魔物の被害にあった村の中を捜索していたギン達は、突如村に住むアルという少年より魔物の毛を差し出されており、ギン達は預かるよう懇願するが、アルはそれを使ってどうするかを確認したいと申し出ており、ギンがそのことについて言及しようとしていた。
「それを見てどうしようというんだ?」
「見届けたいんだ」
「見届ける?」
ギンの問いにアルが怒りと悲しみが混じった声で話す。
「本当は俺が自分で父ちゃんの仇を討ちたい。でも俺にはその力がない。だからせめてにいちゃんやねえちゃんが魔物を魔法で探せるって言うんならまずはそれをちゃんと俺の目で見たいんだ」
「……、お前が自分も討伐に付いてくるつもりだ。とでもいったら今すぐ追い返すつもりだった。だがお前は自分なりに色々考えているんだな」
「だから何だよ?」
「魔法を見るだけならいいってことだよ。エイム、構わないか?」
突如ギンに問われるが、落ち着いて返事をする。
「見る分には私は構いません」
「決まりだな、あとお母さんはいるか?」
「いるけど」
「じゃあ、お母さんも呼んで来い。親同伴なら俺達が村長の家に行くのに付いてきてもいいってことだ」
ギンに少しばかり悪態をつくが口だけで、家まで戻ってアルは母親を呼びに行く。
「ちっ、子供あつかいしやがって。まあいいや母ちゃんを呼んでくるから待ってろよ」
その行動を見てからエイムがギンに声をかけている。
「あのギンさん、どうしてアル君に探知魔法を見せてもいいって思ったんですか?」
「俺があいつくらいの頃は、両親、2人の兄が殺されたという事実にただ打ちひしがれていただけだった。そんな俺を見てブレイクが剣と魔法を教えてくれた」
「だからギンさんも何かアル君の為になるようなことがしたかったんですか?」
「あいつはあの時の俺よりもよほどしっかりとした考えを持っている。だからお前の探知魔法を見ることで何かを感じてくれるかもしれない、そう思った」
ギンがエイムに自分とアルを重ねている話をしていると、アルが母親と思しき女性と共に戻って、ギン達に声をかける。
「待たせたな、にいちゃん、ねえちゃん、俺の母ちゃんだ」
アルより紹介された母親がアルに注意しながらギン達に挨拶をする。
「もうこの子はいきなり村長の家に行くから付いてきてくれって、あ、初めまして私はアルの母のミオと申します。うちの子が無理なお願いをしたようで申し訳ありません」
ミオの謝罪の言葉にギン達が言葉を返す。
「いえ、自分達も見てもらう方が信頼を得られると判断したので、そうさせてもらいました。自分は傭兵のギンと申します。ミッツ教団より今回の依頼を受け同行しております」
「私は魔術師のエイムと申します」
挨拶の風景を見たアルが一同に声をかける。
「そろそろ行こうぜ」
魔物の毛はギン達に何を示すのか?