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即位の代償

 フィファーナが最初にギン達に話した事はブロッス帝国の新皇帝にカイスが即位したという話だ。


 さすがにギン達も驚きを隠せないが、そんな中プラナが自身の感じた疑問をフィファーナにぶつける。


「お待ちください、フィファーナ将軍!お父様を亡くされたカイス様はギガス陛下が後見人としてお育てにはなりましたが、お2人は養子縁組はしていなかったはずです」

「確かにそうじゃ、陛下には御子はいらっしゃらず、カイスも養子縁組ではないから本来ならば皇帝位を継ぐ者はおらん」

「でしたら何故カイス様が皇帝に即位されたのですか?」

「陛下がボースを転覆した時と同じじゃ、ブロッスの将達がカイスを祀り上げカイスを新たな皇帝へと就かせたのじゃ」


 かつてギガスはボース王国の転覆を試み、それを成功させたことで当時の将達がギガスを祀り上げ、ギガスがブロッス帝国を興し皇帝へと就いたのだ。状況は違うがブロッスの将達がカイスを皇帝の座へと押し上げた事がフィファーナより語られたのだ。


 その話を聞いてブライアンが和やかな表情で言葉を発する。


「なんだよ、帝国の奴らもカイスを認めたってことじゃねえか、思わせぶりな態度でいるから悪い事と思ったじゃねえか」

「たわけが、単にカイスが皇帝に即位しただけならば、わざわざわらわがそち達に告げなくてもよかろう」

「まだ、何かあるのか?」

「カイスは皇帝即位の条件として帝国の各領主達より条件を突きつけられていたのじゃ、再度反帝国同盟との戦端を開くようにとな」


 フィファーナの発言を聞いて、ギンはフィファーナに返答をする。


「まさか、カイスはその条件を呑んだというのか」

「その通りじゃ」


 ギンとフィファーナのやり取りを聞いて、動揺したプラナが声を大きくあげる。


「そんなはずありません!あのカイス様が皇帝の地位に目がくらんで再び戦端を開くなんて何かの間違いです!」

「落ち着いてください、プラナさん。きっとカイスさんにも何か事情があったんです」

「どんな事情があってそんな選択を……」


 動揺するプラナをエイムがなだめているとフィファーナが再度発言をする。


「その娘の言う通りやも知れぬ、これはあくまでもわらわの推測じゃが、自らが皇帝位に就かねば帝国は分裂してしまう、領主共のいいなりになってでもカイスは帝国を守らねばと思ったんじゃろう」

「カイス様のご本心は今でもお変わりないと……」

「わらわはそう思う、じゃが奴は帝国を守る為に本心を殺しているやもしれん」

「カイス様……」


 皇帝の地位に就いた代償として再度反帝国同盟への戦端を開くカイス。彼の選択はギン達にどのような影響をもたらすのか?

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