エイムの救出の為にジエイはギン達より先行して魔導師団ならびに魔導騎士団の足跡を追跡していた。
人の気配を感じた為、近くの岩に身を潜め様子を見る。
すると魔導師団達が撤退準備を始めており、何やら声が聞こえてくる。
「ではもう1度確認する。前方をお前達の馬車で固めて進み、後方をプラナ卿、貴君らが守ってくれ。私は娘と共に中央の馬車に乗る」
声の主は魔導師団の一員のアビィであり、逃走の為の陣形を指示していた。
アビィが出している指示を聞いてジエイは思案している。
一度後退してギン達に知らせるか、それとも自分だけでもこのまま追跡するか、もしくは……、そう考えるとジエイには3番目の選択肢が思い浮かんだ。
「先回りして足止めするか、奴らの動く方向に足止めに役立ちそうなものがあればいいのだが」
そう言いながらジエイは近くの岩を活用し、姿を悟らせないように動く。
ジエイの動きを見てはいないが、何かを感じたプラナがアビィに呼びかける。
「アビィ殿、我らを見張っておる者がおるかも知れません。ここは我らが捜索し始末するのでアビィ殿らは先にお進みください」
「何だと?確か奴らに諜報が得意者がおったな、だが下手に部隊を分けると、追撃された際に不利になる」
少し考え、アビィはプラナに作戦を告げる。
「当初の予定通り、追撃され戦闘になっても良いように固めて行動するぞ」
あくまでもアビィは守りを重視した布陣で進み、戦闘もいとわない覚悟のようだ。しかしプラナは喰らいつく。
「乱戦になればそれに乗じ娘を奪還するかもしれません。敵の動きを封じるのが先決かと思いますが」
「そうならん為に貴君らを後方に配置した。帝国軍きっての精鋭である貴君らをな。無駄話もここまでだ、敵が今追いつくと逃げ切れん」
そう言ってアビィは馬車に乗り込みいよいよ逃走が始まる。
まず前衛の馬車が進み、前方の安全を確保する。ある程度前衛の馬車が進むとアビィとエイムを乗せた馬車が進む。
その馬車がある程度進むと、プラナ達魔導騎士団が進行する。ある者は馬に騎乗し、ある者は徒歩で、またある者は馬車で移動をする。
馬に騎乗しているプラナに対し、別の騎士が馬上からプラナに声をかける。
「そういえばプラナ様、我らを見張っていた者はまだ見張っておりますか?」
「分からぬ、私も神経を研ぎ澄ましてはいるが見つからん」
プラナにとっては不安を抱えたままの逃走となっていたが、そんなプラナを尻目にジエイは足止めの為の先回りに成功していた。
「この地形を利用させてもらおう」
ジエイの足止め方法とは?