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グラッスの王

 ヨナ達がグラッスの王宮へと向かっている頃にギン達の元にもヨナ達の入国情報が伝わっていた。


 そして同じ頃、グラッスの王宮の玉座の間では国王と側近が何やら話していたようだ。


「昨日、トッポックス領主の娘を名乗るヨナという娘が私兵を率い、トッポックスの屋敷を占拠したようにございます。このまま奴らをのさばらせておけば国が荒らされてしまいます。すぐに討伐軍を送り屋敷を奪還しましょう」

「待て、私はそのヨナという者を知っている。ここは交渉し兵を退いてもらうのが良いのではないか?」

「どのような条件をお出しになるつもりでしょうか?」

「現在、我が下で身柄を預かっているトッポックス領主ダリル並びにその嫡子フランツを返すのだ。それでそのヨナという娘は我らに反抗する理由がなくなるはずだ」


 国王の提案に対し、側近が異を唱える。


「何をおっしゃっているのですか、そのような事をすれば奴らは益々増長します!ここは奴らを叩き潰すのです!第一早くダリルめを処刑しておけば見せしめにもなり反抗もなかったはずです」

「しかし、私にはあのダリルが帝国と通じていたようには思えん。それに確固たる証拠もないのに処刑したとあっては臣民の不信を生みかねない。だからこそ私はあのヨナを国に残し、話を聞きたかったのだが」

「陛下、あの娘を残しておくと火種になるの意味が今になってもなおご理解してなさらないのですか?あの者を旗頭に我らに反抗する者達がでてくるからです。そしてそれは現実におきたのです」

「だが解せん部分もある、彼女はプレツの特使の護衛をしていたはずだ。それなのに何故今になって……」


 国王の言葉を聞いて側近は思いついたかのような発言をする。


「陛下、ひょっとするとプレツの奴らにそそのかれたかもしれませんぞ」

「何⁉」

「帝国と休戦を結んだプレツにとっては我らの軍事行動が目障りで内乱を偽装し、我らをあの娘に討たせようとしたかもしれません。なんとも卑劣な」

「お前がしきりに帝国との継戦を主張するから聞き入れたが、それも間違いであったかもしれん。今からでも帝国と停戦交渉を……」


 帝国との停戦を主張する国王に対し側近が制止の言葉を述べる。


「それはなりません、我らはすでに反帝国の領主達と密かに手を結んだのです。これはグラッスに新たな領土が手に入る機会なのです。それを見逃す手はありません」

「領土……」

「そうです、帝国の一部とはいえ豊かな地は我らも望んでいたこと。これで民も潤いますぞ」

「民が潤う……」


 ヨナ達とグラッス、この衝突はもはや必然か?

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