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幸せと悲しみ

 プラナと会う為にミッツ教団が運営する孤児院を訪れたギンとエイムはプラナとの束の間の話を終え、孤児院をあとにし、スップへと戻る途中であった。


 馬車の中でエイムはギンの発言が気になったのか、なにやら尋ねている。


「あのギンさん、プラナさんに何かまだ言いたいことがあったんじゃないんですか?」

「ん?プラナの口から一言も出なかったから少し気になったことはあったんだが……」


 ギンの発言にますますエイムは疑問が大きくなり、再度尋ねる。


「それって一体何ですか?」

「前にブライアン達が言っていただろう、プラナとカイスが互いに思いを打ち明けたらプラナは嫁入りするんじゃないかと」

「でも、確かギンさんは少し気が早いって言ってましたね」

「俺はそう思っても、プラナはそうではないかも知れない、だから少し聞こうと思ったんだが……」


 ギンが何かを言わんとしたためエイムが先んじて発言をする。


「聞きにくかったんですね、確かに少しデリケートな問題ですしね」

「それもあるが、カイスが伝えたいことを俺が先に言ってもいいのかとも思った」

「やっぱりギンさんはプラナさんの事をちゃんと考えているんですね」


 エイムの発言を聞いて、ギンは自らの思いを吐露する。


「プラナにとっての幸せは本当に何なのかと思う。今の混乱した帝国に行くのがいいとは思えないし、混乱が収まるのだっていつになるか分からない」

「でもきっとプラナさんならご自身でしっかりと選べると思います。帝国の騎士である事よりもギンさんといることを選べたように」

「それまで、そしてその時に俺は何ができるんだ?」

「見守って、そして後押しをすればいいと思います」


 エイムの言葉にギンはかつてエイムが後押ししてくれた事を思い出す。


「あの時もエイムが俺の後押しをしてくれた。だから俺はプラナとちゃんと話すことができたんだ」

「ギンさん……いえ、私はただ……ギンさんにこれ以上の悲しみを背負って欲しくなかっただけです」


 ギンに悲しみを背負って欲しくない、そんな言葉がエイムの口から出て、更にエイムは言葉を続ける。


「ご両親とお兄さんを亡くし、妹さんまで自分の手で殺してしまってはもうただ悲しみを背負って生きるだけになってしまいます。ギンさんにはそうなって欲しくなかったんです」

「エイム……」

「だから本当に今のようになって良かったです……」


 エイムの支えがあったからギンは今、プラナと兄妹として話せる。そう思いながら、馬車はスップへと到着する。

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