スップよりゲンジが引く馬車に乗り、ヨナ、ジエイ、ウィル、ミニルはまずはプレツの国境を越えてスールへと到達した。
更にスール国内を移動中にウィルに疑問が生まれ、ジエイに尋ねていた。
「なあ、ジェイ、少し思ったんだが戦争準備中ってことは今のグラッスは同盟国でも他国の入国は制限しているんじゃないか、ましてスールも帝国との休戦をしているんじゃなおさらだぜ」
「それについては私も承知しておりますが方法もないわけではありません」
「本当か⁉」
「まあお任せを」
そこからジエイは一同に入国作戦の詳細を説明する。
それから数日が経過し、馬車がスールとグラッスの国境を通ろうとするときに兵士が声をかける。
「そこの馬車、少し止まれ、現在我がグラッスは戦争の準備をしている。入国用件は何だ?用件内容によっては入国を許可することはできんぞ」
「いやいや、あっしらはそれを承知の上で来たんでこぜえますよ」
「何⁉」
「あっしらは、スールの王様に頼まれて食料と武器を届けに来たんでごぜえます」
そう言いながら商人は武器と食料を兵士に見せるが、スール王より、食料と武器を届けに来たと言った商人らしき男に戸惑いながらも兵士は商人に尋ねる。
「どういうことだ⁉スールは確か、ブロッス帝国とは休戦中ではなかったのか?」
「表向きはそうしておりますが、これを機に帝国に反撃するって話でごぜえましてね、プレツが隣国で後の説明が少しややこしいので、こういった形で協力したいと、これがグラッスの王様への文でごぜえます」
「スール国王の印が刻まれておるから間違いないな。良かろう、そのまま馬車で王宮に向かうがよい、だが本格的な進軍が始まる前にこの国を出ることを推奨する」
「お気遣え、ありがとうごぜえます」
そう言って、馬車はグラッスへ入国し、国境より段々と離れていく、商人がひげをはずし、髪の毛もかつらであったようでそれをはずすと突如、声を発する。
「皆さん、もう出てきて大丈夫です」
そう言われ、出てきたのはヨナ、ウィル、ミニルであり、商人にウィルが声をかける。
「ヒヤヒヤしたぜ、ジエイ、しかし名演技だったな、それとこの布便利だな」
「あらゆる人物になりきらなければ潜入調査などできませんからね、その布は我が忍術で作りし布で、周囲の景色と同化させますからな」
商人の正体はジエイであり、商人になりきり、ウィル達を特製の布で隠していたのだ。
そんなジエイとウィルにヨナが声をかける。
「ひとまず入国は成功だね」
「まずはトッポックス領に向かいましょう、圧政から解放することを告げねば」
グラッスへの入国が成功したヨナ達、だが乗り越える壁はまだある。