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少しの寄り道

 ジエイの作戦が功を奏し、グラッスへの入国に成功したヨナ達はグラッスの側近達の横暴を止める為の協力者を募る為、トッポックス領へと向かう。


 その道中でヨナがジエイに声をかけている。


「ねえジエイ、1度前にあたし達が過ごしていた村に寄ってくれない」

「それはよろしいですが、何かあるのですか?」

「ちょっとどうなっているか気になってさ」

「まあ良いでしょう、行く途中で情報取集も兼ねながら」


 ヨナの懇願をジエイが了承するとヨナ達の乗る馬車はかつてヨナ達が過ごしていた村へと向かって行く。


 道中の村や街からはおおよそ活気というものが感じられないでいた。


「姉御、明らかに前に俺達がいた頃より活気がねえですぜ」

「そうだね……」


 さすがにヨナもトッポックス領の活気が以前より落ちている事に、言葉をなくしている。


 そんな時、ジエイがヨナに尋ねていた。


「ヨナ殿、これから慌ただしくなるので少し聞いておきたいのですが、よろしいですか?」

「何だい?」

「以前、トッポックス領主は反帝国同盟に反対しておりましたが、ヨナ殿、以前ヨナ殿が言っていたこと以外に何か話してはいませんでしたか?」


 以前、ヨナはトッポックス領主が同盟を反対していた理由としてトッポックス領主がプレツ主導で帝国軍と戦う事になる事を危惧していた話をしたが、ジエイはトッポックス領主の真意が別にあると考え、ヨナに尋ねていた。


「その話か、実は父さんは側近とある男が秘密の話をしているのを聞いていて……」

「秘密の話?」

「側近は男にプレツとの同盟が成れば、トッポックス領をあなたのものになるよう働きかけようって言ったんだって」

「なんですと?」


 トッポックス領主は側近と謎の男の密談を耳にしており、更にヨナがその話の続きを始める。


「その後、合議で反帝国同盟を結ぶことが決まって、プレツから正式な特使、つまりあんた達が来るって話が進んで父さんは焦ってあたし達に特使を追い返すよう言ったんだ」

「しかし、ヨナ殿、その時点では何故我らを疑わなかったのですか?」

「まず、あんたがあたし達と一緒に帝国軍と戦った事、そしてルルーやギン達がトッポックスの私兵のあたしと正面から話したことだよ」


 ギン達が正面から自分と話したから疑わなかったと話すヨナはその理由を説明した。


「だって普通ははめようと思った相手に真正面から来るわけないじゃん、だからその時点であんたらとその男には繋がりがないと思ったよ、それに……」

「それに……」

「あいつらは本当にあたしの気持ちを分かろうとしながら寄り添ってくれた。それを確かめたくて一緒に行動して嘘じゃないって分かったよ」


 一緒に過ごし、戦っていく内にヨナはギン達に対する信頼が生まれており、その男とギン達がグルではないと確信するには十分であった。

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