだ。
ループの引いている馬車の中でブライアンがルルーに尋ねている。
「なあ、ルルー」
「何?」
「魔物が軍隊並みに統制がとれているっていうけど具体的にどういうことだ」
「はっきりとしたことは分からないけど、何者かが指示を出し、その通りに動いたってことだと思うわ」
ルルーの言葉を聞いてブライアンの中に疑問が生まれた。
「何だそりゃ?魔物同士で合図でも出し合っているのか?」
「私に聞かれても……」
ブライアンとルルーのやりとりを聞いて何かを思い出し、エイムが話し始める。
「すいません、今のお話を聞いて思い出したことがあるんですけどいいですか?」
エイムの言葉を聞いて、ブライアンとルルーがエイムの方を向く。
「そうね、話してくれる」
「方法が分かれば対策も立てられるかもしれねえからな」
2人に促され詳しい話をエイムが始める。
「私はそういう魔法は使えませんが、操作魔法を使用すれば可能かもしれません」
「操作魔法?」
「主に2通りの魔法があります。1つは肉体に作用させる魔法です、自らの意思を直接対象者の肉体に作用させ、思うままに動かす魔法です」
「恐ろしい魔法ね」
エイムの話を聞いて恐怖するルルーであったが、エイムはこの魔法の欠点を話す。
「ですがこの魔法には重大な欠点があって。対象者の肉体の一部分、毛や爪を媒介にしなければ使えないうえ、膨大な魔力を消費するので実戦的とは言えません」
「そうなの。じゃあ、もう1つの方法は?」
「もう1つは精神に作用させる魔法です。魔力で暗示をかけて自らの思うままに動かせます。理性のある人間には難しいですが、本能で動く魔物なら操作が可能かもしれません」
エイムの話を聞いて、ルルーに更なる疑問が生まれ、ブライアンも言葉を発する。
「その話通りだとして、誰がそのようなことをするかよね」
「もしかして帝国のエンビデスじゃねえのか、あいつならそんなことができても不思議じゃねえ」
「うーーん、でも帝国は軍事拠点か武装した集団にしか攻撃をしないって話をよく聞くし、さすがに違うと思うわ」
「俺達に負け続けてなりふり構う余裕がねえかも知れねえじゃねえか」
2人の間にエイムが入り提案をした。
「村に着けば、なにかを媒介に私が魔力探知をしてみますからそれで分かると思います」
「そっか、それならエイムに任せるか」
「そうねお願いするわ」
「任せてください」
エイムは強く返事をする。戦いの中エイムの中でも苦しむ人々を救わなければいけない、そういう意志が強くなってきたのだ。